第50回「雪の赤れんが庁舎」《ハシ坊と学ぼう!⑰》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
小雪舞う庁舎彩る幻想美
津野田コウ
夏井いつき先生より
「彩る幻想美」だと感じたのは、「庁舎」のどんな様子からなのでしょう。そこを描写するのが、俳句です。
「彩る幻想美」だと感じたのは、「庁舎」のどんな様子からなのでしょう。そこを描写するのが、俳句です。
故郷へ東京駅も雪化粧
渡辺 あつし
夏井いつき先生より
下五「雪化粧」は使い勝手がよい言葉ではありますが、その分、手垢がついているともいえます。描写という観点で、下五を再考してみましょう。
赤煉瓦ゆっくり降る雪チャルメラや
ビバリベルテ
夏井いつき先生より
下五「~や」の着地は難しい型です。「チャルメラ」と「雪」で一句、「赤れんが」と「雪」で一句という具合に、切り分けてみましょう。
下五「~や」の着地は難しい型です。「チャルメラ」と「雪」で一句、「赤れんが」と「雪」で一句という具合に、切り分けてみましょう。
冬うらら「赤れんが」にも五稜星
北国はな
夏井いつき先生より
中七「にも」が散文的な助詞の使い方になっています。語順も含めて一考してみましょう。
中七「にも」が散文的な助詞の使い方になっています。語順も含めて一考してみましょう。
深夜零時婚姻届と凍星
藤央
夏井いつき先生より
「どうしても結婚記念日にしたい日がありました。ところが、私も夫も仕事で日中に出しに行くことができませんでした。深夜零時、日付が変わるとともに区役所へ出しに行きました。12月でしたので、空気はとても冷たく、シンと静まり返っています。区役所の方に小さな声で『おめでとうございます』と言われ、外に出ると空気が住んでいるせいか、冬の星がはっきりと見えました。そのことを思い出しました」と作者のコメント。
素敵なエピソートですね。この内容でしたら、「深夜零時」を上五に字余りでおいて、「婚姻届と凍星と」と調べを作りましょう。これならば、人選です。
「どうしても結婚記念日にしたい日がありました。ところが、私も夫も仕事で日中に出しに行くことができませんでした。深夜零時、日付が変わるとともに区役所へ出しに行きました。12月でしたので、空気はとても冷たく、シンと静まり返っています。区役所の方に小さな声で『おめでとうございます』と言われ、外に出ると空気が住んでいるせいか、冬の星がはっきりと見えました。そのことを思い出しました」と作者のコメント。
素敵なエピソートですね。この内容でしたら、「深夜零時」を上五に字余りでおいて、「婚姻届と凍星と」と調べを作りましょう。これならば、人選です。
君の小股我の大股雪の道
馬場めばる
夏井いつき先生より
「北海道で、朝一番の真っさらな雪道を歩きました。後ろに私達の足跡が残り、まるで私たちだけの雪道だと思いました」と作者のコメント。
伝えたいのが、「私達の足跡」の映像だとしたら、「~小股~大股」はニュアンスがブレるかと。このあたりを推敲してみましょう。
「北海道で、朝一番の真っさらな雪道を歩きました。後ろに私達の足跡が残り、まるで私たちだけの雪道だと思いました」と作者のコメント。
伝えたいのが、「私達の足跡」の映像だとしたら、「~小股~大股」はニュアンスがブレるかと。このあたりを推敲してみましょう。
どぶねずみ笑う庁舎に雪しぐれ
しばのおはる
夏井いつき先生より
童話か絵本のような味わいを狙っているのでしょうか。中七の助詞「に」のみ、一考してみましょう。場合によっては、語順を見直すのもアリ。
耳の奥に静寂の音衾雪
ひな野そばの芽
夏井いつき先生より
「締切間近なので、投句します。月並みすぎて涙も出ません。雪が積もると何の音もしなくなる、雪の積もる地方の方なら誰でも経験している、あの音を表現したかったのですが、私の能力では表現しきれません。またいつか挑戦します」と作者のコメント。
「あの音」を表現したいと、誰もが思いますものね。今年の冬は、じっくりと雪降る音を聴いてみましょう。せっかく、雪の積もる土地にお住まいのようですから。
外套に夫くるみ見る函館の灯
よっけ
夏井いつき先生より
語順が惜しい一句。下五の字余りは少々もたつきます。まずは、「函館の灯や」と句またがりで詠嘆してみましょう。俳句では「見る」という動詞は不要であることが多い点も考えに入れて、推敲して下さい。
雪晴れやひときわ眩し赤れんが
おケイちゃん
夏井いつき先生より
「雪晴れや/ひときわ眩し/赤れんが」上五「~や」の切れ字、「~眩し」の終止形、下五は「赤れんが」の体言止め。三段切れになっています。どこか一カ所を繋いでみましょう。