写真de俳句の結果発表

第48回「鍋一杯の柚子ジャム」《ハシ坊と学ぼう!⑫》

ハシ坊

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評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

柚子の色香食欲増し眠気取れ

竜酔

夏井いつき先生より
これは、詩というよりは柚子の効用を述べた……というべきか。
“ポイント”

瓶割れてストーブの皿お湯白し

べにりんご

夏井いつき先生より
「小中学生の頃、だるまストーブの上にある蒸発皿に、給食の牛乳瓶を入れて温めて飲んでいました。時々瓶の底が割れて、蒸発皿のお湯と牛乳が混ざり真っ白になりました。異臭が教室中に蔓延し、クラスメイトがあぁ割れたという思いでいたことを思い出し、詠みました」と作者のコメント。

なるほど、そういうエピソードならば、「牛乳」というキーワードは入れたいですね。となれば、言葉の優先順位をつけて、単語を一つ二つ減らす必要がありますね。
“ポイント”

鍋底へ木べらでノの字秋思かな

がらぱごす

夏井いつき先生より
「ノの字」で意味が切れるので、下五「~かな」へ向かって、うまく調べがながれてくれないのです。この句でしたら、「かな」を諦めるのが得策ではないかと。
“ポイント”

柚子皮のひらり汁椀のひかりかな

灯呂

夏井いつき先生より
「『の』か『は』か悩みに悩みました……」と作者のコメント。

この内容だとすれば……〈柚子の皮ひらりと汁椀のひかり〉ぐらいのニュアンスかなとは思いますが、柚子の皮としては「ひらり」がちょっと違うのかも。
“ポイント”

今日は待つ日柚子ジャムの皮が溶ける

宮康平

夏井いつき先生より
「柚子ジャムの皮が溶ける」という表現に、かすかな引っかかりを感じました。柚子の皮が溶けてジャムになっていく……という感じなのではないかと。
“参った”

柚子を煮る「ボクボクボク」と沸る泡

平岡梅

夏井いつき先生より
オノマトペの表記とて、カギカッコは不要でしょう。更に「沸る泡」に対しての、このオノマトペはちょっと分かり過ぎるかも。
“ポイント”

陽だまりの灰汁なきジャムを賢治の忌

文月蘭子

夏井いつき先生より
「ジャム」と「賢治の忌」の取り合わせは、成立すると思いますが、「陽だまりの灰汁なきジャム」という措辞に違和感があります。灰汁をとっているところ? 「灰汁なき」状態で仕上がっている? 
“ポイント”

煩悩を煮詰め聖夜の苺ジャム

亘航希

夏井いつき先生より
「聖夜」に対しては、「煩悩」ではない言葉のほうが良いかと。佳い句になりそうなので、再考してみましょう。
“ポイント”

柚餅子吊る風に揉まれて珍味となる

つきみつ

夏井いつき先生より
下五は言わずもがなの言葉。「珍味となる」という結果を説明する必要はありません。
“参った”

ひねりきりゆるきてのなか水蜜桃

谷川炭酸水

夏井いつき先生より
感覚的には共鳴するものがあるのですが、この表現がベストなのかどうか。再考してみて下さい。
“参った”

稲光試験管の子が起動する

井村 壽々

夏井いつき先生より
「鍋のなかに並んでいる瓶は、実験室の試験管のイメージです」と作者のコメント。

ちょっとそこまでは読み解けません。「鍋のなかに並んでいる瓶」の映像が全くでてこないので。
“参った”

午睡して夫逝く夢マーマレード煮る

藤田ほむこ

夏井いつき先生より
「夫が死ぬ夢を見て、複雑な心境でほろ苦のマーマレードを煮ています」と作者のコメント。

素材がとても面白いです。調べが滞っているので、そこを推敲してみましょう。
“ポイント”

ヨーグルト木苺ソース渦描く

道見りつこ

夏井いつき先生より
「凡人ですね。どうすれば凡人脱出できるでしょうか?」と作者のコメント。

「取り合わせ」の技法を習得して下さい。例えば、「木苺ソース渦描く」という良きフレーズを生かして、上五に全く関係のない五音の季語を取り合わせます。「木苺ソース」は加工品なので、季語としての力は弱いので、別の季語をしっかりと取り合わせるのです。「小鳥来る」「秋うらら」等々、歳時記を開いて、色んな季語を取り合わせて、その違いを味わってみましょう。
“ポイント”

白桃をそっとそっとむきて朝に盛る

草栞

夏井いつき先生より
表現しようとしていることは佳いと思います。ただ、この書き方だと、魅力が伝わり難いかと。「白桃」と「朝」「盛る」この三語の取り合わせはよいので、再考してみましょう。
“ポイント”

作り直しバザーにセーフ茄子カレー

夏井いつき先生より
「昔、バザーのために鍋一杯のカレーを作って、翌朝みたら表明が白くなっててなんか怪しい。慌てて商店街に手分けして走り、肉屋や八百屋を開けて貰って、作り直したことを思いだしました。はじめは〈作り直した茄子カレー待ちバザー開く〉 としたのですが、これぞ散文と思い、直してみましたが、うまくいきません」と作者のコメント。

エピソードを十七音におさめるのは、とても難しいのです。『プレバト!!』の芸能人の皆さんも、何かのエピソードがテーマになった時は、悪戦苦闘してます。まずは、何がどうしてこうなった……という事の顛末を書くのではなく、描写する練習からやっていきましょう。とはいえ、この句のエピソードを一句に入れ込むとすれば、このくらいのことしかできません。詩としての純度は低くなります。

添削例
バザー早朝作り直した茄子カレー
“ポイント”

ジャム炊きてムックリの空耳ハスカップよ

晴芽みやび

夏井いつき先生より
素材はよいですね。調べが滞っているので、その点を再考してみましょう。場合によっては、二句に切り分ける必要がでてくるかもしれません。俳句は韻文。内容と調べの関係について、考えてみましょう。
“ポイント”

柚子の味慣れし頃には流浪とす

青山楽夢

夏井いつき先生より
「~には」が散文臭い使い方です。語順を一考して下さい。
“参った”

煮詰まらず行き詰らずや原爆忌

伊呂八 久宇

夏井いつき先生より
やろうとしているニュアンスは理解できます。ただ、具体的な映像が少なすぎるので、俳句としては少し損です。
“ポイント”

春隣一人暮らしやジャムを煮る

阿呆鳥

夏井いつき先生より
「や」を「の」とすれば、人選です。
“参った”

銅鍋をジヤムの真つ赤や希典忌

佐藤レアレア

夏井いつき先生より
上五中七を良しとした時、この忌日季語は、ちょっと悩んでしまいます。これがベストなのだろうかと。
“ポイント”

梨狩りにマイ包丁を準備する

浅田香歌

夏井いつき先生より
「梨狩りにマイ包丁を」と書けば、準備しているであろうことは推測できます。
“ポイント”