第48回「鍋一杯の柚子ジャム」《ハシ坊と学ぼう!⑬》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
柚子ジャムお茶に漬け物煮魚に
美山
夏井いつき先生より
詩というよりは、レシピに近くなりました。
せみの鳴く鍋いっぱいに入りきらず
イケダエツコ
夏井いつき先生より
「鍋いっぱい」に、何が入りきらないのか。まさか、「せみ」ではないでしょうが……。
足元の犬はまつたり柚子煮詰む
キャロット えり
夏井いつき先生より
「柚子煮詰む」と「柚子を煮る」、ニュアンスの違いについて考えてみましょう。語順も一考したほうがよいかな。
新涼の厨にジャムの煮る匂ひ
喜多郎
夏井いつき先生より
「煮る」ならば、「ジャムを」となりますね。
「煮る」ならば、「ジャムを」となりますね。
柚子ジャムはジュースになりてSDGs
のえ
夏井いつき先生より
言いたいことは分かりますが、詩というよりは、スローガンになってしまったか。
言いたいことは分かりますが、詩というよりは、スローガンになってしまったか。
家庭内別居は楽し柚子のジャム
さとうナッツ
夏井いつき先生より
下五を「柚子を煮る」「柚子香る」ぐらいにしてくれたら、人選です。
下五を「柚子を煮る」「柚子香る」ぐらいにしてくれたら、人選です。
曼珠沙華しづか夕暮の碧血碑
立川猫丸
夏井いつき先生より
「第35回『彼岸花の小道』の〈碧血碑しづか曼殊沙華は真つ赤〉の推敲です。ハシ坊で、『真つ赤』が過剰とコメントを頂きました。直接的に色を押すのではなく、『夕暮』を選択してみました。『夕暮』がベターと判断しましたが、最近、『夕暮』『ゆつくり』『まつすぐ』など、使えばなんとなく詩情が出る便利な言葉に甘えがちな気がします。よく使ってしまいがちな言葉から、抜け出す工夫やコツがあればアドバイスいただきたいです」と作者のコメント。
原句からの推敲の方向は、佳いですね。「碧血碑」の類が「しづか」であること、「曼珠沙華」が「真つ赤」であることは言わずもがな。これを、逆転させることで、付かず離れずの程よき距離感が生まれます。あとは、「夕暮れ」の部分が四音なので、ここに「三音」の言葉が入ると完璧です。いつも言うことではありますが、俳句は常にケースバイケース。まずは、この句を完成させるための、言葉のパズルを解いてみましょう。
「第35回『彼岸花の小道』の〈碧血碑しづか曼殊沙華は真つ赤〉の推敲です。ハシ坊で、『真つ赤』が過剰とコメントを頂きました。直接的に色を押すのではなく、『夕暮』を選択してみました。『夕暮』がベターと判断しましたが、最近、『夕暮』『ゆつくり』『まつすぐ』など、使えばなんとなく詩情が出る便利な言葉に甘えがちな気がします。よく使ってしまいがちな言葉から、抜け出す工夫やコツがあればアドバイスいただきたいです」と作者のコメント。
原句からの推敲の方向は、佳いですね。「碧血碑」の類が「しづか」であること、「曼珠沙華」が「真つ赤」であることは言わずもがな。これを、逆転させることで、付かず離れずの程よき距離感が生まれます。あとは、「夕暮れ」の部分が四音なので、ここに「三音」の言葉が入ると完璧です。いつも言うことではありますが、俳句は常にケースバイケース。まずは、この句を完成させるための、言葉のパズルを解いてみましょう。
柚の花や母の目優し鍼治療
くえん酸子
夏井いつき先生より
「~や」の切字、「~優し」の終止形でそれぞれ切れるので、三段切れになっています。
「~や」の切字、「~優し」の終止形でそれぞれ切れるので、三段切れになっています。
全線を走るビー玉障子貼
うくちゃんま
夏井いつき先生より
「全線を走るビー玉」とは、どういう句意なのでしょう?
柚子実る家主搬送報を待つ
のりこ
夏井いつき先生より
「いつも我が家の柚子の木を育ててくれている、隣家のご主人が救急搬送されました。後日帰らぬ人となり、今年のジャムは、いつもよりほろ苦いと思います」と作者のコメント。
一句に入れる情報が多すぎます。句材を切り分けて、一句一句に仕上げてみましょう。
「いつも我が家の柚子の木を育ててくれている、隣家のご主人が救急搬送されました。後日帰らぬ人となり、今年のジャムは、いつもよりほろ苦いと思います」と作者のコメント。
一句に入れる情報が多すぎます。句材を切り分けて、一句一句に仕上げてみましょう。
瓶に入りお里に帰る無花果よ
ちぇりぴー
夏井いつき先生より
「親戚の家でなる無花果をたくさんもらいに行き、今度行くときにはジャムにして少しお返しすると、高齢のおばが喜んでくれます」と作者のコメント。
中七「お里に帰る」は少し曖昧。「お返し」だと分かるように書きたいです。語順から考え直してみましょう。
「親戚の家でなる無花果をたくさんもらいに行き、今度行くときにはジャムにして少しお返しすると、高齢のおばが喜んでくれます」と作者のコメント。
中七「お里に帰る」は少し曖昧。「お返し」だと分かるように書きたいです。語順から考え直してみましょう。
ジャム煮れば瓶のだんどり汀女の忌
紫すみれ
夏井いつき先生より
「ジャムを煮るのなら、保存する瓶のことまで手際よく進めなければなりません。数十年の主婦なら慣れたものです」と作者のコメント。
勿論、伝えたいことはよく分かります。ただ、季語の選択が気になります。台所俳句の汀女……という意図だとすれば、少し底が浅いかと。
「ジャムを煮るのなら、保存する瓶のことまで手際よく進めなければなりません。数十年の主婦なら慣れたものです」と作者のコメント。
勿論、伝えたいことはよく分かります。ただ、季語の選択が気になります。台所俳句の汀女……という意図だとすれば、少し底が浅いかと。