俳句deしりとりの結果発表

第34回 俳句deしりとり〈序〉|「びし」②

俳句deしりとり
俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
“良き”

第34回の出題

兼題俳句

鼻涙管といふ暗渠や秋さびし  芦幸

兼題俳句の最後の二音「びし」の音で始まる俳句を作りましょう。

 


※「びし」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

ビシエドの回る檀家や茄子の馬

栗田すずさん

ビシエドの俳号頼もし冬うらら

山内彩月

BCADしか思ひ浮かばず神無月

伊藤 恵美

BCADの句に目の輝ける夜長
(敬称略すみません。俳人ユニットRUBY(ルビイ)応援してます!)

帝菜

今回の出題にあたって絶対くるよな~と予想してたんですが、やっぱり来ましたね! 《常幸龍BCAD》さんへ句友からのファンレターであります。2024年には加藤幸龍名義で第7回俳句四季新人奨励賞にも輝きました。この場を借りておめでとーー!!
“ポイント”

ビシエドの打球柵越え夏空へ

希子

ビシエドの移籍決定秋時雨

⑦パパ

ビシエドの一振り生ビールが痛い

雨野理多

俳人のビシエドさん……じゃないよなあ。打球が柵越えるし移籍までしてるしなあ。ビシエドことプロ野球選手ダヤン・ビシエドさんのことですね。中日ドラゴンズに所属していた選手で、強力な打者として移籍先への注目が集まっているようです。野球ファンにとってはご贔屓のチームを一発で敗北に追いやる可能性のある「一振り」はこわいよなあ。《雨野理多》さんは痛恨の生ビールを呷っておりまする。

“とてもいい“

毘沙門天アレを再びタイガース

ズッキーニン

野球つながりで「タイガース」と「毘沙門天」。以前、ABCラジオ『おはようパーソナリティ』の生放送に呼んでいただいたことがあるんですけど、そこで「阪神ファンは優勝のことをアレっていうんですよ!」てアツく教えていただきましたわ。さすがの熱量だねえ、タイガースファン。が、「毘沙門天」だけだと季語としては扱いにくいかなあ……。新年最初の寅の日に毘沙門天に参詣する「初寅」って新年の季語はあるので、上五「初寅や」とかに推敲すれば季語問題はクリアされるぞ!
“ポイント”

美酒迸る月明のスタジアム

ユリノキ

不思議と野球っぽい句材が多いんだよなあ、今回。勝利のビールかけ? 特に野球ファンでもない自分としましては「ああ、お酒がもったいない~……」と感じてしまうだけども。嗚呼、かなしきは貧乏性。

“良き”

美酒染みて戦慄く舌や小夜時雨

三尺 玉子

美酒の瓶月の明かりを閉じ込めし

ちょうさん

美酒なれば許せ月夜の膝枕

ガリゾー

美酒交わすオアシス都市の空に月

よはく

「美酒」は辞書的には味の良い酒、うまい酒、を意味する言葉。ですが、お酒がうまいかまずいかは味だけに留まらず、状況や環境が大きく影響すると考えて良いのでしょうね。《三尺 玉子》さんや《ちょうさん》さんは味覚や容器の描写に比重があり、客観的に「美酒」と判断するだけの材料を感じ取れます。一方で《ガリゾー》さんと《よはく》さんはより主観的です。気持ち良く酔うから美酒、一緒に交わすから美酒、といった具合。どちらも酒の上での真実ってやつですなあ。古今東西、酒と月との取り合わせは多くありますが、主観的な「美酒」の方がより「月」との親和性が生まれるんだろうか。気持ち良くなればなるほど月も美しく見えるのかもしれない。

“良き”

美食家の痩せたるあばら桜枯る

すそのあや

美食家のトリュフ横取る秋の豚

久えむ茜咲

美酒があれば美食もあります。美食家の方が良いモノを少しずつ食べるからあまり太らない、みたいな話を聞いた記憶があるなあ。「桜枯る」が皮肉な味わい。《久えむ茜咲》さんの句は読みに迷います。ふつうに読むとトリュフを豚が横取ってる句なんだけど、「美食家のトリュフ」で切れてると読むとニコラス・ケイジ主演の映画『PIG/ピッグ』(マイケル・サルノスキ監督/2021年)になるんだよな。僕狙いのマニアッ句なのか、それとも偶然か……?

“良き”

美少年」ひと肌河豚ちりをひとり

花岡貝鈴

ぐわー、美味そう! 「食べ物の季語は美味しそうに詠む」って心がけがありますが、ご満悦な状況でいかにも「河豚ちり」が美味しそう。涎でてきますわ。「美少年」は熊本の名酒ですが、固有名といい語順といいハマリ役です。温度を表す「ひと肌」へのつながりの面白さはこの銘柄ならでは。

“良き”

美少女は月にかわってお仕置きす

うに子

美少女戦士今日の月に代わりて

飾る

美少女戦士赤いブーツの踏み込めり

白沢ポピー

美少女戦士の顔面ならぶ祭かな

前田 昂平

懐かしいですねえ、セーラームーン。「月にかわってお仕置きよ」って記憶に残る良い決め台詞だよなあ。あまりにも台詞の一部すぎて《うに子》さんや《飾る》さんの場合、季語として認識していいのか疑問ではあるけど……。一番季語がちゃんと機能してるのは《前田 昂平》さん。祭の屋台でしょうねえ。お面じゃなくて「顔面」なのが妙なインパクトたっぷり。

“良き”

美姿勢の美魔女秋刀魚の骨綺麗

東風 径

姿勢に対して良い悪いではなく「美」なところに「美魔女」らしいこだわりというか自意識を感じる。かといって浮世離れしたセレブリティ方向にいくんじゃなくて「秋刀魚の骨綺麗」という地に足ついたリアリティある描写に舵を切るバランス感覚がえらい。
〈③に続く〉
“良き”