第47回「コスモスと浅間山」《ハシ坊と学ぼう!④》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
雷鳥の雛現れし最高峰
はなハチコ
夏井いつき先生より
今、目の前に現れているのならば、「雛現るる」のほうが臨場感があります。下五も一考です。
秋空より降り注ぐ岩御嶽山
阿呆鳥
夏井いつき先生より
噴火の様子を描こうとしているのでしょうか? だとすれば、調べがゆったりしすぎているのでは。
噴火の様子を描こうとしているのでしょうか? だとすれば、調べがゆったりしすぎているのでは。
浅間山コスモス抱いて優し顔
丘るみこ
夏井いつき先生より
「優し」が「顔」に接続するのであれば、「優しき」となります。
「優し」が「顔」に接続するのであれば、「優しき」となります。
花の名をググるに忙し避暑地かな
にゃんちゅう
夏井いつき先生より
「日々の忙しさから離れて避暑地に来てみたものの、花の名前一つ知らず、結局のところスマホ頼みです」と作者のコメント。
「~に忙し」は説明です。「避暑地」という季語を主役に立てられるような工夫が欲しいところです。例えば、〈花の名をググる避暑地の○○○○○〉この〇の部分にどんな言葉を入れるとよいか。パズルだと思って、やってみましょう。
「~に忙し」は説明です。「避暑地」という季語を主役に立てられるような工夫が欲しいところです。例えば、〈花の名をググる避暑地の○○○○○〉この〇の部分にどんな言葉を入れるとよいか。パズルだと思って、やってみましょう。
コスモスや生駒高原ラッピング
ぼたん
夏井いつき先生より
「南九州に、コスモスで有名な生駒高原があります。そこの秋の景色はまるで、コスモスで高原をラッピングしている様に見えて、心がワクワクします」と作者のコメント。
この句材を推敲した二句目の投句もありました。そちらは、作者の書きたいことがより分かりやすくなっていました。こちらは、調べがブツブツと切れてしまっているのも気になります。
この句材を推敲した二句目の投句もありました。そちらは、作者の書きたいことがより分かりやすくなっていました。こちらは、調べがブツブツと切れてしまっているのも気になります。
陣痛やバスは秋雷ただなかを
てんむす
夏井いつき先生より
「第42回『降車ボタン』の〈陣痛にひとり待つバス秋の雷〉の推敲句です。『に』が散文的なので『や』で詠嘆して、秋雷の只中に、私を出産するためにバスで病院へ行った、という母の状況を詠みました」と作者のコメント。
思い切って上五を「陣痛や」とした判断はよいですね。中七下五「バス秋雷のただなかを」とするか、「秋雷のただなかをバス」とするか。二択でしょうか。自分の心に適うのが、どちらなのか。何度も、声に出して読んでみましょう。
思い切って上五を「陣痛や」とした判断はよいですね。中七下五「バス秋雷のただなかを」とするか、「秋雷のただなかをバス」とするか。二択でしょうか。自分の心に適うのが、どちらなのか。何度も、声に出して読んでみましょう。
季語なし
紅をさすうるわし麓薄化粧
伊藤一刀斎
夏井いつき先生より
明確な季語がありません。この字面通りなら、「麓」で薄化粧をしている? としか読めません。まずは、『世界一わかりやすい俳句の授業』(PHP研究所)を手に入れるか、YouTube『夏井いつき俳句チャンネル』の「【初心者でもカンタン!?】日記から俳句を作ってみよう!」など参考にして下さい。
明確な季語がありません。この字面通りなら、「麓」で薄化粧をしている? としか読めません。まずは、『世界一わかりやすい俳句の授業』(PHP研究所)を手に入れるか、YouTube『夏井いつき俳句チャンネル』の「【初心者でもカンタン!?】日記から俳句を作ってみよう!」など参考にして下さい。
彼と下山折れたブレーキ葉月かな
くえん酸子
夏井いつき先生より
「彼と下山/折れたブレーキ/葉月かな」 それぞれ斜め線のところに意味の切れ目があるため、一句全体がこま切れになっています。この日の出来事を、十七音に詰め込もうとしたために、こうなっているのだろうと推測します。まずは、「折れたブレーキ」を切り取って、一句にしてみましょう。俳句は、ストーリーやエピソードを述べるのではなく、映像の描写です。
「彼と下山/折れたブレーキ/葉月かな」 それぞれ斜め線のところに意味の切れ目があるため、一句全体がこま切れになっています。この日の出来事を、十七音に詰め込もうとしたために、こうなっているのだろうと推測します。まずは、「折れたブレーキ」を切り取って、一句にしてみましょう。俳句は、ストーリーやエピソードを述べるのではなく、映像の描写です。
秋桜も縺れたままの墓の道
はまちこ
夏井いつき先生より
上五「~も」ではなく、「の」ならば、人選です。
上五「~も」ではなく、「の」ならば、人選です。
おにぎりや富士山7号目は秋
咲野たまふく
夏井いつき先生より
「7号目」? 入力ミスかな。
「7号目」? 入力ミスかな。
山に山分つ熱あり花野風
青井えのこ
夏井いつき先生より
「伝わるでしょうか。山に、山を分つほどの熱が存在しているのだ。花野風が吹く。……といった意味です。山を分つほどの熱とは、噴火の熱のことを示しています。浅間山の歴史を踏まえての措辞です。もし並選以下なら《ハシ坊と学ぼう!》でご指導賜れますと幸いです」と作者のコメント。
表現したい内容は、よいと思います。ただ、この字面で、果たしてどこまで読み解いてもらえるか。不安は残ります。噴火の熱なのか、地熱発電の類なのか。あるいは、比喩的な意味なのか。読みがブレそうです。
「伝わるでしょうか。山に、山を分つほどの熱が存在しているのだ。花野風が吹く。……といった意味です。山を分つほどの熱とは、噴火の熱のことを示しています。浅間山の歴史を踏まえての措辞です。もし並選以下なら《ハシ坊と学ぼう!》でご指導賜れますと幸いです」と作者のコメント。
表現したい内容は、よいと思います。ただ、この字面で、果たしてどこまで読み解いてもらえるか。不安は残ります。噴火の熱なのか、地熱発電の類なのか。あるいは、比喩的な意味なのか。読みがブレそうです。
豊年やモザイク模様ピンクの田
高橋 誤字
夏井いつき先生より
季語「豊年」は、どうしても稲のイメージがあるので、下五「ピンクの田」には違和感が残ります。
季語「豊年」は、どうしても稲のイメージがあるので、下五「ピンクの田」には違和感が残ります。
蜻蛉舞う池を覗く我の影
韻修
夏井いつき先生より
「舞う」という動詞は、要一考です。
「舞う」という動詞は、要一考です。
秋風や着地ピタリと銀メダル
恵翠
夏井いつき先生より
「はらはらドキドキしながら、オリンピックを見ていました。着地が決まり銀メダルでしたが、失敗を跳ね返しての銀は、金以上に輝いているようでした」と作者のコメント。
気持ちは分かりますが、「着地ピタリ」なのに「銀メダル」? と違和感をもつ読者もいるのではないかと。
「はらはらドキドキしながら、オリンピックを見ていました。着地が決まり銀メダルでしたが、失敗を跳ね返しての銀は、金以上に輝いているようでした」と作者のコメント。
気持ちは分かりますが、「着地ピタリ」なのに「銀メダル」? と違和感をもつ読者もいるのではないかと。
天高く災難に逢ふ人の一
釋愚拙
夏井いつき先生より
「今年(2024年)の元旦、能登半島で大きな地震が起きました。我が家も壁にひびが入り、軽微とはいえ、被害がありました。そして、8月8日には、南海トラフに連なるとされる日向灘の地震。そこで、思い出したのが、良寛が手紙にしたためたとされる『災難に逢う時節には災難に逢うがよく候…… これはこれ災難をのがるる妙法にて候』という言葉。目の前の事実を受け止めたとき、人は第一歩を踏み出せる、そう考えて詠みました」と作者のコメント。
俳句として読んだ時に、「災難に逢ふ人の一」をどういう意味に捉えればよいのか、迷います。良寛の手紙だということまでは、辿り着けないのではないかと。
「今年(2024年)の元旦、能登半島で大きな地震が起きました。我が家も壁にひびが入り、軽微とはいえ、被害がありました。そして、8月8日には、南海トラフに連なるとされる日向灘の地震。そこで、思い出したのが、良寛が手紙にしたためたとされる『災難に逢う時節には災難に逢うがよく候…… これはこれ災難をのがるる妙法にて候』という言葉。目の前の事実を受け止めたとき、人は第一歩を踏み出せる、そう考えて詠みました」と作者のコメント。
俳句として読んだ時に、「災難に逢ふ人の一」をどういう意味に捉えればよいのか、迷います。良寛の手紙だということまでは、辿り着けないのではないかと。