写真de俳句の結果発表

第50回「雪の赤れんが庁舎」《ハシ坊と学ぼう!④》

ハシ坊 NEW

第50回「雪の赤れんが庁舎」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

 

電飾の乱数めいて聖樹なり

草深みずほ

夏井いつき先生より
「不規則な点滅が乱数のように感じられ、『めいて』と表してみました。『かな』と『なり』で迷いましたが、詠嘆よりその事実を表したいと思い、断定の『なり』を選びました」と作者のコメント。

比喩の発想は面白いですね。中七「~めいて」がやや散文的。ここをどう解決するかによって、「なり」「かな」あるいは「大聖樹」のように体言止め等、着地の判断も変わってきます。
“参った”

壟断や餓虎の呻きは雪と消ゆ

岡根喬平

夏井いつき先生より
「高く切り立った丘にいる、飢えた虎の呻き声が雪と一緒に消えていく光景を詠みました。『壟断』は利益を独り占めにするという意味もあるため、独占資本主義への抗議の声が届かないという暗喩のように把握して頂いても嬉しいです」と作者のコメント。

俳句はたった十七音しかない詩です。二重三重の意味を込めたり、比喩を重ねたりすると、十七音の器が軋んでしまうのです。もう少し材料を減らして、主役となるべき季語が立ち上がってくるような描写を心がけてみましょう。
“ポイント”

冬の光還暦の旅赤レンガ

なんくる

夏井いつき先生より
〈冬の光/還暦の旅/赤レンガ〉斜め線のところで意味が切れているので、調べがブツブツ切れてしまってます。調べを意識して、推敲してみましょう。
“参った”

雪祭りいつか一緒に臥せし妻

南の爺さま

夏井いつき先生より
語順を再考しましょう。この語順ですと、「いつか一緒に」が、「臥せ」にかかってくるような印象を与えてしまいます。
“参った”

百余年見上げる空は冬銀河

空素(カラス)

夏井いつき先生より
「見上げる」は不要。この四音をどう使うかが、勝負です。
“ポイント”

光る雪纏う札幌赤レンガ

崇元

夏井いつき先生より
「雪」に対して「纏う」はありがちな表現。ここは一考です。
“ポイント”

百歳の煉瓦へ薄命の六花

蜘蛛野澄香

夏井いつき先生より
「〈百歳のレンガ薄命の六花〉(字足らず)、〈百歳のレンガ薄命なる六花〉(〜の〜を諦める)、と迷いました」と作者のコメント。

「煉瓦」のことを擬人化しての「百歳」。この擬人化も、詩になりにくい技法です。むしろ「百年の煉瓦」としたほうが、くみしやすいかな。
“ポイント”

雪寺や池の飛び石白大福

クスノさとみ

夏井いつき先生より
「池の飛び石」が「白大福」みたいという見立てなのかな? 見立ては、実はとても難しい技法です。ベタになりがちで、詩にもっていくのにハードルが高いのです。
“ポイント”

イルミ点く悴む君の耳たぶ透かし

希凛咲女

夏井いつき先生より 
視点はよいのですが、「イルミ」という端折り方が気になります。「点く」と書かなくても想像できますので、上五に「イルミネーション」と置いて、中七下五を再考してみましょう。
“ポイント”

凍土に手繋ぎドギマギばあさんと

オカメのキイ

夏井いつき先生より
「ドギマギ」は、恋愛感情? 照れ? 慣れない介護? そこらへんが分かるような描き方をしたいですね。
“ポイント”

名所でも裏に廻れぬ雪庁舎

春木

夏井いつき先生より
「~でも」が散文的な助詞の使い方になっています。ここを一考してみましょう。
“ポイント”

秋高し涸沢カール背にリュック

佐藤恒治

夏井いつき先生より
第47回「コスモスと浅間山」の〈リュック背に涸沢カール秋高し〉の語順を入れ替えて、推敲しました」と作者のコメント。

「リュック」から始めるか、「秋高し」からいくか、語順を替えるだけで、印象が変わってきますね。〈秋高し/涸沢カール/背にリュック〉と、意味が切れる調べになっているのが、ちょっと気になるかな。「秋高き涸沢カール」とする手もあります。

“参った”

赤れんが吹雪耐えつつ痛む傷

野山めぐ

夏井いつき先生より
「赤れんがに自分の心を重ねてみました。『痛む』『傷む』の表記で迷いましたが、辛いことに自分の心が痛んでいるという意味で、『痛む』を使いましたが、よかったのでしょうか?」と作者のコメント。

「吹雪」「痛む傷」とあれば、「耐えつつ」は書かなくとも想像できます。この四音をどう使うか。推敲の成否は、そこにかかってきます。
“ポイント”

風花す父母との旅や赤レンガ

遥琉

夏井いつき先生より
「風花す」の終止形、中七「~や」の切字、下五の名詞止、と三段切れになりました。どこかを繋げるとよいのですが。
“参った”