第48回「鍋一杯の柚子ジャム」《ハシ坊と学ぼう!⑩》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
鉄削り三時の休憩柚子搾る
カムヤ イワヒコ
夏井いつき先生より
「鉄工所では十時、三時に休憩をとることが多いです。三時の休憩は、一日の仕事が見え少しほっとする時間です。柚子ジュースに蜂蜜を入れて飲むと、パワーアップできます。」と作者のコメント。
語順を一考してみましょう。場合によったら、上五に「鉄削り」と入れるのではなく、下五を「鉄工所」と収めるのが得策かもしれません。
「鉄工所では十時、三時に休憩をとることが多いです。三時の休憩は、一日の仕事が見え少しほっとする時間です。柚子ジュースに蜂蜜を入れて飲むと、パワーアップできます。」と作者のコメント。
語順を一考してみましょう。場合によったら、上五に「鉄削り」と入れるのではなく、下五を「鉄工所」と収めるのが得策かもしれません。
玻璃の器の柚子の香柚子の枝たわわ
泉晶子
夏井いつき先生より
「目の前の出来上がったジャム、庭の柚子。二つの違う景を句にすることは、俳句の世界ではどうなのでしょうか?」と作者のコメント。
たった十七音の俳句ですが、「二つの違う景を句にすること」は、やろとすればやれます。ただ、この句の場合は、「玻璃の器の柚子の香」がジャムかどうかは分からないことと、後半いきなり外の光景に飛んでとまうことで、読者の脳は少し戸惑います。
「目の前の出来上がったジャム、庭の柚子。二つの違う景を句にすることは、俳句の世界ではどうなのでしょうか?」と作者のコメント。
たった十七音の俳句ですが、「二つの違う景を句にすること」は、やろとすればやれます。ただ、この句の場合は、「玻璃の器の柚子の香」がジャムかどうかは分からないことと、後半いきなり外の光景に飛んでとまうことで、読者の脳は少し戸惑います。
いちぢくのルノアールの蒼静か
ぐわ
夏井いつき先生より
内容がとてもよいので、五七五の調べに入れたいですね。
内容がとてもよいので、五七五の調べに入れたいですね。
レモン忌やハイボールのマーマレード
丸山歩
夏井いつき先生より
「智恵子忌はいつか句にしたいと思っていました。ハイボールにマーマレードは美味しいです。マーマレードを下五にしたく破調になりました 。『レモン忌』は季語になりますか?」と作者のコメント。
忌日の季語は、俳人たち皆で育てていくものですから、「レモン忌」の佳句が生まれるようになれば、次代の歳時記に載る可能性は高くなります。ただ、「レモン忌」と「マーマレード」の取り合わせは、ちょっと近すぎるか……。私ならば、という話になりますが、以下のような型を選択するかと思います。
〈マーマレード沈めて○○のハイボール〉
○の部分に入る季語を探すだろうな。「レモン忌」の志は、ゆっくりと達成していきましょう。
「智恵子忌はいつか句にしたいと思っていました。ハイボールにマーマレードは美味しいです。マーマレードを下五にしたく破調になりました 。『レモン忌』は季語になりますか?」と作者のコメント。
忌日の季語は、俳人たち皆で育てていくものですから、「レモン忌」の佳句が生まれるようになれば、次代の歳時記に載る可能性は高くなります。ただ、「レモン忌」と「マーマレード」の取り合わせは、ちょっと近すぎるか……。私ならば、という話になりますが、以下のような型を選択するかと思います。
〈マーマレード沈めて○○のハイボール〉
○の部分に入る季語を探すだろうな。「レモン忌」の志は、ゆっくりと達成していきましょう。
瓶の瓶開ける人いて処暑の朝
西城 典子
夏井いつき先生より
「瓶の瓶」を開ける……というのは、どういう状況でしょう。
「瓶の瓶」を開ける……というのは、どういう状況でしょう。
ジャムの香の妾の微笑誘蛾灯
夕佳莉
夏井いつき先生より
俳句は、季語とあと一つの要素があれば、十七音の器を満たすことができます。この句の場合でしたら、「妾の微笑」と「誘蛾灯」を取り合わせるだけで十分です。要素を盛り過ぎると、主役であるべき季語を食ってしまいます。
俳句は、季語とあと一つの要素があれば、十七音の器を満たすことができます。この句の場合でしたら、「妾の微笑」と「誘蛾灯」を取り合わせるだけで十分です。要素を盛り過ぎると、主役であるべき季語を食ってしまいます。
帰郷のたび買う酢橘や香り良し
かよいみち
夏井いつき先生より
中七は極力七音にするのが、定石です。語順を変えると、簡単に実現します。
添削例
香り良し帰郷のたびに買う酢橘
中七は極力七音にするのが、定石です。語順を変えると、簡単に実現します。
添削例
香り良し帰郷のたびに買う酢橘
安否確認の返事無きまま柚一本
成実
夏井いつき先生より
「柚一本」は、木になるので、季語としては認められにくくなります。木については、実と花が季語になるのです。例えば、「柚子一果」とでもすればOKではあります。あるいは、無季として立たせるか。
「柚一本」は、木になるので、季語としては認められにくくなります。木については、実と花が季語になるのです。例えば、「柚子一果」とでもすればOKではあります。あるいは、無季として立たせるか。
ミステリーのクライマックス柚子刻む
素々 なゆな
夏井いつき先生より
「無心に刻んでいる時に、脳裏に浮かぶものは、大抵緊迫した場面です」と作者のコメント。
なるほど、脳裏にある「ミステリーのクライマックス」なんですね。この語順だと、映画かドラマを観てる、あるいは小説を読んでいると思ってしまうので、下五「柚子刻む」が唐突な感じになります。語順も含めて、再考してみましょう。
「無心に刻んでいる時に、脳裏に浮かぶものは、大抵緊迫した場面です」と作者のコメント。
なるほど、脳裏にある「ミステリーのクライマックス」なんですね。この語順だと、映画かドラマを観てる、あるいは小説を読んでいると思ってしまうので、下五「柚子刻む」が唐突な感じになります。語順も含めて、再考してみましょう。
何事もなきゆふぐれや柚子ジャム煮える
ゆきまま
夏井いつき先生より
下五「柚子煮ゆる」ならば、人選。
下五「柚子煮ゆる」ならば、人選。
柚子の木を夫婦で揺すり身を落とす
嫌夏
夏井いつき先生より
「身」は入力ミスか、ここに意図があるのか。入力ミスで「実」ならば、並選。
「身」は入力ミスか、ここに意図があるのか。入力ミスで「実」ならば、並選。
鍋買ふて独りに酔ふて月の宴
如月頭花
夏井いつき先生より
「買ふ」が「て」に接続する時は、連用形になるので「買ひ」になります。「酔ふ」も同様です。
「買ふ」が「て」に接続する時は、連用形になるので「買ひ」になります。「酔ふ」も同様です。
両の手で子の掻くカレーキャンプ村
土取
夏井いつき先生より
「両の手で子の掻くカレー」というのは、どういう状況なのか……。
「両の手で子の掻くカレー」というのは、どういう状況なのか……。
やめてくれジャムの法則台風よ
啓太郎
夏井いつき先生より
「行方決まらない台風10号。これ以上各地で被害がでない事を祈ります。三段切れですが、この句では良いと思いました」と作者のコメント。
三段切れの問題よりも、「ジャムの法則」というのが、読み取り難いかと。たぶん、台風で果実が落ちてしまうのでジャムにする……という意味なのだろうと、最終的には解釈したのですが、少々乱暴な展開。
「行方決まらない台風10号。これ以上各地で被害がでない事を祈ります。三段切れですが、この句では良いと思いました」と作者のコメント。
三段切れの問題よりも、「ジャムの法則」というのが、読み取り難いかと。たぶん、台風で果実が落ちてしまうのでジャムにする……という意味なのだろうと、最終的には解釈したのですが、少々乱暴な展開。