第49回「ブルガリアの道路」《ハシ坊と学ぼう!①》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
ブルガリアに行った際、首都からリラ修道院に向かう途中、道路を闊歩している牛に遭遇しました。対向車線にいる車もクラクションを鳴らすこともなく、横切ってくれるのを静かに待っていた気がします。写真としては色気もありませんが、滅多に遭遇しない状況でしたので、投稿させていただきます。
大岡秋
季語なし
牛遮る道や神様旅路かな
絵夢衷子
季語はどれだろう? 「や」「かな」と切字がダブりました。どちらか一つを外しましょう。
季語なし
草原の放つ雄牛の腹ゆたか
岸来夢
季語はどれだろう?
季語なし
はぐれたる牛の瞳の青い空
トコトコ
季語なし
薔薇好きの墓誌に刻んだ薔薇数多
谷 ゆり乃
「墓誌に刻んだ薔薇数多」というフレーズは、詩語になっています。ただ、これは刻まれた薔薇ですし、上五「薔薇好き」も現実の薔薇を表しているわけではありません。上五、現実の薔薇があれば、問題はなくなるのですが。
季語なし
誰の牛ぞ道の真ん中光射す
鈴木そら
季語が欲しいですね。
季語なし
病む父に瓶持ち買ひし牛の乳
上村 風知草
季語がない? 俳句で、ストーリーを書くのは、なかなか難しいのです。ここに季語を入れるとなると更に。「病む父に買う牛乳瓶」とでも整えて、季語を取り合わせるぐらいならできそうですが。
季語なし
炭酸ガス出すもの吸うもの鉢合わせ
紗翁
「『出すもの』はウシのゲップや車の排気ガスで、『吸うもの』 は植物(光合成の原料として)です」と作者のコメント。
明確な季語は欲しいのですが……。ひとまず、最初の一句の作り方を、YouTube『夏井いつき俳句チャンネル』を観るか、『世界一わかりやすい俳句授業』(PHP研究所)を読むかして、情報を手に入れて下さい。
季語なし
かぐや姫迎えの使者は突然に
Aki
「かぐや姫は旧暦の8月15日に月へ帰ったと『竹取物語』で語られており、季語として扱えると考えました」と作者のコメント。
お気持ちは分かりますが、季語として扱うには無理があります。句材として「かぐや姫」を使うことは可能ですが、「迎えの使者は突然に」は物語をなぞった言葉。「月」という季語を使って、この場面を描写する練習をしてみましょう。
季語なし
ヨーグルト届けるために渋滞を
永順
「美味しいミルクを出す牛さんが渋滞の道路をのしのし……。あれ、季語がない?」と作者のコメント。
そうだね、季語がないね。「ヨーグルト届ける」までは、俳句のタネになりそうなフレーズです。残りの音数のどこかに季語を入れる工夫をしてみましょう。俳句は言葉のパズルですよ。
季語なし
そこのけと時代の放牧なみにのり
永順
「自然いっぱいに放牧されたいのに、都会の荒波にさらされてしまった牛さんを詠みました。季語がないか……」と作者のコメント。
そうだね、季語がないね。上五か下五、どちらかを外して、そこに季語を取り合わせてみましょう。これが基本の作り方です。
季語なし
交差点杖の老婆がゆうゆうと
ビバリベルテ
季語なし
急ぐのはこちらと牛の独りごつ
ビバリベルテ
二句ともに、明確な季語がありません。取り合わせの季語の使い方から、練習してみましょう。まずは、「杖の老婆のゆうゆうと」の上五に、五音の季語を取り合わせてみましょう。
季語なし
「ブレーメンどっち?」「え?牛さんも行くの?」
芳野
「これは俳句とは言えないでしょうねぇ」と作者のコメント。
会話形式の句もあります。例えば……
〈初蝶来何色と問ふ黄と答ふ 高浜虚子〉
が、ご投句のものには、そもそも季語もありませんね。
季重なり
金風や蜘蛛の糸果つドアミラー
帝菜
「金風」「蜘蛛の糸」どちらも季語ですね。
季重なり
牛の背の湯気の寒さや雪催
じゅあ
「寒さ」「雪催」どちらも季語ですね。
季重なり
耕牛の反芻や百目柿落つ
桜上比呂
「耕牛」も季語になります。
季重なり
指先の凍える朝の霜柱
天音
「凍える」「霜柱」どちらも季語です。