第51回「味噌づくり」《ハシ坊と学ぼう!⑨》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
冬館の厨ひび入りしぬか壺
文月蘭子
夏井いつき先生より
「昭和レトロな館を時々見かけることはあります。見た目は素敵でも、使い勝手は大変ではないかと思います。特に台所は寒いのではないでしょうか。そこにある糠床の壺を思い浮かべました。寒いからひびが入った、というより以前からひびの入った糠壺があり、より寒さを感じる冬館の台所の様子を詠みました」と作者のコメント。
内容はこれでよいので、音数調整をして、調べを整えましょう。
「昭和レトロな館を時々見かけることはあります。見た目は素敵でも、使い勝手は大変ではないかと思います。特に台所は寒いのではないでしょうか。そこにある糠床の壺を思い浮かべました。寒いからひびが入った、というより以前からひびの入った糠壺があり、より寒さを感じる冬館の台所の様子を詠みました」と作者のコメント。
内容はこれでよいので、音数調整をして、調べを整えましょう。


定年や父の十八番の蕪汁
窪田ゆふ
夏井いつき先生より
「台所に立ったことのない父が、定年退職したら急に料理学校に通いだしたのでびっくりしました。なかでも蕪汁が十八番! 蕪の甘みが美味しいんだよ、と言っていた父を思い出します。『父』『定年』『料理学校』『蕪汁』『十八番』『甘し』と書きたいことがいっぱいで、十七音に収めるのは無理でした。いろいろ削ったり入れ替えたりして、結局こうなりました。またいつか、父が料理学校に通った句も作りたいです」と作者のコメント。
苦心はよく分かります。上五「定年や」と思い切って打ち出したのは、よい工夫でした。「十八番」ではなく、「甘し」という情報を入れるほうがよかったかも。
苦心はよく分かります。上五「定年や」と思い切って打ち出したのは、よい工夫でした。「十八番」ではなく、「甘し」という情報を入れるほうがよかったかも。


味噌蔵の梁めく冬の肋骨は
踏轍
夏井いつき先生より
この感覚には共感します。が、比喩は逆の述べ方をしたほうがよいのではないか、と……。


味噌搗や蒸気(ゆげ)満つ厨祖母の技
西茉生
夏井いつき先生より
「満つ」が「厨」にかかるのであれば、「満つる」と連体形になります。下五「祖母の技」と引っくくってしまう着地も、少々損です。祖母の動作や様子が具体的に描写できるとよいのですが、そうなってくると、季語「味噌搗」の中に、中七の情景は入っていると考えるべきでしょう。
「満つ」が「厨」にかかるのであれば、「満つる」と連体形になります。下五「祖母の技」と引っくくってしまう着地も、少々損です。祖母の動作や様子が具体的に描写できるとよいのですが、そうなってくると、季語「味噌搗」の中に、中七の情景は入っていると考えるべきでしょう。


熱すぎる十二月八日の味噌汁や
猫雪すあま
夏井いつき先生より
音数調整をしましょう。……というか、この素材でやるとすれば、選択肢はあまりないですね。
添削例
熱すぎる味噌汁十二月八日
音数調整をしましょう。……というか、この素材でやるとすれば、選択肢はあまりないですね。
添削例
熱すぎる味噌汁十二月八日


冷奴虐待受けし記憶の芯
俊恵ほぼ爺
夏井いつき先生より
「妻には子供の頃の記憶が殆どありません。一人目の継母は肉体的虐待でした。父親の仕事の帰りが遅いのをいい事に、来る日も来る日もおかずは冷奴ばかり食べさせられました。そのせいで冷奴が嫌いになりました。数少ない、妻の幼少期の記憶です」と作者のコメント。
「冷奴」という季語は、そういう意味なのですね。読み手として、この季語をどう受け止めればよいのかと、読みを迷ってしまいました。「虐待」とあれば、「受けし」はなくても意味は理解できそうです。下五「記憶の芯」も少々観念的。「冷奴」と「虐待」、この二語に絞って再考してみましょう。
「妻には子供の頃の記憶が殆どありません。一人目の継母は肉体的虐待でした。父親の仕事の帰りが遅いのをいい事に、来る日も来る日もおかずは冷奴ばかり食べさせられました。そのせいで冷奴が嫌いになりました。数少ない、妻の幼少期の記憶です」と作者のコメント。
「冷奴」という季語は、そういう意味なのですね。読み手として、この季語をどう受け止めればよいのかと、読みを迷ってしまいました。「虐待」とあれば、「受けし」はなくても意味は理解できそうです。下五「記憶の芯」も少々観念的。「冷奴」と「虐待」、この二語に絞って再考してみましょう。


風呂吹きを誂ふる女ひとりごち
トヨとミケ
夏井いつき先生より
「『女(ひと)』と読みます」と作者のコメント。
「女」と書いて「ひと」と読ませるというやり方は、あまり推奨できません。「人」と書けば、それが男なのか女なのかも含めて、読者は鑑賞してくれます。
「『女(ひと)』と読みます」と作者のコメント。
「女」と書いて「ひと」と読ませるというやり方は、あまり推奨できません。「人」と書けば、それが男なのか女なのかも含めて、読者は鑑賞してくれます。


レンチンの朝食かき込み味噌作り
やしたあきら
夏井いつき先生より
「『朝食(あさげ)』と読みます」と作者のコメント。
「あさげ」と読ませたいのならば、「朝餉」と書くべきでしょう。
「『朝食(あさげ)』と読みます」と作者のコメント。
「あさげ」と読ませたいのならば、「朝餉」と書くべきでしょう。


猫の耳銜えて夕餉待つ小春
西村緋色
夏井いつき先生より
「第20回『散歩中の紫陽花』〈猫の耳くわえる妹梅雨曇り〉を推敲しました」と作者のコメント。
作者自身がくわえているのか? と読めてしまいますね。「夕餉待つ」という情報は必要ですか?
「第20回『散歩中の紫陽花』〈猫の耳くわえる妹梅雨曇り〉を推敲しました」と作者のコメント。
作者自身がくわえているのか? と読めてしまいますね。「夕餉待つ」という情報は必要ですか?


賀茂祭や舎人姿の糞始末
藤田ほむこ
夏井いつき先生より
「第49回『ブルガリアの道路』の写真から、〈葵祭の牛車過ぎ清掃びと来〉の推敲です」と作者のコメント。
「舎人」の姿をした人が「糞」の始末をしてる。ここを具体的に書いた点、よくなりましたね。「姿」と書かなくても、「賀茂祭」「葵祭」の「舎人」と書けば、その装束を身に着けている人だと分かりますね。さあ、もう一息で完成ですよ。
「舎人」の姿をした人が「糞」の始末をしてる。ここを具体的に書いた点、よくなりましたね。「姿」と書かなくても、「賀茂祭」「葵祭」の「舎人」と書けば、その装束を身に着けている人だと分かりますね。さあ、もう一息で完成ですよ。


下校しておかかかきかき祭笛
稽古
夏井いつき先生より
中七の句意を読み解けず。オノマトペではないですよね?
中七の句意を読み解けず。オノマトペではないですよね?


落葉掃き慰労の
山浦けい子
夏井いつき先生より
途中で送信ボタンを押してしまったかな?
途中で送信ボタンを押してしまったかな?


木杓子の味噌の香濃ゆる冬夕焼
戸村友美
夏井いつき先生より
「濃ゆる」とは、「濃し」という意味でしょうか。「味噌の香」が? 「冬夕焼」が?
「濃ゆる」とは、「濃し」という意味でしょうか。「味噌の香」が? 「冬夕焼」が?


マシュマロの溶けてうつた姫の眠り
立川猫丸
夏井いつき先生より
「季語は『うつた姫』です。四季の女神とお菓子の取り合わせはいいなと思い、この一年で四人の姫を読んでみました。こんなふうにテーマを決めて読むのは楽しいですね。〈どら焼きを提げ佐保姫に逢ひにゆく〉人選。〈チョコバナナ手に筒姫と待ち合はせ〉並選。〈かすていら並べ龍田姫の夜会〉人選。並選の筒姫が泣いています……。(筒姫の待ち合はせ』かなぁ。筒姫の句に助言いただけると嬉しいです」と作者のコメント。
四季の女神を俳句にしてみる。なかなかのチャレンジですが、更に「お菓子」しばり! お菓子に詳しくない(あまり興味のない)私にとっては、苦行やろ……と思うばかりです(笑)。この中では、「どら焼き」と「佐保姫」の取り合わせは飄々とした味わいがあると思います。地に推しにくいのは、「逢ひにゆく」の部分。同じように、「かすてら」と「竜田姫」の取り合わせも、どら焼きよりはちょっと上品な感じがあって良いかと思います。が、地に推しにくいのは「~並べ~夜会」の付属情報にやり過ぎ感を持ってしまう点。「チョコバナナ」と「筒姫」は、夏→夜店→チョコバナナのような連想ゲームが見えてしまって、やや興ざめ。今回の「マシュマロ」と「うたつ姫」の取り合わせは、良いのかどうか判断を迷います。「マシュマロ溶けて~眠り」のほうに、ささやかな既視感をもっているせいかもしれません。ひとまず、四女神シリーズ楽しんでください♪
「季語は『うつた姫』です。四季の女神とお菓子の取り合わせはいいなと思い、この一年で四人の姫を読んでみました。こんなふうにテーマを決めて読むのは楽しいですね。〈どら焼きを提げ佐保姫に逢ひにゆく〉人選。〈チョコバナナ手に筒姫と待ち合はせ〉並選。〈かすていら並べ龍田姫の夜会〉人選。並選の筒姫が泣いています……。(筒姫の待ち合はせ』かなぁ。筒姫の句に助言いただけると嬉しいです」と作者のコメント。
四季の女神を俳句にしてみる。なかなかのチャレンジですが、更に「お菓子」しばり! お菓子に詳しくない(あまり興味のない)私にとっては、苦行やろ……と思うばかりです(笑)。この中では、「どら焼き」と「佐保姫」の取り合わせは飄々とした味わいがあると思います。地に推しにくいのは、「逢ひにゆく」の部分。同じように、「かすてら」と「竜田姫」の取り合わせも、どら焼きよりはちょっと上品な感じがあって良いかと思います。が、地に推しにくいのは「~並べ~夜会」の付属情報にやり過ぎ感を持ってしまう点。「チョコバナナ」と「筒姫」は、夏→夜店→チョコバナナのような連想ゲームが見えてしまって、やや興ざめ。今回の「マシュマロ」と「うたつ姫」の取り合わせは、良いのかどうか判断を迷います。「マシュマロ溶けて~眠り」のほうに、ささやかな既視感をもっているせいかもしれません。ひとまず、四女神シリーズ楽しんでください♪


湯沸く音味噌玉選ぶ寒し朝
ちぇりぴー
夏井いつき先生より
「寒し」が「朝」に掛るのであれば、「寒き」となります。
「寒し」が「朝」に掛るのであれば、「寒き」となります。

