写真de俳句の結果発表

第49回「ブルガリアの道路」《ハシ坊と学ぼう!⑧》

ハシ坊

第49回のお題「ブルガリアの道路」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

せこまつとうしにかきおくしうしさい

舟端玉

夏井いつき先生より
「〈背子待つと牛に書き置く秋思祭〉若いひとが『昭和二桁のおばさんが作る俳句』とかって言うのだろうなあと思ったので、いっそ仮名仕立てにしました。逆効果でしょうか?」と作者のコメント。

全くの逆効果です。お互いに、昭和二桁のおばさんとして、胸を張って、それらしい句を書いていきましょう。
“参った”

高速の給茶機の白湯雪時雨

舟端玉

夏井いつき先生より
「高速道路のサービスエリアを思いました」と作者のコメント。

「高速の」が、凄いスピードで給茶する? と誤読される可能性があります。上五を一考して下さい。
“参った”

渓谷にタンデム駆ける風の秋

なおちゃん

夏井いつき先生より 
「『タンデム』はバイクの二人乗りです」と作者のコメント。

「駆け」ているのであれば、「渓谷を」ですし、止まっているのであれば「渓谷に」もあり得ます。
“ポイント”

宮線を添ふる仔牛の歩みかな

くるぽー

夏井いつき先生より 
「日が長くなっていくことと、仔牛の成長を取り合わせてみました。恋心を詠みたかったですが、ピンとこなくて断念しました……」と作者のコメント。

「宮線を添ふ」こういう季語を使ってみたい、挑戦してみたいという気持ちはあってよいのですが、この句の内容にとって、この季語がベストなのかどうか。そこを再考してみましょう。
“ポイント”

こすもすや山なぞりたるゆれる影

雪客

夏井いつき先生より  
『コスモスと浅間山』《ハシ坊と学ぼう!⑮》〈こすもすの揺れたる花弁山なぞり〉で、『花弁』とまで書かなくてもよいという指摘から、推敲しました」と作者のコメント。

なるほど、コスモスの影が山をなぞっているように見えた、ということですか。ならば、「コスモスの影」としたほうが分かりやすいです。「山なぞり」が分かり難いかなあ……遠近感がとらえにくくて。
“ポイント”

月光や集らるる生だつたもの

だいやま

夏井いつき先生より
書こうとしている内容はよいです。中七下五の描写の精度をあげたいです。
“ポイント”

山装ふガードレールに沿ふて牛

おかだ卯月

夏井いつき先生より
「沿ふ」が、助詞「て」に接続すると、「添ひて」となります。音便を発生させるケースもありますが。
“ポイント”

羊飼い瞳に映る秋の空

むねあかどり

夏井いつき先生より
「瞳に」とあれば「映る」は不要です。
“ポイント”

野良牛と蛾の居ない所ニューデリー

千里

夏井いつき先生より
第22回に〈野良牛の居ないところはニューデリー〉を投稿し、並でした。推敲して投稿します。ヒンズー教の神様の使いである牛を、どうコントロールするのか大きな謎です。中七の末尾『所(とこ)』と発音してください」と作者のコメント。

俳句として考えた時、この場合は「ニューデリー」にこだわらないほうが得策かと。例えば、「野良牛と蛾のをらぬ国」「野良牛と蛾のをらぬ街」とでもすれば、言いたいことがすっきりした上で、更に五音分余ります。着地を工夫してみましょう。
“参った”

牛の歩は車列従へ日永かな

志無尽おたか

夏井いつき先生より
逆の言い方のほうが、リアリティがあります。

添削例
牛の歩に車列したがふ日永かな
“ポイント”

新しき車線の白よ美し秋よ

音羽実朱夏

夏井いつき先生より
「兼題写真を見て、最近工事した車線を思い出しました。車線の白が浮き出てきれいで、紅葉もよりきれいに見えました」と作者のコメント。

「美し」が「秋」にかかるのであれば、「美しき」と連体形になります。
“参った”

はぐれ牛草原恋し夏の日の冒険

茶雨

夏井いつき先生より
音数を調整してみましょう。自立語に、優先順位をつけることで、最も不要な言葉を見つけることができます。
“参った”

鈴鹿哭く名阪国道落下物

杜若友哉

夏井いつき先生より
「句意としては、ロードキルで死んだ鹿が落下物と称されることに無情さを感じた句ですが、ちゃんとできている気がしません。ただ『鈴鹿』という雌鹿の別名があることを知って、作ってみた句です。ネットで調べても鈴鹿の由来がはっきりわからず、鈴鹿川の由来の伝説などが絡んでるのかと思い、近くを走る名阪国道での出来事でなら有り? なのか悩みました。ハシ坊コーナーで、この季語の鈴鹿の由来など教えてもらいたいという期待で出しました」と作者のコメント。

季語の由来については、私も知りませんが、「すずか」は雌鹿を意味します。この「名阪国道落下物」=「ロードキルで死んだ鹿が落下物と称される」ということが分かるかどうか。そこが問題です。
“参った”

「2km先落下物アリ」哭く雌鹿

杜若友哉

夏井いつき先生より
「鹿など大型の動物の死体が道路上にある場合、電光掲示板には『落下物』と注意喚起されるのが無情であるなと感じ、できた句です」と作者のコメント。

この句も、この「落下物」=鹿の死体と解するのは、無理があります。今鳴いている鹿の声が、季語となっているわけですし。
“参った”

賢治忌の牛が過ぐのを待ってをり

宮康平

夏井いつき先生より
中七微調整必要です。→「牛の過ぐるを」
下五仮名遣いの間違い。→「待つてをり」
全体のバランスを考えると、「待ちてをり」のほうがよいかも。こうなれば、人選です。
“参った”

秋夕焼け羅馬へつづく石の道

あおみどり

夏井いつき先生より
「ブルガリアは未知なので、ネットやYouTubeで見た遺跡の道路を詠みました。全ての道はローマに繋がると言いますから。季語は迷いましたが……時間切れです」と作者のコメント。

発想としては悪くないのですが、「羅馬へつづく○○の道」というフレーズは、結構目にします。「NHK俳句」十二月の第五週オンエアは、この手の発想を成功させるためのヒントをやりますので、是非参考にして下さい。
“参った”