写真de俳句の結果発表

第48回「鍋一杯の柚子ジャム」《ハシ坊と学ぼう!⑨》

ハシ坊

/s3/skiyaki/uploads/ckeditor/pictures/623242/content_5873652__DSC_1175.JPG

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

夏草茂りけり束の間の空地

風友

夏井いつき先生より
語順を逆にして人選。
“ポイント”

炊き出しのカレー匂いて秋さびし

しなやか

夏井いつき先生より
「炊き出しのカレー」と書けば、十分に匂ってきます。「匂いて」の四音の使い方を工夫してみましょう。
“ポイント”

柚子の実置く仏間香りて屋敷神

小林 昇

夏井いつき先生より
「柚子」と書けば、実を指します。「柚子」と「仏間」で一句、「柚子」と「屋敷神」で一句。それぞれ切り分けて俳句にしてみましょう。
“ポイント”

柚子ジャムやご機嫌キースジャレットだ

まこと七夕

夏井いつき先生より
「何故かキース・ジャレットが出てきて、何故かご機嫌で……(ピアノを弾かなくて)。柚子のジャムを煮詰めてる。そんな絵が浮かびました」と作者のコメント。

上五「柚子煮るや」あるいは「柚子ジャム煮る」とでもしていただくと、人選に推せます。
“ポイント”

柚子ジャムや丸つけをする母の指

王朋亡

夏井いつき先生より
「ジャムを煮ていた母に、宿題を見てもらうという句です。ジャムの匂いがほのかにのこりながら、丸つけをしてもらっています」と作者のコメント。

上五「柚子煮るや」あるいは「柚子ジャム煮る」とでもしていただくと、人選に推せます。
“参った”

休暇開け果物朽ちて鍋の中

かおりんご

夏井いつき先生より
ちょっと時間軸が強引。季語「休暇明け」……開け? ここも疑問です。
“ポイント”

『トゥオるまで煮詰めます』って秋初月

沢拓庵

夏井いつき先生より
「『ジャム』と記さずに,どう煮詰めるかをオノパトペで表現してみました。動画をたくさん見て『テゥルテゥル』を思いつき、長いので『テゥオる』と動詞にして、最終的には『トゥオる』となりました。娘の母のレシピ帳にはそう記されているのでした。実は『テゥオル』を検索したら『トゥオル』が見つかり、これはJ・R・R・トールキンの小説の登場人物だそうです。『母が好きだった小説家』という裏設定です」と作者のコメント。

試みは面白いです。「トゥオるまで煮詰めます」がどういう意味なのかを、もう少し読者に分かりやすくする工夫が欲しいかと。つまり、この季語は動くのだろうと思います。例えば、「秋果」という季語を使って、一物仕立てに近い仕上げにして下さると、「トゥオる」という造語動詞が生きてくるのではないかと。
“ポイント”

手作りのジャム無き今年の帰省バス

まさと澄海

夏井いつき先生より
「年下の母が亡くなり、一人暮らしとなった父の元に、週末、仕事の合間にバスで帰るようになりました。母が健在な時は、手作りのジャムを貰ってもあまり喜ばなかったのが悔やまれます。こんな創作が出来ることが、俳句のいいところです。『の』を入れると中八になりますが、取ると逆にぷつりと切れる感じがしたので、そのままにしました」と作者のコメント。

中八の「の」は外しても、それほど障らないとは思います。が、ご本人として気になるのならば、語順を変える工夫もできそうです。

添削例
帰省バス手作りジャムの無き今年
“ポイント”

酸味苦味おぼるるやふに柚子刻む

ぴん童子

夏井いつき先生より
「ように」を歴史的仮名遣いにすると、「やうに」となります。そこを直すと、人選です。
“参った”

秋果ジャム回す木箆は金の匙

あそうさん

夏井いつき先生より
やろうとしていることは佳いです。種類を特定せずに「秋果」とした点も、意図に合っていると思います。気になったのは、「回す木箆は金の匙」の「金の匙」は比喩? 「箆」と「匙」だと、比喩の落差が少ないので、その点が気になりました。韓国のスラングのイメージが、邪魔しているのかもしれませんが……。
“参った”

配る顔思ふて煮込む秋果ジャム

すず

夏井いつき先生より
「思ふ」が「て」に接続する時は、連用形になるので「思ひて」となります。
“参った”

柚子ジャムの情熱に負け花曇

中指富士夫

夏井いつき先生より
中七は、どういうニュアンスでしょうか。季語「花曇」がちょっと添え物になっている感じもします。
“ポイント”

ぶくぶくと酒かす飽かず見つむ子よ

詠華

夏井いつき先生より
「見つむ」が「子」に接続する時は連体形になるので、「見つむる子」となります。最後の「よ」を外すと、音数的にはOKです。
“ポイント”