第47回「コスモスと浅間山」《ハシ坊と学ぼう!⑪》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
季語なし
夕星や明日から緩和病棟へ
迷照 りん句
夏井いつき先生より
季語は欲しいです。
季語は欲しいです。
季重なり
秋桜を眺める登山浅間山
さゆりん
夏井いつき先生より
「登山」は、夏の季語でもあります。
「登山」は、夏の季語でもあります。
季重なり
新涼に揺るるコスモス浅間山
春来 燕
夏井いつき先生より
「新涼」「コスモス」どちらも季語ですね。
季重なり
そこに山そこに秋桜女子登山
ぱんだ社長
夏井いつき先生より
「登山」も季語ではありますが……。上五中七まではよいので、下五を一考して下さい。
「登山」も季語ではありますが……。上五中七まではよいので、下五を一考して下さい。
季重なり
秋桜のおおはしゃぎ半袖涼し
酒井彩香
夏井いつき先生より
「秋桜」「半袖」「涼し」それぞれが季語です。歳時記をお手元に一冊用意しましょう。歳時記と仲良くなることから、俳句の修行は始まります。
「秋桜」「半袖」「涼し」それぞれが季語です。歳時記をお手元に一冊用意しましょう。歳時記と仲良くなることから、俳句の修行は始まります。
季重なり
夏の山御願ガジュマルにひかる慈雨
双樹
夏井いつき先生より
ちょっと材料が多いです。「慈雨」も季語ですから、むしろ「夏の山」を外すのがベターではないかと。
ちょっと材料が多いです。「慈雨」も季語ですから、むしろ「夏の山」を外すのがベターではないかと。
季重なり
妹折りし花野くすぐるかざぐるま
麦のパパ
夏井いつき先生より
「かざぐるま」が春の季語であることが、やはり気になります。明確な強弱をつけたい。更に、「妹折りし」が何を折ったのか、読みがブレるかと。
「かざぐるま」が春の季語であることが、やはり気になります。明確な強弱をつけたい。更に、「妹折りし」が何を折ったのか、読みがブレるかと。
季重なり
朝焼けのコスモス畑雫あり
しなやか
夏井いつき先生より
「朝焼」も季語です。これに代わる季語ではない言葉もありますから、探してみましょう。
「朝焼」も季語です。これに代わる季語ではない言葉もありますから、探してみましょう。
秋桜は昭和の茣蓙へと連れて行く
るはちか
夏井いつき先生より
「幼少の頃、コスモスが咲く庭先で、茣蓙(ござ)を敷いて、飯事(ままごと)遊びや母とえんどう豆のスジ取りをしていた時に、優しいコスモスの匂いを知りました。それ以来、トマトのヘタの匂い同様に、あの頃にタイムトラベルしてしまいます」と作者のコメント。
「昭和の茣蓙へと連れて行く」をどう読み解けばよいのか。かなり読みを迷いました。「おままごと」ならば、その場面が分かるように書きたいですね。
「幼少の頃、コスモスが咲く庭先で、茣蓙(ござ)を敷いて、飯事(ままごと)遊びや母とえんどう豆のスジ取りをしていた時に、優しいコスモスの匂いを知りました。それ以来、トマトのヘタの匂い同様に、あの頃にタイムトラベルしてしまいます」と作者のコメント。
「昭和の茣蓙へと連れて行く」をどう読み解けばよいのか。かなり読みを迷いました。「おままごと」ならば、その場面が分かるように書きたいですね。
雷鳴や月なき夜に懸ける花
あすかきょうか
夏井いつき先生より
「新月の夜から三日続けて、我が家の月下美人が咲きました。その三日目は雷雨の中、咲きました。雨、稲光りもさることながら大きな轟きの中、負けじときれいに花を咲かせてくれました。『雷鳴』『月』『花』と三つも季語が入ってしまいましたが、あくまでも主役は『雷鳴』です。兼題のコスモスでなくてスミマセン」と作者のコメント。
こんな光景と出会うこともまた俳人の喜びです。が、一句としては、やはり材料が多すぎます。もっと、率直に、「月下美人」と「雷鳴」で一句に整えてみましょう。
「新月の夜から三日続けて、我が家の月下美人が咲きました。その三日目は雷雨の中、咲きました。雨、稲光りもさることながら大きな轟きの中、負けじときれいに花を咲かせてくれました。『雷鳴』『月』『花』と三つも季語が入ってしまいましたが、あくまでも主役は『雷鳴』です。兼題のコスモスでなくてスミマセン」と作者のコメント。
こんな光景と出会うこともまた俳人の喜びです。が、一句としては、やはり材料が多すぎます。もっと、率直に、「月下美人」と「雷鳴」で一句に整えてみましょう。
大太鼓連打して歓迎の雷
楽奏
夏井いつき先生より
この「雷」は、大太鼓の連打を比喩しているのではないかと。季語を比喩に使うと、季語としての鮮度は落ちます。
この「雷」は、大太鼓の連打を比喩しているのではないかと。季語を比喩に使うと、季語としての鮮度は落ちます。
花野はや母は花の名云はねども
千代 之人
夏井いつき先生より
「この句を解釈すれば、『花野、もはや母は花の名(を)言わないけれど』です。母の晩年は特養暮らしでした。秋の面会時、母を車椅子に乗せ、外へ出ることがありました。認知症の進行により、言葉の減った母。認知症がなければ野の花の全体の良さや、そこに咲く多種の花について語ったかも知れません(華道を嗜んでいた母です)。いや、彼女は『言わない』だけ、花野について何か感じていた、と思っての句です」と作者のコメント。
なるほど、これも人生の大切なエピソードですね。「もはや母は」という意味を伝えたいのならば、やはりそのように書いたほうがいいですね。
添削例
母もはや花の名云はねども花野
「この句を解釈すれば、『花野、もはや母は花の名(を)言わないけれど』です。母の晩年は特養暮らしでした。秋の面会時、母を車椅子に乗せ、外へ出ることがありました。認知症の進行により、言葉の減った母。認知症がなければ野の花の全体の良さや、そこに咲く多種の花について語ったかも知れません(華道を嗜んでいた母です)。いや、彼女は『言わない』だけ、花野について何か感じていた、と思っての句です」と作者のコメント。
なるほど、これも人生の大切なエピソードですね。「もはや母は」という意味を伝えたいのならば、やはりそのように書いたほうがいいですね。
添削例
母もはや花の名云はねども花野
なゐ果ててコスモスの庭顕るる
龍の珠
夏井いつき先生より
「地震で家が壊れても、季節がくると庭にはコスモスが咲く、という風景を詠みました。歳時記を見ると、『コスモス』はカタカナになっていたので、カタカナでも良いのかしらと思い、カタカナにしてみました。また、『顕れる』の文語体は『顕るる』でいいのかどうか、心配です。古語の下二段活用ではどうなるのでしょうか。声に出してみて、『あらわるる』の方が良かったので『顕れる』ではなく『顕るる』を選びました」と作者のコメント。
片仮名の表記を持つ季語は、片仮名書きでよいですよ。俳句における諸々のケースバイケースは、一つずつ覚えていって下さい。
さて、この句ですが、時間軸が少々気になります。「なゐ」=地震が「果てて」と書けば、揺れていたのが今、終わったと読む人がほとんどではないでしょうか。地震が終わって、コスモスの庭が現れるという時間軸に違和感がのこるのです。この点を一考してみましょう。
「地震で家が壊れても、季節がくると庭にはコスモスが咲く、という風景を詠みました。歳時記を見ると、『コスモス』はカタカナになっていたので、カタカナでも良いのかしらと思い、カタカナにしてみました。また、『顕れる』の文語体は『顕るる』でいいのかどうか、心配です。古語の下二段活用ではどうなるのでしょうか。声に出してみて、『あらわるる』の方が良かったので『顕れる』ではなく『顕るる』を選びました」と作者のコメント。
片仮名の表記を持つ季語は、片仮名書きでよいですよ。俳句における諸々のケースバイケースは、一つずつ覚えていって下さい。
さて、この句ですが、時間軸が少々気になります。「なゐ」=地震が「果てて」と書けば、揺れていたのが今、終わったと読む人がほとんどではないでしょうか。地震が終わって、コスモスの庭が現れるという時間軸に違和感がのこるのです。この点を一考してみましょう。
コスモスの千々に揺れ人に原罪のあり
琳青
夏井いつき先生より
「コスモスはそれぞれ勝手気ままに揺れて見えますが、それを人間の世界になぞらえると、それぞれの考えで動いているようでありながら、大勢に影響を受けている。その根底には、持って生まれた原罪があり、そこからは逃げられない」と作者のコメント。
句材はよいです。調べを整えましょう。例えば、上五を字余りにして「人に原罪」として、残りの音数で「コスモス」を描写してみましょう。
「コスモスはそれぞれ勝手気ままに揺れて見えますが、それを人間の世界になぞらえると、それぞれの考えで動いているようでありながら、大勢に影響を受けている。その根底には、持って生まれた原罪があり、そこからは逃げられない」と作者のコメント。
句材はよいです。調べを整えましょう。例えば、上五を字余りにして「人に原罪」として、残りの音数で「コスモス」を描写してみましょう。
浅間の残雪を望む鬼押し出し
ヨシキ浜
夏井いつき先生より
語順が散文になっています。せめて……
添削例
残雪や浅間を臨む鬼押出し
語順が散文になっています。せめて……
添削例
残雪や浅間を臨む鬼押出し
コスモスの海猫ダイブせり風そよぐ
風呂猫
夏井いつき先生より
「コスモスの野原の中に、猫がうわっと飛び込んでびっくりしたのですが、本人(猫)見えなくなって風が吹くだけ、という情景です」と作者のコメント。
なるほど、「コスモスの海」に「猫」が「ダイブ」するんですね。この語順だと「海猫」と読む人のほうが多いのではないかと。語順も含めて、再考してみましょう。
「コスモスの野原の中に、猫がうわっと飛び込んでびっくりしたのですが、本人(猫)見えなくなって風が吹くだけ、という情景です」と作者のコメント。
なるほど、「コスモスの海」に「猫」が「ダイブ」するんですね。この語順だと「海猫」と読む人のほうが多いのではないかと。語順も含めて、再考してみましょう。
この星の芯の火群よ蝉時雨
巴里乃嬬
夏井いつき先生より
「浅間山、活火山だった! と、思い出して詠みました。『焔(ほむら)』の字を使いたかったのですが、ふり仮名が書けないと『ほのお』と読まれそうで、やむを得ず『火群』で記しました」と作者のコメント。
今回は、二句ともに、肩に力が入り過ぎたかも。「活火山」と「蝉時雨」の取り合わせは、よいと思います。
「浅間山、活火山だった! と、思い出して詠みました。『焔(ほむら)』の字を使いたかったのですが、ふり仮名が書けないと『ほのお』と読まれそうで、やむを得ず『火群』で記しました」と作者のコメント。
今回は、二句ともに、肩に力が入り過ぎたかも。「活火山」と「蝉時雨」の取り合わせは、よいと思います。
龍淵に浅間燦爛せしめつつ
巴里乃嬬
夏井いつき先生より
「『龍淵に潜む』という季語が好きで、詠んでみたかったのと、下五「せしめつつ」を使って詠みたいと思っていたので、トライしてみました」と作者のコメント。
季語が「龍淵に」であり、対象が「浅間」であることに対しての「燦爛せしめつつ」は、言葉の質量のバランスに無理があります。「せしめつつ」は宿題として、脳の片隅において、まずはこの句を完成させて下さい。
「『龍淵に潜む』という季語が好きで、詠んでみたかったのと、下五「せしめつつ」を使って詠みたいと思っていたので、トライしてみました」と作者のコメント。
季語が「龍淵に」であり、対象が「浅間」であることに対しての「燦爛せしめつつ」は、言葉の質量のバランスに無理があります。「せしめつつ」は宿題として、脳の片隅において、まずはこの句を完成させて下さい。