第36回 俳句deしりとり〈序〉|「うき」③

始めに
出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。


第36回の出題
兼題俳句
ビシソワーズの匙の翳りや桜桃忌 二城ひかる
兼題俳句の最後の二音「うき」の音で始まる俳句を作りましょう。
※「うき」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。
うきは市の白壁白し春愁
レオノーレ・オオヤブ


ウキーアは土器色に夕焼けて
平本魚水
調べてみるとアルゼンチン北部、フフイ州の町、と情報がでてきました。アンデス山脈東部のウマワカ渓谷に存在するそうです。出てくる写真は赤茶けた渓谷がずらーり。異国情緒溢れる迫力に圧倒されます。夕焼けは渓谷の間から一層岩肌の色を濃く灼いているんだろうなあ。「夕焼けて」と切れのない形で終わるのも技ありです。


雨期近し母の忌近し牡丹散る
百瀬はな
雨季遠し湿りの水や霜柱
oo3@呂
雨季を呼ぶアマゾンの木や雲の峰
小川都雪
日本にとっての雨季といえば代表的なのは梅雨ですね。《百瀬はな》さんは牡丹の咲いて散る五月頃、《oo3@呂》さんは霜柱の育つ冬の頃。「湿りの水」はなに由来の水なんだろう。近し・遠しの対比といい、夏と冬という対極にある季節のチョイスといい、比較材料として見比べてみると興味深い。
日本にいるとあくまで「梅雨」の意識が強いから「雨季」といわれてもピンとこない部分があるんですが、《小川都雪》さんの「アマゾン」の雨季は激しそうだなあ。熱帯雨林ってただでさえ高温多雨なイメージですけど、アマゾンの木が雨季を呼ぶ……という文脈で読むと、今は乾いてしまっている? とも想像できます。雨季の前には乾季があって乾いてるとかなのかな??


「ウキキ」とジョージ便座におはす四月かな
源早苗
「ウキキウキッ」だけの台詞や虎落笛
梅田三五
間違いなくかの『おさるのジョージ』……! 原作の絵本は第一巻だけ読んだことあるんだけど、あとはもっぱら育児のお供のテレビアニメで観てましたねえ。黄色い帽子のおじさんの絶対にジョージのこと叱ったりしない聖人君子具合に震えろ。虎落笛くらい震えろ。


右京さんの紅茶の角度なる噴水
ぞんぬ
右京さん紅茶高々春は来る
星瞳花
右京っぽく入れる紅茶や今朝の春
黒田栗まんじゅう
右京ほど細かき人よ春嵐
ひでやん


浮名を流す時もあったな師走
不二自然
浮名とは憂き名の謂ぞ蝶生る
細葉海蘭
浮名とは吾の骸なり冬の海
林 廉子
浮名立つ君よ朧を歩く吾よ
くぅ
浮名流し羚羊の妻六匹目
真夏の雪だるま
浮助のコートに刺繍ふえてをり
葉村直
《葉村直》さんの「浮助」は似ていますが少しニュアンスの違う言葉。遊び歩く男、浮かれ男を指す言葉です。「浮名」と比べると艶めいた匂いが若干薄れ、軽薄そうな洒落者の印象が強まります。派手がましいコートにさらに凝った刺繍なんてして、まったく、なにして稼いでるんだか……なんて呆れた呟きを周りはこぼしてるのかもしれませんねえ。俳諧味のある一句であります。


浮き牌はドラや受験子三面張
爪太郎
浮き牌に疼く臓腑や小晦日
となりの天然水
《となりの天然水》さんは「疼く臓腑や」に勝負のヒリつく実感が籠もっていていいねえ。どんな勝負であれ、こうでなくっちゃ! 「や」の詠嘆が実に効いております。「小晦日」の大げさすぎない取り合わせもグッド。


浮き貸しの職員逮捕休暇明
小田毬藻
浮き貸しのうわさ上役の着ぶくれ
とひの花穂
〈④に続く〉

