写真de俳句の結果発表

第53回「火の山公園のチューリップ」《ハシ坊と学ぼう!⑥》

ハシ坊

第53回のお題「火の山公園のチューリップ」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

飛び込むボールや花壇のチューリップ

飛来 英

夏井いつき先生より
調べが少々モタモタしてます。内容に合わせた調べを工夫したいですね。

添削例
ボール飛び込んで花壇のチューリップ
“ポイント”

瀬戸内に航跡永き風光る

春待ち女

夏井いつき先生より
上五の助詞「に」は散文的な使い方。この助詞をどう変えるかによって、中七「永き」が「永し」となるか「永く」となるか、選択肢が広がります。
“ポイント”

よろこびをくるむ形よチューリップ

伊藤 恵美

夏井いつき先生より
チューリップの有名な句で〈チューリップ喜びだけを持つてゐる 細見綾子〉があります。先行句としてはかなり偉大ではありますが、中七「くるむ形よ」を更に工夫してみる必要はあります。
“ポイント”

〝ひまわり公園〟添う秋桜華やぐ

佐藤  啓蟄

夏井いつき先生より
「公園」の名前とはいえ、「ひまわり」と「秋桜」が一句に同居するのは、お互いを殺し合ってしまいます。一考をお勧めします。
“ポイント”

放ったらかしの球根咲ひて小さき春

香亜沙

夏井いつき先生より
「咲く」はカ行の動詞ですから、「咲ひ」にはなりません。「咲きて」ですね。
“参った”

チュ_リップ花びら自在のたおやかに

井上玲子

夏井いつき先生より
「改良で色、花びらが多彩なのを知りました」と作者のコメント。

後半「自在のたおやかに」は感じたことです。チューリップのどんな様子がそう感じさせたのか。その映像を描写する練習をしていきましょう。
“ポイント”

チューリップ畑を出でて伸びる髭

四條たんし

夏井いつき先生より
後半のフレーズでやろうとしていることは分かりますが、そうなってくると、季語は「チューリップ」なのだろうかと、そっちのほうが気になります。
“参った”

初旅やバザールの塩売りは快弁

央泉

夏井いつき先生より
第45回『ニースの塩』《ハシ坊と学ぼう!④》の〈初旅や料理自慢が選りき塩〉を推敲しました。『初旅』と『塩』の取り合わせはまだできていませんが、塩売りが色々と塩のことや、それに関するうんちく等を旅人に話す様子を、季語『初旅』と取り合わせてみました」と作者のコメント。

中七は極力七音に整えるのが定石。「塩売り」という表現で、市のような場所が想像できますから、その辺りも含めて、再考してみましょう。
“ポイント”

チューリップの道友亡くし日の記憶

栗の坊楚材

夏井いつき先生より
音数調整をしたいところです。

添削例
チューリップ友を亡くせし日の記憶
“ポイント”

‘たいせつ’をそっと包んでいるよにチューリップ

うっとりめいちゃん

夏井いつき先生より
この場合は、「いるよに」と比喩にするよりは、包んでいると言い切ったほうが、詩としての純度があがります。

添削例
「たいせつ」をそっと包んでチューリップ
“ポイント”

チューリップ重力に開き落ちたる

むらのたんぽぽ

夏井いつき先生より
「一物仕立てに挑戦。チューリップの花弁は開いてくると重たそうです。その感じが出したくて調べを5-5-7にしました。 効果が出ているでしょうか」と作者のコメント。

語順は逆でしょう。

添削例
重力に開きて落ちるチューリップ
“ポイント”

世の欲やさらりと揺れるチューリップ

まさと澄海

夏井いつき先生より
「チューリップと言えばチューリップ・バブルを連想しました。そこから説明的にならないように試行錯誤。俳筋力のトレーニングですが、脱ボンしているでしょうか?」と作者のコメント。

「世の欲や」という詠嘆のほうが、少々強くなっているのが気になります。全体の言葉の質量のバランスを取りたいところです。
“ポイント”

立ち入れぬ展望台に初桜

ぴん童子

夏井いつき先生より
「展望台はガラスが割れて閉鎖中、老朽化と利用者数の減少で復旧は定かでないとか、ネット情報が寂しいです。でも、花は今年も変わらず咲くはず。百花繚乱見てみたいです」と作者のコメント。

中七の助詞「に」を一考して下さい。
“参った”

ドクターイエローの引退や惜別の冬

中山白蘭

夏井いつき先生より
「JR東海の新幹線のお医者さん『ドクターイエロー』が、老朽化のため、2025年1月29日に引退したので詠んでみました」と作者のコメント。

「引退」に対して「惜別」が近いですね。どちらか一つに。
“ポイント”

チューリップ畑の平方根は愛

カワウソノ介

夏井いつき先生より
「チューリップ」という季語に対して、「平方根は愛」という詩語の取り合わせには、惹かれます。ただ「チューリップ畑の平方根」と繋がると、句意を読み解くのが難しい。
“参った”

黃チューリップ一片ペキリと剥がれ落つ

ひょんすけ

夏井いつき先生より
「ペキリ」というオノマトペに真実味があります。この句想に対して、「黃」という色が必要かどうか、一考する余地はありそうです。
“ポイント”

春愁や画像に影のまた増えり

仲間英与

夏井いつき先生より
「増ゆ」は、ヤ行下二段なので、完了の助動詞「り」には接続できません。(サ行変格活用の未然形、四段活用の命令形のみ接続できます。)「増えぬ」とするか、「増えて」とするか。二択ぐらいが無難でしょう。
“ポイント”

冬ざるる「造反有理」のレンガかな

ばちゃ

夏井いつき先生より
第50回『雪の赤れんが庁舎』《ハシ坊と学ぼう!⑧》〈虎落笛レンガ剥がして投げた日も〉 の推敲句です。『この書き方だと、子供の頃の懐かしいケンカのイメージ』とのアドバイスに『確かに』と苦笑してしまいました。ご指導ありがとうございました。学生運動が盛んだったころ、『造反有理』というスローガンがありました。ニュースを見ながら、煉瓦を投げる勢いで怒っている、今の自分にも通じる一句になったのではないかと」と作者のコメント。

良い方向に推敲が進んでますね。この句の内容でしたら「かな」という切字はそぐいません。「レンガ」の体言止めにすれば、着地がきっぱりとします。

添削例
冬ざれや「造反有理」たるレンガ
“ポイント”