第51回「味噌づくり」《ハシ坊と学ぼう!⑬》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
味噌漬けの肉待つ夕餉冬薔薇
紫木蓮
夏井いつき先生より
上五中七を良しとした時、下五の季語「冬薔薇」は動きそうです。最初の一句の作り方から、一歩進めて、季語を主役にするにはどうすればよいか。あるいは、上五中七を踏まえた上で主役となってくれる季語を探す。ステップ2の、筋トレです。
上五中七を良しとした時、下五の季語「冬薔薇」は動きそうです。最初の一句の作り方から、一歩進めて、季語を主役にするにはどうすればよいか。あるいは、上五中七を踏まえた上で主役となってくれる季語を探す。ステップ2の、筋トレです。


味噌搗や無職の夫(つま)のスマホ人(じん)
岡 ミミズク
夏井いつき先生より
「風邪でイライラし、主人とぎくしゃくしている時を俳句にしました」と作者のコメント。
下五「スマホ人」という表現には無理があります。もう一押し、考えてみましょう。
下五「スマホ人」という表現には無理があります。もう一押し、考えてみましょう。


烏賊刺しやちょんと味噌つけ食う伯父と
藤康
夏井いつき先生より
「『烏賊刺し』は、もう生きていない加工された烏賊ですが、夏の季語となりますか? 伯父に連れて行ってもらった店で、とても立派な大きな烏賊の姿造りをご馳走になったことを書きました。そもそも今は冬なので、『熱燗と』にするべきかと、迷いました」と作者のコメント。
作者コメントによると、「とても立派な大きな烏賊の姿造りをご馳走になったこと」を書いたとのことですが、この句の場合、他に季語らしきものがありませんから、読み手は「烏賊」を季語として読み解くでしょう。当季を意識しての「今は冬なので」という躊躇なのだと推測します。俳句では、今の季節を意識することは大切な配慮です。句会などへの投句の場合は、当季を守ることをお勧めしますが、本サイトのように兼題写真から触発された体験が、別の季節の出来事であったということは往々にあり得ます。そのような場合は、ご自分の実体験を大切になさってもよいのではないかと考えます。そういう意味で、本サイトでは、当季ではない季語を使った句についても寛容に受け止めております。
作者コメントによると、「とても立派な大きな烏賊の姿造りをご馳走になったこと」を書いたとのことですが、この句の場合、他に季語らしきものがありませんから、読み手は「烏賊」を季語として読み解くでしょう。当季を意識しての「今は冬なので」という躊躇なのだと推測します。俳句では、今の季節を意識することは大切な配慮です。句会などへの投句の場合は、当季を守ることをお勧めしますが、本サイトのように兼題写真から触発された体験が、別の季節の出来事であったということは往々にあり得ます。そのような場合は、ご自分の実体験を大切になさってもよいのではないかと考えます。そういう意味で、本サイトでは、当季ではない季語を使った句についても寛容に受け止めております。


葱汁や五臓六腑に染み渡る
ズッキーニン
夏井いつき先生より
「五臓六腑に染み渡る」という慣用句に頼らず、この肉体感覚をあなた自身の言葉にしてみましょう。そのためには、まずは美味しくて熱い「葱汁」を食べてみましょう。物を食べるのも季語の現場に立つ吟行です。
「五臓六腑に染み渡る」という慣用句に頼らず、この肉体感覚をあなた自身の言葉にしてみましょう。そのためには、まずは美味しくて熱い「葱汁」を食べてみましょう。物を食べるのも季語の現場に立つ吟行です。


曼荼羅や火棚に下がる味噌玉百連
八一九
夏井いつき先生より
「火棚に下がる味噌玉百連」の光景だけで、十分に俳句になるだけの材料があります。上五は、その様子が「曼荼羅」みたいだなということを書きたかったのだろうと思いますが、それは読者の感想として書かないでおいてあげるのも、俳句のコツ。中七下五をゆったりと十七音にしてみましょう。佳句になりますよ。
「火棚に下がる味噌玉百連」の光景だけで、十分に俳句になるだけの材料があります。上五は、その様子が「曼荼羅」みたいだなということを書きたかったのだろうと思いますが、それは読者の感想として書かないでおいてあげるのも、俳句のコツ。中七下五をゆったりと十七音にしてみましょう。佳句になりますよ。


朴葉味噌の炭火幽らむ雨の宿
生石子
夏井いつき先生より
「幽らむ」は何と読ませたいのかなあ……?
「幽らむ」は何と読ませたいのかなあ……?


炊き出しの味噌香りけりラグビー場
つーじい
夏井いつき先生より
「ラグビー場」という場所が面白いですね。味噌汁の炊き出しであれば、「炊き出しの味噌汁香る」としたほうが、より正確に伝わります。
「ラグビー場」という場所が面白いですね。味噌汁の炊き出しであれば、「炊き出しの味噌汁香る」としたほうが、より正確に伝わります。


校舎より「第九」聞こえし冬日和
コミマル
夏井いつき先生より
「中学校の脇を通ったら、音楽室でリコーダーの合奏の練習をしていました。曲は『よろこびの歌』。その歌詞のように晴れた青空が広がっていました」と作者のコメント。
今、聞こえているのならば、「聞こゆる」ですね。「し」は過去の助動詞「き」の連体形になります。更に、「校舎より『第九』」と書けば、それは聞こえているのだと分かりますね。
「中学校の脇を通ったら、音楽室でリコーダーの合奏の練習をしていました。曲は『よろこびの歌』。その歌詞のように晴れた青空が広がっていました」と作者のコメント。
今、聞こえているのならば、「聞こゆる」ですね。「し」は過去の助動詞「き」の連体形になります。更に、「校舎より『第九』」と書けば、それは聞こえているのだと分かりますね。


曾祖母のちゃんちゃんこと言う大根汁
小泉れもん
夏井いつき先生より
「私の母方の曾祖母は岩手でも雪深い村に住んでいる人でした。晩年はうちで過ごしました。怖くて近寄りづらい人でしたが私が小さいときは味噌汁を作ってくれたりしてました。そんな時に大根の千切りの味噌汁を、ちゃんちゃんこのおつゆだよと言って出してくれたのです。大人になってから他の家族とか友人に聞いても、ちゃんちゃんこという言い方は知らないと言われ続けています。でもどうしても忘れられない言葉です」と作者のコメント。
「ちゃんちゃんこ」は別の意味の季語でもあるので、「ちゃんちゃんこ=大根の味噌汁」だというのは、伝わりにくいでしょう。エッセイのネタとしては面白いけれど、俳句としては少々無理のある句材というところでしょうか。
「私の母方の曾祖母は岩手でも雪深い村に住んでいる人でした。晩年はうちで過ごしました。怖くて近寄りづらい人でしたが私が小さいときは味噌汁を作ってくれたりしてました。そんな時に大根の千切りの味噌汁を、ちゃんちゃんこのおつゆだよと言って出してくれたのです。大人になってから他の家族とか友人に聞いても、ちゃんちゃんこという言い方は知らないと言われ続けています。でもどうしても忘れられない言葉です」と作者のコメント。
「ちゃんちゃんこ」は別の意味の季語でもあるので、「ちゃんちゃんこ=大根の味噌汁」だというのは、伝わりにくいでしょう。エッセイのネタとしては面白いけれど、俳句としては少々無理のある句材というところでしょうか。


着ぶくれてラーメン湯気が全視界
田上南郷
夏井いつき先生より
「三段切れがよくわかりません。〈着ぶくれてラーメンの湯気全視界〉とすると三段切れでしょうか?」と作者のコメント。
「三段切れ」は、用言の終止形や切字などで、意味が三か所切れてしまうことを指します。この句の場合は、「着ぶくれて」と終止形ではない形で繋がっていきますので、いずれにしても、三段切れではありません。
「三段切れ」は、用言の終止形や切字などで、意味が三か所切れてしまうことを指します。この句の場合は、「着ぶくれて」と終止形ではない形で繋がっていきますので、いずれにしても、三段切れではありません。


みそ汁のふと恋しきや新入生
パキラ
夏井いつき先生より
「『恋しきや』の『き』の使いかたは、これでいいでしょうか?」と作者のコメント。
「恋しき」は連体形ですから、「恋しき」と「や」の間に「~こと」等の言葉が省略されていると受け止めることはできます。ただ、この句の場合は、「ふと」の二音は不要ですから、そこも含めて語順を再考することをお勧めします。
「『恋しきや』の『き』の使いかたは、これでいいでしょうか?」と作者のコメント。
「恋しき」は連体形ですから、「恋しき」と「や」の間に「~こと」等の言葉が省略されていると受け止めることはできます。ただ、この句の場合は、「ふと」の二音は不要ですから、そこも含めて語順を再考することをお勧めします。

