第51回「味噌づくり」《ハシ坊と学ぼう!⑧》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
焼き味噌はおにぎり「3分体操」す
啓太郎
夏井いつき先生より
「焼き味噌はおにぎりの最高の友。食後はYouTubeの3分体操を実行して血糖コントロールします。動詞の『す』が必要と思いました。また、季語との取り合わせはどうでしょうか?」と作者のコメント。
「焼き味噌」が季語? 角川や講談社の歳時記には載ってないなあ。
「焼き味噌はおにぎりの最高の友。食後はYouTubeの3分体操を実行して血糖コントロールします。動詞の『す』が必要と思いました。また、季語との取り合わせはどうでしょうか?」と作者のコメント。
「焼き味噌」が季語? 角川や講談社の歳時記には載ってないなあ。


冬告げし母の自慢の十勝鍋
原島ちび助
夏井いつき先生より
「『十勝鍋』とは、石狩鍋の十勝地方での呼び名です。『石狩鍋』だと季重なりになるので、こちらを使いました。母親の自慢の十勝鍋が食卓に出るようになった。冬がやってきたのだな。そんな光景を詠んでみました」と作者のコメント。
上五は、「冬告げる」あるいは「冬告ぐる」としたほうが、今、まさに冬を告げるというニュアンスになります。「告げし」の「し」は、過去の意味になりますので。
上五は、「冬告げる」あるいは「冬告ぐる」としたほうが、今、まさに冬を告げるというニュアンスになります。「告げし」の「し」は、過去の意味になりますので。


夜8時暖簾めくればモツ煮込み
おかぴ
夏井いつき先生より
俳句では、特別な意図がない限り、漢数字が基本です。


冬鵙や昆布味噌炙る婆の生き方
黛素らん
夏井いつき先生より
ちょっと材料が多いです。各々の名詞に優先順位をつけてみましょう。何が一番伝えたいのか、客観的に判断しやすくなります。
ちょっと材料が多いです。各々の名詞に優先順位をつけてみましょう。何が一番伝えたいのか、客観的に判断しやすくなります。


明星をめくりつつ喰う根深汁
ヒマラヤで平謝り
夏井いつき先生より
「友人が大事に取っておいてくれた『明星』という昔のアイドル雑誌を、ものを食べながら見せてもらっていたら、すごく怒られたという一句です。『めくりつつ』で、『明星』が雑誌というのがわかるでしょうか?」と作者のコメント。
「めくりつつ」だから、雑誌かな? とは思いました。ただ、こんな雑誌があったことを知らない人もどんどん増えていくわけですから、「明星」はカギカッコをつけたほうが分かりやすいでしょう。カギカッコをつければ人選です
「友人が大事に取っておいてくれた『明星』という昔のアイドル雑誌を、ものを食べながら見せてもらっていたら、すごく怒られたという一句です。『めくりつつ』で、『明星』が雑誌というのがわかるでしょうか?」と作者のコメント。
「めくりつつ」だから、雑誌かな? とは思いました。ただ、こんな雑誌があったことを知らない人もどんどん増えていくわけですから、「明星」はカギカッコをつけたほうが分かりやすいでしょう。カギカッコをつければ人選です


嫁が君団子喰らうも賑やかし
蕃茄
夏井いつき先生より
新年の季語は、特に面白いものがありますよね。下五「賑やかし」は名詞? これは必要でしょうか。この「団子」が、駆除団子であってこその俳諧味ですから、むしろそこをちゃんと書きたいですね。
新年の季語は、特に面白いものがありますよね。下五「賑やかし」は名詞? これは必要でしょうか。この「団子」が、駆除団子であってこその俳諧味ですから、むしろそこをちゃんと書きたいですね。


ちり鍋やまどろむガラス細工のイルカ
鰯山陽大
夏井いつき先生より
「味噌ということで、温かい汁や鍋を思い浮かべて詠んでみました。修学旅行のお土産などで買ってきがちなガラス細工の置物は、例に漏れず私の祖母の家にもあって、温かい湯気や空気の中で眠ってるような様子を句にしました」と作者のコメント。
季語が動きそうな気はします。が、「ガラス細工のイルカ」を描きたい気持ちには共感します。
「味噌ということで、温かい汁や鍋を思い浮かべて詠んでみました。修学旅行のお土産などで買ってきがちなガラス細工の置物は、例に漏れず私の祖母の家にもあって、温かい湯気や空気の中で眠ってるような様子を句にしました」と作者のコメント。
季語が動きそうな気はします。が、「ガラス細工のイルカ」を描きたい気持ちには共感します。


坂冴ゆる重伝建の味噌屋かな
藤本花をり
夏井いつき先生より
「先日、訪れた大分県の杵築(きつき)市の城下町の情景です。石畳の坂道がたくさんあるのが特徴的で、有名な坂道のすぐわきに古い町家のお味噌屋さんがありました。『星』『声』『鐘』『風』+『冴ゆる』は歳時記で確認できました。『坂』+『冴ゆる』はダメでしょうか? 『重伝建』は重要伝統的建造物群保存地区の略です。この手の略語は使ってもよいのでしょうか?」と作者のコメント。
「冴ゆ」が季語ですから、その現象を認められる場所・音・現象などと合体させることは、可能だと思います。気になったのは、「重伝建」という略語のほうです。略語が全てダメとはいいませんが、この句の内容にとって効果的かと問われるならば、否と。
「先日、訪れた大分県の杵築(きつき)市の城下町の情景です。石畳の坂道がたくさんあるのが特徴的で、有名な坂道のすぐわきに古い町家のお味噌屋さんがありました。『星』『声』『鐘』『風』+『冴ゆる』は歳時記で確認できました。『坂』+『冴ゆる』はダメでしょうか? 『重伝建』は重要伝統的建造物群保存地区の略です。この手の略語は使ってもよいのでしょうか?」と作者のコメント。
「冴ゆ」が季語ですから、その現象を認められる場所・音・現象などと合体させることは、可能だと思います。気になったのは、「重伝建」という略語のほうです。略語が全てダメとはいいませんが、この句の内容にとって効果的かと問われるならば、否と。


温もりに幸せ感じ冬の夜
竜酔
夏井いつき先生より
「牡蛎の味噌仕立ての土手鍋をつつきながら酒を飲み、体の芯から温もってくる心情を詠みました」と作者のコメント。
中七が説明です。具体的に、何の「温もり」なのか、映像を描写しましょう。
「牡蛎の味噌仕立ての土手鍋をつつきながら酒を飲み、体の芯から温もってくる心情を詠みました」と作者のコメント。
中七が説明です。具体的に、何の「温もり」なのか、映像を描写しましょう。


蕗味噌や弁護士脱がずねぶる酒
麦のパパ
夏井いつき先生より
「あえて誰とは言いませんが(笑)。春の季語を使うのはちょっと早すぎると思いますが、実体験を大事にしたく、こう詠みました」と作者のコメント。
句材が面白いです。「酒」まで書かなくても、「蕗味噌」と「弁護士を脱がない人物」との取り合わせで、十分いけそうです。言外に、酒も見えてきますし。
句材が面白いです。「酒」まで書かなくても、「蕗味噌」と「弁護士を脱がない人物」との取り合わせで、十分いけそうです。言外に、酒も見えてきますし。


老ゐし母独居の味噌を作るらむ
伊沢華純
夏井いつき先生より
口語の「老いる」は、文語では「老ゆ」。ヤ行上二段活用ですから、ワ行の「ゐ」は間違いです。「老いし母」「母老いて」とするか、「老母」と書くか。そのあたりも含めて、再考してみましょう。
口語の「老いる」は、文語では「老ゆ」。ヤ行上二段活用ですから、ワ行の「ゐ」は間違いです。「老いし母」「母老いて」とするか、「老母」と書くか。そのあたりも含めて、再考してみましょう。


赤味噌の味噌煮込みうどんや冬至
海野ちきまる
夏井いつき先生より
「名古屋出身の父が作る味噌煮込みうどんは、とても美味しかったのを思い出し詠みました」と作者のコメント。
「冬至」と「赤味噌」の取り合わせは、いけそうな気がします。「赤味噌」「味噌煮込み」と情報が重複しているのは、少々もったいないですね。
「名古屋出身の父が作る味噌煮込みうどんは、とても美味しかったのを思い出し詠みました」と作者のコメント。
「冬至」と「赤味噌」の取り合わせは、いけそうな気がします。「赤味噌」「味噌煮込み」と情報が重複しているのは、少々もったいないですね。


味噌作り姉の作文は特賞
たかみたかみ
夏井いつき先生より
「これも60年近く前のこと。味噌作りを手伝ったことを作文に書いて、姉は作文コンクールか何かに出して、いい賞をいただいたような覚えがあります。私も出したのかどうか記憶がありませんが、姉は尊敬する対象でもあり、ライバルのようでもあり、大きな存在でしたね」と作者のコメント。
「姉の作文は特賞」という、尊敬のようであり妬みのようでもある微妙なフレーズがよいです。肝心の季語が動くかなあ。
「これも60年近く前のこと。味噌作りを手伝ったことを作文に書いて、姉は作文コンクールか何かに出して、いい賞をいただいたような覚えがあります。私も出したのかどうか記憶がありませんが、姉は尊敬する対象でもあり、ライバルのようでもあり、大きな存在でしたね」と作者のコメント。
「姉の作文は特賞」という、尊敬のようであり妬みのようでもある微妙なフレーズがよいです。肝心の季語が動くかなあ。


窓の縁冬蝿辿る雨の渋滞
六月風マンダリン
夏井いつき先生より
「第49回『ブルガリアの道路』《ハシ坊と学ぼう!⑦》の〈窓ガラスの淵蝿たどる渋滞〉を推敲しました。夏井先生より『淵』は比喩? と指摘され、気づきました。変換ミスで、『縁』の間違いです。渋滞でイライラしながら、フロントガラスの縁をノロノロ歩く蝿を目で追っている様子を表現したかったです」と作者のコメント。
なるほど、了解です。となれば、「フロントガラスを冬の蠅」と書けば、あなたの表現したい映像はかなり実現できます。あとは、残りの音数と入れたい内容とのせめぎ合いですね。
「第49回『ブルガリアの道路』《ハシ坊と学ぼう!⑦》の〈窓ガラスの淵蝿たどる渋滞〉を推敲しました。夏井先生より『淵』は比喩? と指摘され、気づきました。変換ミスで、『縁』の間違いです。渋滞でイライラしながら、フロントガラスの縁をノロノロ歩く蝿を目で追っている様子を表現したかったです」と作者のコメント。
なるほど、了解です。となれば、「フロントガラスを冬の蠅」と書けば、あなたの表現したい映像はかなり実現できます。あとは、残りの音数と入れたい内容とのせめぎ合いですね。


寒し朝味噌󠄀団子汁で温まる
トリケイ
夏井いつき先生より
「寒し」が「朝」に掛るのであれば、「寒き」と連体形になります。
「寒し」が「朝」に掛るのであれば、「寒き」と連体形になります。

