写真de俳句の結果発表

第50回「雪の赤れんが庁舎」《ハシ坊と学ぼう!⑦》

ハシ坊 NEW

第50回「雪の赤れんが庁舎」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

 

鴨砕く水面に揺れる白絨毯

松田 涼花

夏井いつき先生より
「冬に鴨がやってきて、荒々しく揺れる水面に映る雪景色を思い浮かべました」と作者のコメント。

「雪」と書くと「鴨」との季重なりになるため、「白絨毯」としたのだと推測しますが、この見立てが悪目出ちしてしまいます。描写に徹底すれば、季重なりをクリアすることも可能ですから、まずは俳筋力を強化し、時間をおいてこの句の推敲に再度挑戦してみましょう。
“参った”

メーテルめくコートや辞表出しにけり

白沢ポピー

夏井いつき先生より
「メーテルは『銀河鉄道999』のヒロイン。トレードマークとも言える黒のロングコートを着て、哲郎という主人公と共に宇宙を旅しています」と作者のコメント。

面白い句材です。「や」「けり」と切字が重なっていますので、どちらか一つを外しましょう。人選は目の前です。
“ポイント”

紙詰まる複写機に愚痴雪月夜

生石子

夏井いつき先生より
コピー機の紙詰まりという句材は、それなりに見ます。下五の季語「雪月夜」が動きそうでもあり……。
“参った”

羽田行最終便へ札納

太刀盗人

夏井いつき先生より
「札幌2018発 快速エアポート176号で、最終便へ急ぐ。下五の札と駅名を掛ける」と作者のコメント。

文字通りに読むと、「羽田行最終便へ」乗ろうとしている「札納」の日であるよ、という句意? 「下五の札と駅名を掛ける」という部分の作者の意図をつかみかねています。
“参った”

蛍のごと舞ひ降るる雪ネオン街

みたぞの鈍幹

夏井いつき先生より
「降る」は終止形も連体形も同じなので、「降るる」にはなりません。語順も含めて、一考してみましょう。
“ポイント”

旅人の雪舞い散るる光かな

小澤翔明

夏井いつき先生より
「舞い散る」は終止形も連体形も同じなので、「舞い散るる」にする必要はありません。更に、「雪」に対して「舞い散る」はありがちな表現。そのあたりも推敲してみましょう。
“ポイント”

燗酒やネオパンに出づ赤煉瓦

慈庵風

夏井いつき先生より
「燗酒や」の切字、「~出づ」の終止形で切れている、三段切れです。「ネオパン」は写真フィルム? 「~に出づる」としたかったのかもしれませんが、中七が八音になってしまいますね。さあ、どうしよう?
“ポイント”

赤煉瓦歴史纏ひし威風かな

大久保一水

夏井いつき先生より
「歴史纏ひし威風」は説明の言葉になっています。俳句は描写です。
“ポイント”

異世界で咲く花に酔う月うさぎ

藤華靖麿

夏井いつき先生より 
「咲く花に酔う月うさぎ」というフレーズそのものが、すでに異世界の様子ですから、上五で「異世界で」と説明する必要はありません。
“ポイント”

降る雪や人も光もファンタジー

石津 さくら

夏井いつき先生より
「赤レンガ庁舎にイルミネーション、『わぁーきれい!』と声が出ます」と作者のコメント。

「ファンタジー」というふわっと素敵な言葉に甘えず、描写する練習から始めましょう。
“ポイント”

息弾み靴跡辿りし凍てし道

桃華

夏井いつき先生より
「辿りし」「凍てし」の「し」は、過去の意味になります。語順も含めて、再考してみましょう。
“ポイント”

小雪舞ふ網走刑の煉瓦塀

広夢

夏井いつき先生より
「網走刑」という略し方は、少々強引です。地名に拘るよりは、「刑務所」であることを書いたほうがよいかと思います。
“参った”

五稜星シンメトリーを凍てつかせ

三日余子

夏井いつき先生より
「兼題写真をみて、左右対称の赤れんが庁舎が雪に映えて大変美しいと感じました。これを素直に詠んでみましたが、『シンメトリー』という名詞的な表現が通用するのかどうか、わかりませんでした」と作者のコメント。

俳句は、ここに提示された文字面が全てです。「五稜星」というのみしかないので、「左右対称の赤れんが庁舎が雪に映えて大変美しいと感じました。これを素直に詠んでみました」という作者の意図は、読み取り難いのです。俳句に「シンメトリー」という言葉を使うことそのものは問題ないのですが、この句の場合は、これだけの音数を使うことが得なのか、損なのか。そこを一考してみましょう。
“ポイント”

雪道で庁舎の朝を撮影会

美典

夏井いつき先生より
上五の助詞「で」は、散文的な使い方。ここは要一考です。
“参った”

雪の道触れては離る初恋の

小泉れもん

夏井いつき先生より
「勝手に憧れの君と思っている人と歩くことがあり、さりげなく腕が触れたりしてしまった、若い私の胸キュン事件を詠みました」と作者のコメント。

下五「初恋の」の着地は、少々不安定。語順を一考してみましょう。上五を「初恋や」と置いてみるのは、いかがでしょう。
“ポイント”