写真de俳句の結果発表

第49回「ブルガリアの道路」《ハシ坊と学ぼう!⑦》

ハシ坊

第49回のお題「ブルガリアの道路」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

 

ちょっと待てまずは鯛焼食うてから

レディ咲瑠恋

夏井いつき先生より
中七下五の「まずは鯛焼食うてから」を良しとした時、「ちょって待て」は不要です。上五で、色々やれるケース。楽しんで下さい。
“参った”

子規忌なり牛ステーキに食らいつく

春海 凌

夏井いつき先生より
「無性にステーキが食べたくなる時が定期的にあり、食欲旺盛で知られる子規の忌日季語と会わせてみました。ただ、『ステーキ』だけで通じるところを、音数調整のためだけに『牛ステーキ』としたのが悔やまれます。二音あればいろんなことができるはずなのに……」と作者のコメント。

気持は分かります。取り合わせの発想はよいですね。中七下五は、さらにブラッシュアップできそう。「肉に食らいつく」として、肉のさまを描写する手もあります。
“ポイント”

助手席を見れば無人や落花生

牧野冴

夏井いつき先生より
季語はこれがベストなのか? 助手席に「落花生」が置いてあったの? 
“参った”

ソフィアロゼを一人たしなむ十三夜

和み

夏井いつき先生より
「ソフィアロゼを一人」とあれば、「たしなむ」はなくても想像してもらえます。最後のブラッシュアップ、頑張ってみて下さい。
“参った”

冬蝿をはたき落として牛のお産

十月小萩

夏井いつき先生より
句材はよいです。十七音に入るように再考してみましょう。
“ポイント”

轢牛の山の眠りの妨げず

龍酪

夏井いつき先生より
「故郷には、『牛屋』という荷引きや農作業などの仕事のために貸し出す牛を飼う古家がございますが、どうも兼題写真を見ると、山の眠りを邪魔する自動車を阻止しに出てきたようです」と作者のコメント。

「轢牛」の「轢」は、「引」の入力ミスでしょうか? 最初は、轢かれた牛かと思ったんですが……。
“ポイント”

蝶を追い牧場を出たか迷い牛

草野ふうこ

夏井いつき先生より
「『出でしか』とすると、旧仮名遣いということになるのでしょうか?」と作者のコメント。

旧仮名遣いではなく、文語です。仮名遣いと文体を、ごちゃごちゃに考えている人は多いのです。YouTube『夏井いつき俳句チャンネル』の【文体と表記】のシリーズを参照して下さい。
“ポイント”

牧場の牛の鼻先に犬秋気澄む

植木彩由

夏井いつき先生より
「愛犬が逝き、暫く俳句を詠むことができませんでしたが、兼題写真を見ていたら、牧場に連れて行ったときに、牛に驚いていたことを思い出しました。完成形には無いと思いながらも、この句を残しておきたい気持ちです。愛犬が逝ってまもなく、俳句ポストで秀作に選んでいただいたことを知りました。俳句は続けなさいと言っているようにも感じています。ありがとうございました」と作者のコメント。

そういう思いでしたら、語順を逆にするとよいですよ。愛犬の追悼句としても。

添削例
愛犬の鼻先に牛秋澄めり
“ポイント”

母牛の寝転んで聴く踊唄

小花風美子

夏井いつき先生より 
「母牛」と「踊唄」の取り合わせはよいですね。中七を再考してみましょう。母牛が横たわっている姿まではよいのですが、「聴く」と書く必要はありません。「踊唄」とあれば、遠くから聞こえてくるのだなと分かりますから。
“ポイント”

薔薇全開大輪崩れへなっとなり

ヨシキ浜

夏井いつき先生より
「~大輪崩れ」とあれば、「へな」となっていることは分かります。下五、再考しましょう。
“ポイント”

子等の汲む水カウントの凍つる石

弥音

夏井いつき先生より 
中七「カウント」をどう読み解けばよいのか、苦慮しています。石の数を数えている?
“ポイント”

残る蚊やトラック拒む牛の鼻息

花和音

夏井いつき先生より 
一句に生き物を二つ入れるのは、なかなか難しいのです。この句の場合でしたら、中七下五の「牛」のほうが印象強いですね。季語を再考してみましょう。
“ポイント”

片田舎牛の一啼き秋深し

德(のり)

夏井いつき先生より
「牛の一啼き」と「秋深し」の取り合わせはよいですね。上五「片田舎」は必要でしょうか。再考してみて下さい。
“参った”

窓ガラスの淵蝿たどり渋滞

六月風マンダリン

夏井いつき先生より
ひょっとして、車の窓ガラス? このままの語順だと、「蝿」が渋滞してる? と誤読されるかもしれません。「淵」の一字は、比喩?
“ポイント”

CM中無造作に買う氷菓子

まこく

夏井いつき先生より
「《ハシ坊と学ぼう!》の皆様の俳句と、夏井先生の真摯な添削をいつも楽しみにしている者です。第46回『深夜のドライブイン』並③の〈DJはCM選ばず氷菓買う〉を推敲しました。カーラジオのDJのトークが気になり、CMになったら急いで売店に行き、適当なアイスを買って車に戻った時のことです。何をしているのか、分かりやすくなったとは思いますが、『無造作に』は説明っぽいでしょうか?」と作者のコメント。

なるほど、カーラジオなんですね。その状況が入ればベストなのですが。そういう意味では、「無造作に」を諦めて、カーラジオだと分かる工夫が入ると、人選が目の前ですね。
“参った”