第49回「ブルガリアの道路」《ハシ坊と学ぼう!⑥》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
秋湿り薄墨色の香を纏い
あゆママ
夏井いつき先生より
「薄墨色の香」という措辞には詩があります。ただ、「香を」に対して「纏い」という動詞をもってくるのは、有りがちなやり方。ここは要一考です。
「薄墨色の香」という措辞には詩があります。ただ、「香を」に対して「纏い」という動詞をもってくるのは、有りがちなやり方。ここは要一考です。
牛阻む車の列や紅葉狩り
竹葉子
夏井いつき先生より
「紅葉狩りの連なる車を阻む牛、逆に牛の行手を阻む車の列ともとれる光景を、想像して詠みました」と作者のコメント。
この句の場合でしたら、牛が阻んでいるのか、車が阻んでいるのか、明確にするべきです。
この句の場合でしたら、牛が阻んでいるのか、車が阻んでいるのか、明確にするべきです。
極楽の錠前触れて秋の蕎麦
音羽ナイル
夏井いつき先生より
「兼題写真は牛の通せんぼですね。善光寺参りのお戒壇めぐりで錠前に触れた後、蕎麦アレルギーの家族と別行動し、私一人長野県の蕎麦を食べて美味しかったという思い出です」と作者のコメント。
なるほど、「善光寺参りのお戒壇めぐりで錠前に触れた」のですか。俳句として読むと、「極楽の錠前」が実際の錠前ではなく、極楽に入る扉に錠前がある? と誤読される可能性が高いでしょう。再考してみましょう。
なるほど、「善光寺参りのお戒壇めぐりで錠前に触れた」のですか。俳句として読むと、「極楽の錠前」が実際の錠前ではなく、極楽に入る扉に錠前がある? と誤読される可能性が高いでしょう。再考してみましょう。
軽トラに考妣の姿田水引く
ビオラ
夏井いつき先生より
「考妣」は、それぞれ亡くなった父、母を意味する漢字です。便利に使い勝ちですが、俳句としては、普通に「父母」と書くことを推奨します。その上で、読者に「この父母は亡くなっているのだろうな」と読ませてこその、俳句だと考えます。
冬ざれやぬばたまの瞳の安らけき
ゆきまま
夏井いつき先生より
「『瞳(め)』と読むのは、だめでしょうか。牛の目って白目もあるのですけど、普通に見ると真っ黒でつややかで、美しいです」と作者のコメント。
基本的には、「め」としたいのならば「目」。「瞳」という字を使いたいのならば、「ひとみ」の三音がきれいに入るように工夫することを推奨します。とはいえ、俳句は全てがケースバイケースですが、少なくともこの句の内容ならば、工夫の余地は十分あります。
基本的には、「め」としたいのならば「目」。「瞳」という字を使いたいのならば、「ひとみ」の三音がきれいに入るように工夫することを推奨します。とはいえ、俳句は全てがケースバイケースですが、少なくともこの句の内容ならば、工夫の余地は十分あります。
小柿落ち牛一声に売られ行く
オニチョロ
夏井いつき先生より
上五に切れを入れると、いいですね。例えば、「小柿落つ」と終止形にするとか、「柿落つや」「熟柿や」と切字を入れるとか。
亀鳴くやカフェの陸亀逃げる夜
こりえのかた
夏井いつき先生より
面白い素材ですが、季語「亀鳴く」はちょっとつき過ぎ。季語を再考してみましょう。
面白い素材ですが、季語「亀鳴く」はちょっとつき過ぎ。季語を再考してみましょう。
ゲルに満つバター茶の香や雪催
春花みよし
夏井いつき先生より
「~満つ」が終止形、「~や」の切字、下五が名詞止。典型的な三段切れです。上五字余りになりますが、「ゲルに満つる」と連体形にすれば、人選です。
「~満つ」が終止形、「~や」の切字、下五が名詞止。典型的な三段切れです。上五字余りになりますが、「ゲルに満つる」と連体形にすれば、人選です。
ジープの音逃げる小鳥やリラの塔
輝虎
夏井いつき先生より
字余りにはなりますが、この場合は上五を「ジープの音に」とすべきです。これならば、人選。
字余りにはなりますが、この場合は上五を「ジープの音に」とすべきです。これならば、人選。
寒卵踏み分けたりぬ牛歩かな
全速
夏井いつき先生より
「寒卵」を踏み分ける? 中七「~たりぬ」は終止形? 句意のとりにくい一句です。
「寒卵」を踏み分ける? 中七「~たりぬ」は終止形? 句意のとりにくい一句です。
朝摘みや積荷香るよばらの谷
水間澱凡
夏井いつき先生より
「~や」の切字、「~よ」の詠嘆、さらに「~谷」の名詞止で、三段切れになります。「や」か「よ」を外して、一か所繋げて下さい。そうすれば、すぐに人選です。
「~や」の切字、「~よ」の詠嘆、さらに「~谷」の名詞止で、三段切れになります。「や」か「よ」を外して、一か所繋げて下さい。そうすれば、すぐに人選です。
龍淵に潜む水牛海渡る
美月 舞桜
夏井いつき先生より
季語は、動くなあ。カッコいい季語なのですが、「水牛海渡る」とは、お互いに殺し合いそうです。
季語は、動くなあ。カッコいい季語なのですが、「水牛海渡る」とは、お互いに殺し合いそうです。
にらめっこ瞳に映る秋の空
出羽泉まっくす
夏井いつき先生より
「愛犬(小型犬のトイプードル)と牧場に行ったとき、初めて見る牛にびっくりした様子。柵ごしに牛とにらめっこ。『なにこのすんごく大きいもの?』って見開かれた目に、秋の青空が映っていました」と作者のコメント。
「瞳に」とあれば「映る」は不要です。愛犬なのでしたら、その情報を入れたいですね。
「愛犬(小型犬のトイプードル)と牧場に行ったとき、初めて見る牛にびっくりした様子。柵ごしに牛とにらめっこ。『なにこのすんごく大きいもの?』って見開かれた目に、秋の青空が映っていました」と作者のコメント。
「瞳に」とあれば「映る」は不要です。愛犬なのでしたら、その情報を入れたいですね。
フェスティバル朝焼け色の薔薇を摘む
ルージュ
夏井いつき先生より
中七下五「朝焼け色の薔薇を摘む」は綺麗な表現ですね。上五は、「フェスティバル」のために? という意味でしょうか。そこを再考すれば、人選になりそう。
中七下五「朝焼け色の薔薇を摘む」は綺麗な表現ですね。上五は、「フェスティバル」のために? という意味でしょうか。そこを再考すれば、人選になりそう。