第30回 俳句deしりとり〈序〉|「ふき」④
始めに
出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
第30回の出題
兼題俳句
菓子涼し木陰のごとし風の吹き のんつむ45号
兼題俳句の最後の二音「ふき」の音で始まる俳句を作りましょう。
※「ふき」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。
不羈の人よ駆れカフカスの峰雲へ
ひでやん
不羈の気概忘るな少年雲の峰
中岡秀次
不揮発性メモリー死す月の蝕
沖庭乃剛也
不揮発性メモリに残す夏休み
白発中三連単
不帰投点試す竜天に登る
葛西のぶ子
いわゆるポイント・オブ・ノーリターンってやつですな。その地点を越えると元の場所に戻れなくなる地点を意味します。もともとは航空用語だったそうです。「竜天に登る」との取り合わせも、言葉の成立の背景も踏まえた上での選択なのかしら。
不器男忌や無二の罅ある飯茶碗
有村自懐
不器男忌の我を一人にする夜雨
竹田むべ
富貴港の古びたヨット蒼き日々
かみん
富貴寄が好物でした雪起こし
加賀屋斗的
富貴豆を漆器に美しき夏料理
岡根喬平
ほうほう、港があって産物があって、有名なお土地なのかしら。……と思って調べたら、どうもそれぞれ別の場所らしい。「富貴港」は愛知の港、「富貴寄」は銀座のお菓子、「富貴豆」は山形のお菓子、と出てきました。銀座の「富貴寄」は正確には一文字目が「冨」なんですが、意味としては同じとみて良さそう。「富貴豆」はお店によって「ふうきまめ」とも読むようですが、しりとり的には「ふきまめ」かなあ。
違うお土地なのに別の言葉が使われてる……となると、「富貴」という日本語がもともと存在して、各者がそれぞれ名付けに使った、ってことなのかしら。辞書をみると「富貴」は「ふうき」ともいい、金持ちで地位や身分が高いことを表す、と記述があります。なーるほど、繁栄の祈りを込めて名付けるには縁起の良さそうな言葉だねえ。
付記せよと講師熱弁夏期講座
オカメのキイ
附記痛し父よりたまに来る手紙
国東町子
付記済ませ紙一枚の秋彼岸
こきん
附記に怖いと書かれたぞソーダ水
宇野翔月
付記とのみ 月の綺麗な夜でした
苫野とまや
布教用の冊子の奥の蚊のうなり
鄙野蕎麦の芽
布巾干す春愁を陽に濯がせて
かときち
葺替やぷつぷ口より竹の釘
佐藤さらこ
第32回の出題
不機嫌な石鹸玉ほど生き延びる
ぞんぬ
あえて多数派だった「不機嫌」から次回兼題を選びました。
石鹼玉遊びは多くの人がしたことあると思うけど、やたらと長生きする石鹼玉、たまにありますよね。地面や木にぶつかるかと思いきや、ふいっと避けるように動いて、その先でもまた避けて。他の石鹼玉とくっつくこともなく、ひとつだけ違った方向に飛んで行ったりして。その実感を、あれは不機嫌なんだよ、だから生き延びるんだよ、と言い切ってしまうことで詩を発生させています。どこまでこの子は飛ぶんだろうねえ、と見送りたくなりますな。
ということで、最後の二音は「びる」でございます。
しりとりで遊びながら俳句の筋肉鍛えていきましょう!
みなさんの明日の句作が楽しいものでありますように! ごきげんよう!