写真de俳句の結果発表

第53回「火の山公園のチューリップ」《ハシ坊と学ぼう!④》

ハシ坊

第53回のお題「火の山公園のチューリップ」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

春愁ひ客を待ちたる花屋かな

深山ほぼ犬

夏井いつき先生より
「客を待つ」=「客がいない」=「春愁」というふうに読まれてしまうと、因果関係が匂ってしまいます。敢えて、この取り合わせを成功させるとすれば、もう一工夫が必要になります。例えば……「春愁」を咲かせてみましょうか。

添削例
春愁を咲かせて客を待つ花屋
“ポイント”

春月や「空」の字浮かぶ駐車場

まり

夏井いつき先生より
「『浮かぶ』? 『照らす』でしょうか?」と作者のコメント。

描写ということを考えれば、「浮かぶ」「照らす」以外にもやれることはあります。例えば……「~の字赤き」「~の字灯る」などもその一つ。
“ポイント”

きれいねと花瓶の花に話しかけ

ファビパピ代

夏井いつき先生より
「植物や動物が好きな母は、花瓶に生けたお花が元気でいると『きれいね』と話しかけていたことを思い出しました」と作者のコメント。

「花」は「桜」を指す大きな季語です。
“参った”

二十八センチ砲旅順へ届け春の風

かたじん

夏井いつき先生より
「旅順へ」とあれば、「届け」と書かなくても想像はできます。語順も含めて、一考してみましょう。
“ポイント”

エキスポやへばる花には作り雨

つきみちる

夏井いつき先生より
「35年前、真夏に大阪の花博へ行った時の句です。 炎天下、パビリオンは長蛇の列。人も草花も、暑さでくたばりそうになっているところ、花壇の草花には水が撒かれている(自動散水)のを見て、人にも撒いてほしいと羨ましく思ったことを思いだし、詠みました」と作者のコメント。

「花」は「桜」を指す大きな季語です。
“参った”

おおくさめ恋の予感や花公園

高瀬忠子

夏井いつき先生より
「花」は、「桜」を指す大きな季語です。
“参った”

霊安室の母は春野を旅ゆきけり

ケンケン

夏井いつき先生より
下五は「旅ゆけり」ですね。
“ポイント”

花の咲く砂利道をゆくランドセル

サマッケニコ

夏井いつき先生より
「ランドセルが初登校。傍には花畑、足元は砂利道。がんばれ! がんばれ!」と作者のコメント。

「花」は、「桜」を指す季語です。花壇を言いたいのならば、そこに咲いている花を書きましょう。一般的な植物のほとんどが季語になってますから。
“ポイント”

チューリップチューしてリップ並ぶ頬

パンダスミレ

夏井いつき先生より
「駄洒落です。が、可愛くまとまったので投稿させてください。照れて二人とも正面を向いたので『並ぶ頬』と、『並んだ』の歌詞です(笑)」と作者のコメント。
 

うーむ……残念ながら、かなりよくある駄洒落です。

“ポイント”

シェルターに潜みて春を待ってをり

新米一念

夏井いつき先生より
「初投稿です。戦禍の国の人たちの心境を想像して詠みました」と作者のコメント。

「シェルターに」と書けば、潜んでいる、隠れていることは分かります。十七音しかない俳句ですから、意味の重複をさけることは有効なテクニックです。
“ポイント”

チューリップ花の絨毯川流れ

吉川ゆふみ

夏井いつき先生より
「兼題写真の中の紫色のパンジーが絨毯のように見え、ネモフィラの花が川の流れのように見えた事を詠みました」と作者のコメント。

群れ咲くそれぞれの花を「絨毯」と喩え、「川」と喩えています。が、たった十七音の中に二つの比喩を入れ込むと、お互いを殺します。
“参った”

花の山土を見る子を高く抱く

るう

夏井いつき先生より
「土を見る子」を高く抱き上げた? というのは、どういう状況なのでしょう。
“ポイント”

チューリップ園やトルコ行進曲

黎明

夏井いつき先生より
「チューリップ」と「トルコ行進曲」を取り合わせると、残る音数はわずか。そこで、自分なりのオリジナリティを書けるかどうか。勝負はそこです。
“参った”

並ばせてチューリップみな空見てる

気仙椿

夏井いつき先生より
もう一句、上五だけを替えている句が投句されてました。二句しか投句できませんので、上五を悩んでいることを作者コメント欄に記入して、どちらか一句を投句することをお勧めします。どちらの上五がよいのか、まずは自分なりの答えを考えてみることが、有効な俳筋力のトレーニングになります。
“ポイント”

日の土の利他が実りやラーレ咲く

古都 斗織

夏井いつき先生より
「兼題の火の山公園を調べたところ、チューリップ園の名の由来を知り、その2つの歴史的事実は知っていたのですが、それを讃える場所がある事に心が震えました。なので『日=日本』や『土=土耳古=トルコ』など、私なりに意味を込めていますが、それが分からなくても意味が通るようにできたと思います。心配は『ラーレ=トルコ語でチューリップ』が季語ととって頂けるか、という所です」と作者のコメント。

「咲く」とあるので、「ラーレ」は花の一種だと分かりますので、調べようと思う人は「チューリップ」だというところまでは辿り着けます。が、「日の土の利他が実りや」このフレーズは、解読は難しいです。俳句は書かれた文字面が全てですから、「日」も「土」も文字通りにしか読めません。
“ポイント”

帽発たぬ働蜂やずる休み?

太井 痩

夏井いつき先生より
「蜜蜂は春先、他の虫に先んじて活発になるそうです。しかしどの群でも人間と同じように、約一割はすぐサボるヤツが混じっているらしいのです。以前京都フラワーセンターで弁当を食べた際、他の蜂がせっせと飛び回る中、食事が終わるまで私が脱いだ帽子の上でじっとしていた一匹が居ました」と作者のコメント。

「帽発たぬ」が、帽子に止まっている様子なのですね。「ずる休み?」と書いてしまうのではなく、この部分の読者の感想として残しておいてあげるべき。「帽子」であることと、そこに止まったままの「働き蜂」がいることだけを映像として描写しましょう。
“ポイント”