写真de俳句の結果発表

第49回「ブルガリアの道路」《ハシ坊と学ぼう!③》

ハシ坊

第49回のお題「ブルガリアの道路」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

 

雪降れば気も紛れるのに冬木立

三毛猫モカ

夏井いつき先生より
「季重なりに挑戦しました。『冬木立』のほうに重みを出せたと思うのですが、どうでしょうか? ふと、独りであることに気づいた瞬間を『冬木立』に託しました」と作者のコメント。

意図は分かりますが、中七「気も紛れるのに」が散文です。この中七は、読者の感想としてキープしておいてあげるべき部分。描写に徹しましょう。
“参った”

ヘビ走る自転車飛ばすカエル逃げ

りっこう

夏井いつき先生より
季語としての「ヘビ」や「カエル」は、特別な意図がない限りは、漢字で書くのが定石です。
“ポイント”

木枯らしに明治ブルガリアヨーグルト

砂糖香

夏井いつき先生より
「『ブルガリアの道路』というお題なのに、道路の真ん中の牛さんを見たら、もう、頭の中は明治ブルガリアヨーグルト(できれば『明治ブルガリアヨーグルト』と歌ってほしい)でいっぱいになってしまいました。固有名詞を俳句に使うのは御法度だから、ハシ坊にすらならないのは残念ですが、当方、並評価を頂くより、いつき先生のコメントがいただけるハシ坊のほうがうれしいです」と作者のコメント。

「固有名詞を俳句に使うのは御法度」という考え方は間違っています。固有名詞の句は山ほどあります。……いや、ひょっとすると「商品名を使うのは御法度」という意味なのかな? だとしても、例えば、
〈春の坂丸大ハムが泣いている 坪内稔典〉
〈エイプリルフールを熱さまシートかな 加根兼光〉
などもあります。
この句に関しては、「木枯しに」歌っているかのような感じもあって、好き嫌いでいうと好きです。人選に推してもよいと思っていますが、理解してくれない俳句の先生もおられるとは思います(笑)。
“参った”

山疲るガードレールに傷・傷・傷

佐藤志祐

夏井いつき先生より
「山疲る」が季語? 「ガードレールに傷・傷・傷」というフレーズを生かそうとすれば、「~疲る」と「傷」が、近くなるのではないかと考えます。
“参った”

季語なし

道の辺を歩くばかりはもう止めた

夢々

季語なし

道の先に幸は無し動くな牛

夢々

夏井いつき先生より
二句ともに、季語を入れる工夫からやってみましょう。
“ポイント”

車止めカルガモの子ら親の後

さかたちえこ

夏井いつき先生より   評価    並 
「カルガモの子を、『かるのこ』と読む歳時記の漢字にすることが出来ませんでした。こういう場合はどうすればいいのでしょうか?」と作者のコメント。

「軽鳬の子」ですね。「軽」と「鳬」を、一字ずつ変換することもできますよ。
〈車止め軽鳬の子ら親の後〉←並選です。
“ポイント”

秋晴れや牛の群れを待つ渋滞

陽光樹

夏井いつき先生より   評価    並 
この句としては並選。中七下五を足して十二音ではありますが、この内容でしたら、五七五の定型に十分入るかと。再考してみましょう。
“ポイント”

道ふさぐ牛と目が合う秋の昼

桜貝

夏井いつき先生より   評価    並 
この段階では並選ですが、下五に映像のある季語をもってくると、更によくなります。
“ポイント”

若き日の孝も囃子手花田植

理恵にゃん

夏井いつき先生より   評価    並 
「亡くなった父を『孝』と書くと、知りました」と作者のコメント。

確かにそうなのですが、俳句として望ましいのは、普通に「父」と書いて、その父は亡くなっているのかも……と読者に感じさせられるように表現することを推奨します。この句自体は、並選です。
“ポイント”

秋の暮ロシア映画のノスタルジア

清水ぽっぽ

夏井いつき先生より   評価    並 
下五を「ノスタルジア」とイメージでおさめないで、「ロシア映画」にででくる具体的な光景とかモノとかを、映像として下五に入れると、人選がみえてきます。このままでは、並選。
“ポイント”

冬近し牛も車も帰途急ぐ

パキラ

夏井いつき先生より   評価    並 
「ブルガリアとあると、ブルガリアに関した事柄を入れたほうがいいのですか?」と作者のコメント。

兼題写真はテーマであり、発想の元になるもの。この写真から、自分の体験を引き出すことを第一義に考えて下さい。この句そのものは、並選です。どうやれば、ワンランクアップできるのか。そのヒントは、毎回発表されていく《ハシ坊と学ぼう!》コメントにあります。精読して、ご自分の俳句の筋トレに活用して下さい。
“ポイント”

秋晴や走る馬体の艶光る

深山ほぼ犬

夏井いつき先生より
「『艶光る』という表現は重複感があるでしょうか? 光らない艶もあるかと思ったのですが……」と作者のコメント。

「艶」というものを丁寧に感じ取っていることに、共感します。ただ、「光らない艶」の場合はそのニュアンスを描写する必要がありますが、「光る艶」の方は誰もが想定するものですから、敢えて「光る」と書く必要はないでしょう。この句の場合でしたら、「馬体」の「艶」を描写するのがベストか。例えば、下五は「銀の艶」「黒き艶」とすれば、馬の色合いが分かりますし、「猛き艶」とすれば、馬の体調が想像できるという具合です。
“参った”

牛尾よりふわり生まるるあぶれ蚊よ

令子

夏井いつき先生より
「どっしりとした牛のお尻と、歳時記で『あぶれ蚊』を見つけ、対比させて詠みました」と作者のコメント。

「牛尾より」とするよりは、作者コメントにある「牛の尻」との映像の取り合わせにするほうが、良いかと。一句に生き物を二つ入れるのは、バランスが難しいので、その点も考慮してみて下さい。
“ポイント”

鐘氷る戻らぬ牛を押す少女

苔間きい

夏井いつき先生より
「初投句です。よろしくお願いいたします。お題の写真を見て、幼い頃に見た西洋版おしんの『牧場の少女カトリ』を思い出しました。出稼ぎの少女が、放牧した牛を戻すシーンです」と作者のコメント。

初投句、ようこそ! 一緒に楽しんでまいりましょう。
さて、この句。以下の点について考えてみて下さい。
①季語は、これがベストかどうか。
②「押す」という動詞がベストかどうか。
“参った”