第51回「味噌づくり」《ハシ坊と学ぼう!①》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
「味噌玉」の写真です。立春前後に毎年みんなでお味噌づくりをしています。一晩水に漬けて、ここまでの作業工程は時間がかかりますが、みんなで楽しく過ごせるひとときでもあります。この味噌玉が積みあがる頃は、作業もほぼ終わりに近づくころに。各々の手も麹でつるつるになっていて、テンションが上がっています。
土橋胡翔
季語なし
妻作る汁の旨さぞ味噌玉よ
小川多英子
「この五月に、初めて俳句の本を手に取りました。障害で字の書けない私には、タッチペンで投句出来る句会は本当に有難いです。味噌玉は初めて知りました。ですから手探りで詠んでみました」と作者のコメント。
この「味噌玉」は、春の季語の「味噌玉」というよりは、もう出来上がっている味噌のことではないかと……。季語としての「味噌玉」について、歳時記を調べてみましょう。
季語なし
残響と味噌の残り香祖母の家
納平華帆
明確な季語がありませんが、味噌作りの作業のあとの「残響」や「香」でしょうか。だとしたら、句材の可能性として惹かれるものはあります。
季語なし
味噌玉を溶いてるかしらお弁当
絵夢衷子
季語なし
味噌玉煮る脇に仕へるお漬物
丸山 晴耕
この「味噌玉」は、季語のそれではなく、簡易味噌汁のための味噌を玉にしたもの? かもしれません。
季語なし
汁すする亡き祖母見ゆる椀の中
はる奈
お気持ちは分かります。が、明確な季語がありません。この「汁」がどんなものか。ここに季語を入れられる余地がありそうです。
季語なし
湯気立てる味噌汁飲みて今日も行く
ごとう真樹
「湯気立つ」は季語ではありますが、ストーブに薬缶などをのせて乾燥を防ぐという意味での季語なので、味噌汁の湯気などは当てはまりません。
季語なし
姑と二人の嫁と手前味噌
釜眞手打ち蕎麦
「手前味噌」を季語とするのは、少々無理があるかと。
季語なし
手作りの味噌の香りで酒一献
のぶ
「一年ぶりの再会。カビが無いことにほっとした時に立ち上る香りは、昼から飲みたくなります」と作者のコメント。
明確な季語がありません。作者コメントに書かれている思いを一句にしたほうが、オリジナリティ&リアリティが多いと思いますよ。
季語なし
手前味噌手洗いすぎて味がわり
ビバリベルテ
言いたいことは分かるのですが、「手前味噌」を季語とするのは、無理があります。
季語なし
具だくさんみそ汁ご飯幼き日
万葉
「子どもの頃、味噌汁が大好きで、何杯もおかわりをして食べました。また、ご飯にみそ汁をかけて食べることも好きでした」と作者のコメント。
懐かしいエピソードですね。明確な季語を一つ入れてみましょう。まずは、原句に使われている名詞に優先順位をつけてみるところから。
季語なし
憂さ晴らし丸めて投げて味噌の種
ちづ姫
「味噌の種」という表現が悪いわけではあませんが、それを季語と認識してもらえるかどうか。全体の内容からして「味噌玉」のことのようですから、「味噌玉を丸めて投げて」とすれば、季語もちゃんと入ります。
季語なし
厨から食欲そそる味噌の香よ
智幸子
「味噌」だけでは季語になりません。明確な季語が欲しいですね。
季語なし
味噌玉やお椀に一つ湯気あがる
そうわ
この「味噌玉」は、春の季語「味噌玉」とは違う、即席みそ汁になるあの小さな味噌の玉……?
季語なし
味噌椀の湯気いっせいに出で湯ごと
の菊
どの言葉も明確な季語とはいえません。「味噌椀の湯気いっせいに」で映像はしっかり見えますので、下五に季語を取り合わせてみましょう。
季語なし
大鍋の湯気を挟んで吾子の声
六月風マンダリン
「湯気」だけでは季語になりません。何のための「大鍋」か。そこに季語がありそうですね。