第49回「ブルガリアの道路」《ハシ坊と学ぼう!⑩》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
猫探すポスター貼られたまま秋来
にゃんちゅう
夏井いつき先生より
「夏の初めから、ご近所に猫を探すポスターが貼られていて、秋めいてきた今も貼られていて、胸の中がざわついたままです」と作者のコメント。
中八から下五にかけて、音数も含めて、描写を一工夫してみましょう。人選は目の前です。
「夏の初めから、ご近所に猫を探すポスターが貼られていて、秋めいてきた今も貼られていて、胸の中がざわついたままです」と作者のコメント。
中八から下五にかけて、音数も含めて、描写を一工夫してみましょう。人選は目の前です。
迷ひ牛道に佇む冬の山
みなごん
夏井いつき先生より
「道」と「冬の山」、地理的情報が二つ入ったのは、少し損です。季語も含めて、一考してみましょう。
牛の群れ牽く牧童を導く蝶
小鉢
夏井いつき先生より
「牽く」を良しとした時、「~を導く」が説明的です。「導く」という動詞は外したほうが、よいケースでしょう。
夕焼や闘牛に引かれ子らの影
ぼたん
夏井いつき先生より
「兼題写真を見て、徳之島に行った時、子供たちが闘牛の世話をしていることを思い出しました。闘牛を鍛えるために牛を歩かせます。はじめは牛を引いていますが、子供なのでいつしか牛に引かれている様子です。夕焼の影絵としてほっこりしました」と作者のコメント。
佳き句材です。ただ、中七が八音になっているのが、とても勿体ない。「夕焼」という季語を信じるならば、「~の影」が不要かもしれません。推敲してみて下さい。すぐに、人選になりそうです。
「兼題写真を見て、徳之島に行った時、子供たちが闘牛の世話をしていることを思い出しました。闘牛を鍛えるために牛を歩かせます。はじめは牛を引いていますが、子供なのでいつしか牛に引かれている様子です。夕焼の影絵としてほっこりしました」と作者のコメント。
佳き句材です。ただ、中七が八音になっているのが、とても勿体ない。「夕焼」という季語を信じるならば、「~の影」が不要かもしれません。推敲してみて下さい。すぐに、人選になりそうです。
曼珠沙華結界に立つ黒毛牛
兎波
夏井いつき先生より
「能登在住で、今年(2024年)の震災、水害と二重の大災害に遭い、真にサバイバルゲームに参加させられているような日々で、今年ほど死と向かい合った日々はありません。何を見ても暗いイメージが湧いてしまいます」と作者のコメント。
「曼珠沙華」と「黒毛牛」の取り合わせはよいです。中七「結界に立つ」は、俳句では案外よくでてくるフレーズ。イメージになっていることが多いので、ここも映像として描くことをおススメします。
「曼珠沙華」と「黒毛牛」の取り合わせはよいです。中七「結界に立つ」は、俳句では案外よくでてくるフレーズ。イメージになっていることが多いので、ここも映像として描くことをおススメします。
ヘルパー来されど施錠のドア西日
てんむす
夏井いつき先生より
「第46回『深夜のドライブイン』の〈利用者がドタキャン介護士へ西日〉の推敲句です。ドタキャンという言葉よりも具体的な映像が必要と思い、『施錠のドア』としました。最初は〈ヘルパー来施錠のドアと大西日〉とかも考えましたが、ドタキャンというニュアンスが薄いので『されど』という逆接の接続詞を使い、施錠のドアを強調しました。しかし説明的な感じもします」と作者のコメント。
良い方向に推敲が進んでいます。おっしゃるように、「されど」は説明的ですね。「されど」を外して、音数調整をすれば、いけそうです。
良い方向に推敲が進んでいます。おっしゃるように、「されど」は説明的ですね。「されど」を外して、音数調整をすれば、いけそうです。
バス停の貰ふ牛舎の秋灯
うくちゃんま
夏井いつき先生より
「~の貰ふ」とは、牛舎の秋灯がバス停のところまで及んでいて、その灯りを借りている、という感じでしょうか。ここの部分の表現を、あまりヒネらずに、率直に描写すると、とても良い句になります。
「~の貰ふ」とは、牛舎の秋灯がバス停のところまで及んでいて、その灯りを借りている、という感じでしょうか。ここの部分の表現を、あまりヒネらずに、率直に描写すると、とても良い句になります。
牛一頭白日の秋思かな
かたばみ
夏井いつき先生より
「牛と人、自ら歩む道を主張して譲らない。秋の愁いなんでしょうか」と作者のコメント。
六五五の調べになっていますね。この内容でしたら、中七を七音に調整すると、すぐに人選です。
「牛と人、自ら歩む道を主張して譲らない。秋の愁いなんでしょうか」と作者のコメント。
六五五の調べになっていますね。この内容でしたら、中七を七音に調整すると、すぐに人選です。
ブルガリア牛の検問秋日和
かたばみ
夏井いつき先生より
「表面的にはのどかな印象があります。地政学的リスクが潜んでいるものと思われ『検問』という固い言葉を使いました。『とおりゃんせ』のほうがよかったかも?」と作者のコメント。
「牛の検問」という言葉には、興味を持ちました。「とうりゃんせ」よりは、ずっと良い! が、「ブルガリア」で意味が一度切れる? 「ブルガリア牛」という品種? そこらへんが疑問です。
「表面的にはのどかな印象があります。地政学的リスクが潜んでいるものと思われ『検問』という固い言葉を使いました。『とおりゃんせ』のほうがよかったかも?」と作者のコメント。
「牛の検問」という言葉には、興味を持ちました。「とうりゃんせ」よりは、ずっと良い! が、「ブルガリア」で意味が一度切れる? 「ブルガリア牛」という品種? そこらへんが疑問です。
農道のミノタウロスや大夕焼
たきるか
夏井いつき先生より
「兼題が難しかったので、発想をとばそうとしました。 ブルガリア→古代トラキア→バッカス信仰→妻アリアドネ→ミノタウロス……これだ!! と詠んでみたのですが、よく考えたら牛とミノタウロスってまんまです。飛んだつもりで5センチ先に着地とは、このことですね」と作者のコメント。
「ミノタウロス」と「大夕焼」の取り合わせはよいと思います。「飛んだつもりで5センチ先に着地」になったのは、上五「農道の」の部分。ここを一考してみると、さらに化けます。
「兼題が難しかったので、発想をとばそうとしました。 ブルガリア→古代トラキア→バッカス信仰→妻アリアドネ→ミノタウロス……これだ!! と詠んでみたのですが、よく考えたら牛とミノタウロスってまんまです。飛んだつもりで5センチ先に着地とは、このことですね」と作者のコメント。
「ミノタウロス」と「大夕焼」の取り合わせはよいと思います。「飛んだつもりで5センチ先に着地」になったのは、上五「農道の」の部分。ここを一考してみると、さらに化けます。
搾乳の時間になるや秋の暮
サリー
夏井いつき先生より
「搾乳の時間」と「秋の暮」があれば、「~になるや」は不要ですね。
「搾乳の時間」と「秋の暮」があれば、「~になるや」は不要ですね。
処暑の道ニースの丘で邂逅す
鱈 瑞々
夏井いつき先生より
「道」と「丘」、地理的情報が重なっているのが惜しいです。更に、「ニースの丘に」とすれば、散文臭が減ります。人選は目の前ですよ。
山越えの赤ちゃんポスト冬昴
玄子
夏井いつき先生より
「赤ちゃんポスト」と「冬昴」の取り合わせがよいです。「山越えの」というのは、山を越えてそこへ辿り着く? 赤ちゃんポスト自体が、山を越える? 微妙に分かり難かったです。
天高しイエローストーンの雄吼えて
ほーさく
夏井いつき先生より
中七の調べがもたつくのが、とても惜しいです。どうしても字余りになるのであれば、上五で処理するのが、定石です。
仕切られし病間四つの月の入る
宙朔
夏井いつき先生より
「カーテンで仕切られた四つの“個室”。タワマンのような病棟の空には明るい月が。それぞれの室の主にかかる月の光は一様ならず、静かに彼らを覗いています」と作者のコメント。
書こうとしている内容は良いと思います。気になったのは、後半「病間四つの」の「の」という助詞です。そこから「月の入る」と繋がりますので、ここらを一考して下さい。
書こうとしている内容は良いと思います。気になったのは、後半「病間四つの」の「の」という助詞です。そこから「月の入る」と繋がりますので、ここらを一考して下さい。
赤牛の閑かな瞳秋あかね
孤寂
夏井いつき先生より
一句に、生き物が二つ出てくるとお互いを殺してしまいがちです。この句の場合は、「牛」の映像のほうが丁寧に描かれているので、季語「秋あかね」は添え物になってしまってます。季語を一考してみましょう。
黒海の戦の臭い小望月
出雲のたみちゃん
夏井いつき先生より
大掴みな表現ですが、「黒海の戦の臭い」は詩語になっています。となると、季語「小望月」がベストかどうか。あとは、その一点ですね。
大掴みな表現ですが、「黒海の戦の臭い」は詩語になっています。となると、季語「小望月」がベストかどうか。あとは、その一点ですね。
牛はデコトラに夏果のラヂオよ
創次朗
夏井いつき先生より
前半「牛はデコトラに」の句意を、読み解けないでいます。牛がデコトラになった? 牛はデコトラに積まれる……?
前半「牛はデコトラに」の句意を、読み解けないでいます。牛がデコトラになった? 牛はデコトラに積まれる……?