写真de俳句の結果発表

第50回「雪の赤れんが庁舎」《ハシ坊と学ぼう!⑥》

ハシ坊 NEW

第50回「雪の赤れんが庁舎」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

 

雪もよひ校歌は「北風」に始まれり

朝宮馨

夏井いつき先生より
下五を「に始まる」と、きっぱり言い切れば、人選です。
“参った”

雪だるま好きな人に思い馳す

のんびりくまたん

夏井いつき先生より
「好きな人」と書いた段階で、思いを馳せていることは分かります。不要な言葉を外すことで、必要な情報を入れることができます。どんな雪だるまですか? 好きな人はどんな人ですか?
“ポイント”

ミュージカル見終へ霙の歩道橋

甲斐杓子

夏井いつき先生より
「『見終へ』でよいのか、『終へて』がよかったのか、『霙の歩道橋』とするよりも『歩道橋の霙』とするほうが良かったのかを、悩み続けました」と作者のコメント。

観客としての立場ならば「見終へ」でよいと思いますが、そのように説明しなくても、例えば「ミュージカルの興奮」「ミュージカルの高揚」とか、そんな書き方をすることで、それを観劇しての帰り道なのだろうなと想像はできます。まだまだ工夫ができますので、色々試みてください。
“参った”

サンタくれしフライヤー残業の道庁

夜汽車

夏井いつき先生より
内容に興味は引かれます。ただ、「サンタくれしフライヤー」と「残業の道庁」がどういう接点で取り合わせられているのか、読み解くことがかなり難しいのです。取り合わせというよりは、何らかのエピソードが詰め込まれているケースかもしれません。
“参った”

赤煉瓦の駅舎にも門松立つ

常然

夏井いつき先生より
「『にも』が気になり、悩みました。東京駅の大きな門松を思い出しました」と作者のコメント。

そうですね。「にも」が散文的な使い方です。「赤煉瓦の駅舎」でワンフレーズ、後半は季語「門松」を描写してみましょう。
“ポイント”

赤れんが違反切符に六花

内田ゆの

夏井いつき先生より
「赤れんがへ、道外の友人を車で案内しました。少しのつもりで道路に車を停めて周辺を散策。戻ったら車に駐車禁止の切符が貼られていました。切符に雪がうっすら積もっていて、はっきり結晶が見えて……。友人は『結晶ってこんなに綺麗なのね!』と喜んでいましたが、私は複雑な心境でした。でも、今となっては良い思い出です」と作者のコメント。

「違反切符」と「六花」の取り合わせだけで、一句になるだけの材料が十分あります。「赤れんが」は、兼題写真の光景でありつつ、作者の実体験のようですが、一句としてはその情報はなくていい。残り五音がうまくいけば、人選は目の前です。
“ポイント”

空風や赤煉瓦の写真消し忘れ

香蘭

夏井いつき先生より
「別れた人と行った、赤煉瓦倉庫の写真がまだ残っていた。空風が吹いてきて、染みてしまった」と作者のコメント。

下五「消し忘れ」の句意が読み取りにくいです。「別れた人」との写真であることを匂わせる工夫が欲しい。
“ポイント”

3日目のおでん喰ひて入院す

田中 百子

夏井いつき先生より
特別な意図がない限り、数字は漢数字とするのが定石です。
“ポイント”

雪花や真朱の庁舎鎮もれり

閏星

夏井いつき先生より 
あえて「雪花」とする必要があるのかどうか。そこを一考してください。
“ポイント”

村捨てて立つ函館や寒昴

穂々々

夏井いつき先生より
「立つ」を「発つ」とすれば、人選です。
“ポイント”

秋天やキングの塔に吹部のマーチ

悠美子

夏井いつき先生より
「娘も所属していた高校の吹部(吹奏楽部)が、県庁舎(キングの塔)の前庭で演奏する機会を得た時のことです。秋晴れの下、重厚なキングの塔に高校生たちの若々しい演奏が響き、空に向かって広がっていくように感じました」と作者のコメント。

「キングの塔」「吹部」という言葉が、少々乱暴です。俳句のみを読んだ人には、それぞれ何を意味するのか、つかみかねます。
“ポイント”

手のひらに儚く消ゆる花弁雪

ミワコ

夏井いつき先生より
「『花弁(はなびら)』と読んでください。降る雪も散る花弁も儚いものです」と作者のコメント。

「花弁雪」は、はなびらのような雪という比喩でしょうか。少々強引な書き方かと思います。また、「雪」に対して「~儚く消ゆる」は、ありがちな措辞ではあります。イメージに頼らず、「雪」を描写する視点で、観察してみましょう。

“参った”

ダイヤモンドダストを纏ふ五戸のコタン

乃咲カヌレ

夏井いつき先生より
「北海道などの寒冷地方のみで観測されるというダイヤモンドダストが、アイヌの集落である『コタン』に舞い、キラキラと輝いている様子を想像して詠みました。 ウィキペディアによると『コタンは数軒の家により構成されており、大抵は五−七戸から成る』とのことです」と作者のコメント。

「~を纏ふ」を一考してみましょう。ありがちな措辞です。
“ポイント”

穂芒やスイング聞こゆ赤レンガ

岡 ミミズク

夏井いつき先生より
「~や」の切字、「聞こゆ」の終止形で切れる、三段切れです。どこか一カ所、つなげるのが定石です。
“参った”

冬茜外階段の後五分

藤康

夏井いつき先生より
「ライブの開場前に、外の階段に並んで待っている時を書きました。『の』とするか、『で』か、『に』か、迷いました。」と作者のコメント。

この句の字面では「ライブの開場前に、外の階段に並んで待っている」という状況が分からないため、「後五分」がどういう五分なのか、読み取れないのです。
“参った”