写真de俳句の結果発表

第52回「ハイカラ横丁」《ハシ坊と学ぼう!⑬》

ハシ坊

「ハイカラ横丁」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

雪だるまアトムの歌を詠ふひと

水鏡新

夏井いつき先生より
谷川俊太郎さんへの追悼句でしょうか。「詠ふひと」という着地、これがベストかどうか、一考してみましょう。
“ポイント”

秋うらら百円追加遊具かな

さち緖

夏井いつき先生より
この「かな」は、効いてないですね。「遊具」の体言止めにしてみてはいかが。
“ポイント”

日脚伸ぶアーチの「スプレイランドロ」

湖七

夏井いつき先生より
「デパートに併設された、子供向け遊園地のアーチに書かれた『プレイランド』を、同じサイズの掠れた『入』と『口』が挟んでいたため、当時我々はここは『スプレイランドロ』なんだと思っていました」と作者のコメント。

このエピソードは面白いのですが、俳句にした時、そこまでは読み解けないかと。句材というよりは、エッセイの題材というべきかな。
“ポイント”

雪合戦受くるつぶては泥の味

水越千里

夏井いつき先生より
「名古屋でも、子供時代には数センチ積雪のある日がありました。夢中に遊んでいるうちに雪に泥が混ざっていきました。口語にするか迷いました。(一ヶ月に二句作るのが苦痛な時期がありましたが、何とかやる気が戻ってきました)」と作者のコメント。

「~味」とするのが得か損か、そこが最後の悩みどころです。例えば、「~つぶてに匂う泥」とした時と、比較してみましょう。
“ポイント”

コイン積み跨ぎしジャケツ肩入り

萌黄多恵

夏井いつき先生より
「いっぱしのバイカーになったつもりのカッコつけた乗り方がゲームをよくするのかしら? 短めのジャケットが効いてます」と作者のコメント。

兼題写真を見てない人にとっては、この句の字面だけでは、場面や状況は読み取れません。内容を詰め込みすぎているので、三句ぐらいに切り分けると、ちょうどよい分量になりそうです。
“参った”

垂る水洟斬るは姑娘(クーニャン)の指

感受星 護

夏井いつき先生より
第49回『ブルガリアの道路』の〈姑娘(クーニャン)の指が切り捨てし水洟〉の推敲句です。『映像として語順を考えなさい』とのアドバイスを有難うございました。自分の頭の映像と内容に齟齬は無いか・本当に印象に残ったものは何か、更に現在形にすることで臨場感の創出、『切り捨て→斬る』などを考えました。かなりスピード感等の違いが出たと思いますが、いかがでしょうか?」と作者のコメント。

描写のトレーニング頑張ってますね。更なる改善点についてのアドバイスを少し。「水洟を斬る」と書けば、垂れているのは言外に分かります。さあ、完成は目の前です。頑張れ!
“ポイント”

初日の出映す神渡り(みわたり)諏訪の湖

天龍蘇人

夏井いつき先生より
「『神渡り』とは、冬季に湖面の氷が対岸に向けて筋状に盛り上がる現象です」と作者のコメント。

「御神渡」も季語になっています。「初日の出」という季語は外して、御神渡の描写に徹してみましょう。
“参った”

くじ箱の口覗く子ら日永かな

一井かおり

夏井いつき先生より
語順を替えると、調べがよくなります。

添削例
日永かな籤箱の口覗く子ら
“ポイント”

クリスマスモグラ叩きに胸がすく

ちくちく慶

夏井いつき先生より
「《ハシ坊と学ぼう!》読ませて頂いています。理解できる時もありますが、理解できない時は悩みます。こんな質問呆れるかもしれませんが、宜しくお願いします。『胸がすく』も『スカーッと』とか『痛快』とか、どれが良いか分からなくなります」と作者のコメント。

今、「理解できない」と思っていることも、来年の今ごろになれば俳筋力は着々と身についています。「理解できる」ことと「理解できない」ことを、整理しておけば、今年の自分と来年の自分の違いが、客観的につかめます。安心して続けて下さい。
さて、下五「胸がすく」と結果を説明するのは、並選ラインの判断です。人選を目指すのならば、「胸がすく」の部分は書かないという判断のもとに、残りの音数をどういう表現に使うか。そこの工夫になります。「クリスマス」も「聖夜」とすれば、三音。まだまだやれることは色々ありますよ。
“ポイント”

寒桜十五年後の事故の傷

加里かり子

夏井いつき先生より
「交通事故を起こしてしまいました(幸い、とても小さな事故でしたが)。それをきっかけに、15年前に起こした事故(これは今回よりも少し大きな事故でした)を思い出し、心の衝撃がしばらく収まりませんでした。トラウマって、時が経ち、もう忘れたと思っていても、また甦るものなんですね」と作者のコメント。

なるほど、そういう「十五年後」なのですね。作者コメントを読めば、納得するのですが、俳句の字面からすると、現在から十五年後? と読めてしまうので、読者の脳は混乱します。その点を再考してみましょう。
“参った”

オリオン座見上げて食らふチョコレート

麦のサワコ

夏井いつき先生より
「昔、塾の帰りに、友達と駄菓子屋によってお菓子を食べて、空を見上げた時に、塾で習ったオリオン座が見えて、大喜びしたのを思い出して詠みました」と作者のコメント。

作者コメントの中の、どの要素が句材として価値があるかというと、「塾で習ったオリオン座が見えて」の部分です。「○○○○や塾で習ったオリオン座」とすれば、八割が完成しています。残りのチャレンジは、「季語ではない言葉を上五に置いて「や」と詠嘆する型」これは、ちょっと難しい型ですが、使いこなせるようになると、取り合わせの幅が広がります。
“ポイント”

風船ガム割れた春が満ちたのか

馬場めばる

夏井いつき先生より
「懐かしい雰囲気の兼題写真から、子供の頃によく食べた柔らかい風船ガムを題材にして詠みました。割れないように大きく大きく慎重に膨らませました。そんなことを思い出していると、あ、風船の中に春が満ちて割れたのかもしれないなと思い、そのまま言葉にしてみました」と作者のコメント。

季語は「春」なので、もう少し軽やかな調べにしてはどうでしょう。例えば……

添削例
風船ガム割れたよ春が満ちてきた
“ポイント”

大掃除障子の穴の楽しけり

西山

夏井いつき先生より
下五「楽し」に「けり」をつける場合は、「楽しかりけり」となります。字余りになってしまいますね。要一考。
“参った”