写真de俳句の結果発表

第47回「コスモスと浅間山」《ハシ坊と学ぼう!⑬》

ハシ坊

第47回のお題「コスモスと浅間山」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

父との低きコスモスの丘五休憩

桔梗郁子

夏井いつき先生より
「父が年取っているので、低いコスモスの丘を行くのに五回休憩しました」と作者のコメント。

「五休憩」という書き方は、ちょっと乱暴。せめて「五回休憩」と書けるように、他の言葉を精選してみましょう。
“参った”

風穴に野原匂へば台風過

風友

夏井いつき先生より
句材はよいですね。述べ方の問題かな。「匂へば」と関連付けないほうがよいかもしれません。
“ポイント”

ヨネさんの緑内障に青嶺かな

深紅王

夏井いつき先生より
句材はよいです。「~に~かな」の叙述を一考してみましょう。
“ポイント”

前方後円墳は風コスモス

渡辺鬼

夏井いつき先生より
「前方後円墳にのぼって風に吹かれながら、上からコスモスがひろがる裾野を見ているのを表現したかった句です。はじめ〈コスモスや前方後円墳は風〉としたのですが、下から見上げている感じかなと思って、変えました。ちょっとリズムが悪いかなと思っています」と作者のコメント。

原句を推します。この表現で十分、あなたの表現したいことは伝わりますよ。原句ならば、人選。
“参った”

風死すや人気いたこの列並ぶ

ひろ笑い

夏井いつき先生より
人気のある「いたこ」の順番待ちの列という意味ですよね。だとしたら、「人気いたこに並ぶ列」となるのが、妥当かと。
“ポイント”

秋桜や風音優し日暮れ方

すみ子

夏井いつき先生より
三段切れになっているので、「秋桜の風音優し」とすれば回避できます。
“ポイント”

コスモスや皆鬼籍なの古写真

まさと澄海

夏井いつき先生より
「ふらっと立ち寄った飲み屋の壁に、女将さんが若いときに撮ってもらったという写真が額に飾ってありました。元は小さな古い写真を引き伸ばしたもので、一緒に写っているかたはみな亡くなっちゃった、という女将さんの話を聞きながら、日本酒を飲んでいるときの様子です。『女将さん』と『日本酒』は入らなかったので、コスモスがこれらを包含する季語として機能しているかが課題と思っています」と作者のコメント。

「コスモス」との取り合わせは、よいです。中七「皆鬼籍なの」は、その女将さんの言葉をそのまま書いたのだと推測しますが、「コスモスや/皆鬼籍なの/古写真」と三段切れになります。三段切れは一か所つなげればよいだけなので……

添削例
コスモスや皆鬼籍なる古写真
“ポイント”

西日照り調弦さえも定まらぬ

宇佐

夏井いつき先生より
後半を「調弦定まらず」として、前半の音律を整えてみましょう。「西日」とあれば、「照り」は不要であることも含めて、一考してみましょう。
“参った”

大束の吾の棺上花には秋桜

前世ニャン子

夏井いつき先生より
「棺上花」という言葉があるのですね。とはいえ、語順を含めて再考の余地はありそうです。一例をあげるとすれば……

添削例
吾の棺上には大束のコスモスを
“ポイント”

レベル2の山道ヘルメットに蝶

ばちゃ

夏井いつき先生より
「現在(2024年夏)、浅間山はレベル2の警戒警報が出ているとのこと。それでも、火口付近には近寄れないものの、ルートによっては登山可能なようです。スリリングですよね。その緊張感と警報など関係ない自然の営みを合わせてみました。季語が夏か秋にできなかったのが残念です。数字はこの場合、算用数字で良いのですよね?」と作者のコメント。

警戒レベルならば、そう書いたほうがよいですね。

添削例
警戒レベル2ヘルメットに蝶
“ポイント”

ベランダで珈琲富士には初雪

高橋 玄彩

夏井いつき先生より
語順が逆でしょう。こうすれば人選。

添削例
富士山は初雪べランダの珈琲
“ポイント”

抱きあふて子と母の骸コスモス

無弦奏

夏井いつき先生より
「あふて」ではなく、「あひて」となります。これならば、人選です。
“ポイント”

シラスから骸コスモスの石段

無弦奏

夏井いつき先生より
「天明3年の浅間山の噴火の際、鎌原観音堂へ避難した村人。1979年の発掘調査で女性2名の遺体が発見されました」と作者のコメント。

この災害を、十七音で括ってしまうのは、なかなか難しい。過去の出来事を俳句にする場合は、その細部を見てきたかのような描写で表現するしかありません。つまり、この災害の事実を知らない人にも伝わるようなリアリティある描写が必要だということです。
“参った”

静かなり鴉も塞ぐ終戦の日

鶴子

夏井いつき先生より
句材はよいです。「鴉」が静かであることと、「終戦日」の取り合わせだけで十分俳句になります。「~も塞ぐ」は不要。
“参った”

柿ピーの型で書こうか大大菊

星 秋名子

夏井いつき先生より
「コスモスがキク科だと知ったら、菊の句が出てきてしまって……」と作者のコメント。

菊の句ができてもよいのですが……「柿ピーの型で書こうか」の部分の意味をつかみ取れず……。
“参った”

山の端の気配は月の出のサイン

里春

夏井いつき先生より
この様子は、「月白」あるいは「月代」という季語で表すことができます。
“参った”

外泊日倒れて根を張る秋桜よ

森子

夏井いつき先生より
「外泊日に自宅へ戻った際に見た光景です」と作者のコメント。

作者が倒れたのではないですよね? ならば語順を変えましょう。

添削例
倒れ根を張るコスモスや外泊日
“ポイント”

手術できぬ吾と夫とでただ昼寝

飛燕

夏井いつき先生より
「手術不能の悪性腫瘍が見つかりました。兼題とは違い、句の完成度も未熟かと思いますが、今はそれしか考えられず、今しか作れない句をみていただきたい気持ちがあり、投句いたします」と作者のコメント。

自分の気持ちをこんなふうに俳句にすることは、とても大事です。心を吐き出すこと、言葉にしてみることで、自分を客観視できます。
さて、この句ですが、語順を変えるだけでも調べが整います。

添削例
夫とただ昼寝す手術できぬ吾
“ポイント”

女子旅や帰路の景色は秋めけり

鈴聖湖

夏井いつき先生より
「や」「けり」、切字が重なりました。どちらかを外しましょう。
“参った”

ひとり来て風を眺むる花野な

琳青

夏井いつき先生より
「花野かな」なのでしょうね。であれば人選です。
“参った”

ビー玉をはじいた先にモンシロチョウ

紙威楓

夏井いつき先生より
「私の通っていた学校には、浅間の森というものがあり、花壇にはコスモスが咲いていました。なのでその頃に遊んだ光景を詠んでみたのですが……実際にモンシロチョウがいたので、映像として登場させたかったというのはあるんですが、字数的にはアゲハチョウなどにした方が収まりは良いと思うんです。そういう場合は字数を優先させて変えた方がいいのでしょうか?」と作者のコメント。

植物や動物の季語をカタカナ書きするのは、推奨されません。勿論、特別な意図があったり、本来の表記が片仮名である場合もありますが。(コスモス、チューリップなど)この句の場合でしたら、下五を「紋白蝶」と書いたほうが、表記の上でも落ち着きます。これならば、人選。
“ポイント”

青空やコスモス纏う浅間山

詠野孔球

夏井いつき先生より
「纏う」という動詞に甘えず、ここをしっかりと描写しましょう。
“参った”

秋天や自然の業につい涙

海神瑠珂

夏井いつき先生より
もう一句の投句も、同じ句材から生まれたものかと推測しますが、この句の中七「自然の業に」は、説明です。何を観て、こう感じたのか。そこを描写しましょう。
“参った”

霊峰白山の滴り滴りぬ

あゆママ

夏井いつき先生より
佳い句材です。調べを意識して、最後の推敲に挑んで下さい。
“参った”