写真de俳句の結果発表

第50回「雪の赤れんが庁舎」《ハシ坊と学ぼう!⑯》

ハシ坊

第50回「雪の赤れんが庁舎」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

 

後の月明治の煉瓦照らしをり

平井伸明

夏井いつき先生より
「京都に行った時、同志社大学の構内を歩いてみました。学生時代は京都でしたが、同志社大学は行ったことがなく、初めて歩いたのですが、そこにあるチャペルが趣きがあって印象的だったので句にしてみました」と作者のコメント。

「照らしをり」は一考してみましょう。こう書かずに、月の光がレンガの建物におよんでいることがわかれば、ベストなのですが。
“ポイント”

絶縁の窓口はどこ雪しまき

鈴白菜実

夏井いつき先生より
「『絶縁』の語は、離婚だけでなく、親子の縁切りなども含める意図で選びました(絶縁体と間違われないか、少し心配です)。あんな家族とは縁を切りたい、でもそんな窓口存在するの、ああ雪しまき、風も雪も私を阻むのか……みたいなイメージです」と作者のコメント。

まるほど、そういう意味合いを書きたかったのですか。「絶縁の窓口」とは一体なにか? 離婚届を提出する窓口? もっと抽象的なイメージ? 読み手としてはかなり迷います。例えば、上五を「絶縁や」としておいて、中七下五を工夫するというのも一手かも。
“ポイント”

夕暮の鐘雪の公園に待つ

横浜月子

夏井いつき先生より
調べの効果も含めて、語順を一考してみましょう。
“参った”

「事故った」と震えるスマホ雪しまく

志摩秋湖

夏井いつき先生より
「私の勤務先は、赤れんが庁舎の斜向かい。一昨年(2022年)のある日の退勤時、吹雪の中で息子から交通事故を起こした、との報せを受けた際の心情を、『雪しまく』の季語に託してみました」と作者のコメント。

まさに実体験ですね。「事故った」という台詞が、自身のものなのか、電話の向こうから聞こえてくる誰かのものか。それが分かれば、季語の受け止め方がよりリアルになります。語順もふくめて、中七を再考してみましょう。
“ポイント”

電飾の木々の痛み鎮める雪

あまぐり

夏井いつき先生より
調べを整えると、いい感じになります。

添削例
電飾や木々の痛みを鎮め雪
“ポイント”

待ち人来ず赤煉瓦庁舎は雪

喜多輝女

夏井いつき先生より
「は」の位置をかえたほうが、調べが落ち着きそうです。

添削例
待ち人は来ず赤煉瓦庁舎雪
“ポイント”

首振る赤べこ泰然春の山

佐藤  啓蟄

夏井いつき先生より
「首を振る赤べこ」として、後半は「泰然」が必要か、「春の山」が動かせないか。ここが思案のしどころです。
“ポイント”

鈴の音や百年前も聖夜かな

志暁

夏井いつき先生より
「や」「かな」と切れ字が重なってしまいました。
“ポイント”

初雪やあれは初夏の落としもの

丹波らる

夏井いつき先生より
「敢えて『初雪』と『初夏』を取り合わせました。落としものが巡りゆくイメージです」と作者のコメント。

意欲は分かるのですが、成功しているか? と問われると、懐疑的です。そもそも具体的なモノがなくて、イメージで終わっていることも難点の一つです。
“ポイント”

初バイト豪雨に消ゆる夏休み

山女

夏井いつき先生より
第46回「深夜のドライブイン」《並》〈梅雨末期バイトは首に最上峡〉 高校時代の思い出の一幕を俳句に残したく、推敲しました」と作者のコメント。

なるほど、あとは言葉のちょっとしたチョイス。「初バイト」という情報が外せないのか、「夏休み」という季語を大切に思っているのか。前者であれば……

添削例
初めてのバイト豪雨に消ゆる夏
“ポイント”

出船待つベンチに丸む雪の人

前田冬水

夏井いつき先生より
描こうとしている光景はよいのですが、「ベンチに丸む雪の人」という表現は要一考です。「出船待つ」で切りたいのか、「出船待つベンチ」と続けたいのか、そこも含めて検討してみましょう。
“ポイント”

かじかむ手漁夫の小舟や櫂の音

チェルシー

夏井いつき先生より 
「先日、浦安市郷土博物館へ。昭和27年頃の漁業の様子等、とても良かったです。べか舟の展示にタイムスリップしました。あの頃に馳せて句にしました」と作者のコメント。

「かじかむ手/漁夫の小舟や/櫂の音」と三段切れっぽい調べになっています。
“ポイント”

役人も出納帳もストーブの香

立田鯊夢

夏井いつき先生より
「一昔前の北海道の暖房と言えば、石炭・石油でした。寒い中、がんがんストーブを炊くと、部屋中が火の匂いで一杯になりました。石炭には石炭の、灯油には灯油の独特の火の匂い。そんな火の匂いに包まれて、日々の仕事を行っていました」と作者のコメント。

面白い素材ですね。音数調整ができれば、更によいのですが。是非、完成させたい一句。
“ポイント”

聖夜にはバニラシュガーの愛か金

まさと澄海

夏井いつき先生より
「初句は〈聖夜とは愛か金かの行事かな〉だったのですが、俳句は描写、ということで四苦八苦したあげく、この句にたどり着きました。 これも挑戦です。ご指導をよろしくお願いします」と作者のコメント。

えらい! よくがんばっています。上五を「聖夜なる」として、下五は「愛か金か」とすれば、言いたいことに近づくかなあ。中七の助詞をどうするか、あと一息ですね。
“ポイント”

んに続く言の葉なしや修司の忌

みや

夏井いつき先生より
「ん」をカギ括弧に入れたら、人選です。
“参った”

音を込め光を集め滝凍る

九月だんご

夏井いつき先生より
「ライトアップされた凍滝の映像を思い出しました。吸い込まれたように無音で、静けさの中を反射した蛍光色が、きらきらしていました」と作者のコメント。

なるほど、ライトアップされている人工の「光」なのですね。そこが、ちょっと分かりにくいか。「滝」そのものの自然の氷の光とも読めます。
“ポイント”

雪空や赤煉瓦街見え分かぬ

扇百合子

夏井いつき先生より
「見え分かぬ」のニュアンスがちょっと分かりにくいかと。「雪」が激しく降ってる? 赤煉瓦の街が見つからない? 道に迷っている?
“参った”

薬代も値上げ嘆きの雪は降りやまぬ

中山白蘭

夏井いつき先生より
調べを意識してみましょう。

添削例
薬代値上げ嘆きの雪やまず
“ポイント”