写真de俳句の結果発表

第48回「鍋一杯の柚子ジャム」《ハシ坊と学ぼう!④》

ハシ坊

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評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

ジャム供ふ初任校の甲子園

それから

夏井いつき先生より
「高校教師だった父が亡くなりました。初任校の担任だった生徒さんたちには、たくさんお悔やみの言葉をいただきました。その初任校が32年ぶりに甲子園に出場し、勝ち進んでいます。父の写真とともに応援しています」と作者のコメント。

俳句のみを読んで、誰に「供ふ」のか等、読み切れない部分が多いかと。更に、季語を「甲子園」とするのは無理があります。
“ポイント”

秋高し異国のジャムのセピア色

クスノさとみ

夏井いつき先生より
下五を一考しましょう。「セピア色」は非常によく使われる言葉です。ここをオリジナリティのある表現ができると、人選です。
“ポイント”

ジャム掬うスプーンの先の秋涼し

希凛咲女

夏井いつき先生より
語順を変えるといいですね。これならば、人選。

添削例
秋涼しジャム掬うスプーンの先
“ポイント”

湯気の香や山峡に凛木守柚

たけ

夏井いつき先生より
「昔行ったことのある馬路村を思い浮かべて、作りました」と作者のコメント。

「湯気の香や」の切字で切れて、「山峡に凛」でも意味が切れているようです。三段切れになります。
“ポイント”

妣育てし柚ほろ苦いジャムへと

野山めぐ

夏井いつき先生より
「ジャムは甘い物ではありますが、もう二度と作れないジャムを作るとなると、思い出や涙でほろ苦くなってしまうという体験を詠みました」と作者のコメント。

語順を変えるとよくなります。

添削例
ジャム瓶へ妣の育てし柚子苦し
“ポイント”

朝市に瓦礫そのまま秋の風

遥琉

夏井いつき先生より
上五の助詞「に」を一考してみましょう。
“参った”

摘果して残りしユズの高き香よ

よしえ

夏井いつき先生より
季語としては「柚子」と漢字で書きたいですね。漢字にすると並選です。
“参った”

嗅覚や在るのだろうなかぼすの香

なつのおわり

夏井いつき先生より
「今回は優雅に別府で湯治しながらの投稿のはずが、飛行機の気圧? で耳と鼻をやられ、嗅覚がなくなってしまいました。目の前のかぼすが全く香りません。ご飯も美味しくありません。ショックです」と作者のコメント。

それは大変でしたね。そのような事件に遭うと、やはり俳句にしておきたい。ただ、俳句のみを読んだ時、「在るのだろうな」といわれても、そりゃ在りますよ……と思ってしまいます。エピソードを十七音にするのはとても難しいのですが、「かぼす」の香りがしない、という事実をストレートに書いてみましょう。
“ポイント”

佐保姫や鎖骨を撫づるゼフィルス神

早霧ふう

夏井いつき先生より
第41回『お腹が空いていましたので』の〈ゼフィルスや菜の花餐に招かれて〉の推敲句です。兼題写真に風を感じました。ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』を思ってしまい、中七をこうしてみました」と作者のコメント。

「鎖骨を撫づるゼフィルス神」とした工夫は、分かります。が、「佐保姫」は春を司る女神。「ゼフィルス神」との取り合わせが、お互いに殺し合ってしまうのです。
“参った”

ぐぽぐぽと新小豆煮えへら重し

細葉海蘭

夏井いつき先生より
オノマトペが独特でよいですね。語順を逆にすると、人選です。

添削例
へら重しぐぽぐぽ煮ゆる新小豆
“ポイント”

主なき柚子ジャム作りし鍋ぽつん

天上たこ

夏井いつき先生より
すでに「主」はなくて、「柚子ジャム作りし」の「し」は過去の意味ですし、「鍋ぽつん」と残ってるだけだし……。季語の鮮度をどう確保するか、そこが難しい。
“参った”

待ち人来ず柚子10個も湯に放つ

森田ゆり

夏井いつき先生より
俳句では、特別の意図がない限りは、数詞は漢数字で書くのが定石です。
“参った”

鍋の中柚子と砂糖のマッチング

夏井いつき先生より
下五「マッチング」が説明です。俳句は説明ではなく、描写ですよ。
“参った”

秋麗の柑橘姉妹誰れにする?

琥幹

夏井いつき先生より
「柚子のジャムより発想をとばして、柑橘類の種類が多いこと、その香り、切り口の可愛いさから柑橘たちを姉妹に例えまして、さてどれにする? と遊んでみました」と作者のコメント。

うーむ、発想は楽しいのですが、作者のコメントを読まないと、句意が掴みにくいです。
“参った”

朝寒や程よく苦し柚子のジャム

木漏

夏井いつき先生より
「~や」の切字で切れて、「~苦し」の終止形で切れる三段切れです。「苦き」と連体形にすれば、並選です。
“参った”

牡丹鍋香り立ち消ゆ柚子胡椒

木漏

夏井いつき先生より
「柚子胡椒を投じた時の、一瞬の香りを表現しました」と作者のコメント。

季語は「牡丹鍋」ですよね? うーむ……主役を否定する形になるので、述べ方を再度工夫してみましょう。
“参った”