第53回「火の山公園のチューリップ」《ハシ坊と学ぼう!⑫》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
鬱金香開けよ地獄に逢ひたき人
沼野大統領
夏井いつき先生より
「チューリップの傍題『鬱金香』を使う上で、①チューリップの描写、②『鬱』という単語の入っている意義を意識しました。垂直に半開きで咲くチューリップは、地の底へ繋がっているように見えました。地獄にいったとされる人にも想う気持ちがあるということを詠みました」と作者のコメント。
今回は、気合が入り過ぎているようです。「チューリップは、地の底へ繋がっている」という感覚はよいのですが、「地獄に逢ひたき」とまで書くと、こちらのフレーズの言葉の質量がグッと重くなって、バランスが崩れます。
「チューリップの傍題『鬱金香』を使う上で、①チューリップの描写、②『鬱』という単語の入っている意義を意識しました。垂直に半開きで咲くチューリップは、地の底へ繋がっているように見えました。地獄にいったとされる人にも想う気持ちがあるということを詠みました」と作者のコメント。
今回は、気合が入り過ぎているようです。「チューリップは、地の底へ繋がっている」という感覚はよいのですが、「地獄に逢ひたき」とまで書くと、こちらのフレーズの言葉の質量がグッと重くなって、バランスが崩れます。


チューリップ解体を待つ芝居小屋
山本美奈友
夏井いつき先生より
中七下五のフレーズを良しとした時、上五の季語は色々に動きます。この季語が、作者の描きたいものとしてベストなのか。そこがちょっと気になります。
中七下五のフレーズを良しとした時、上五の季語は色々に動きます。この季語が、作者の描きたいものとしてベストなのか。そこがちょっと気になります。


眠りたるホフマン窯を蔦紅葉
神無月みと
夏井いつき先生より
「第50回『雪の赤れんが庁舎』《ハシ坊と学ぼう!③》〈蔦纏いホフマン窯の眠りたる〉を推敲しました。一旦『ホフマン窯』を外して詠み直してみましたが、イメージが窯から離れることが出来ず、ここに戻ってしまいました」と作者のコメント。
初案から「纏い」という動詞を外すことが大事な判断です。どの季節の季語にするかという判断は、作者に任されるものではありますが、例えば上五を「青蔦や」と詠嘆するだけでもOKかと。
添削例
青蔦やホフマン窯の眠りたる
「第50回『雪の赤れんが庁舎』《ハシ坊と学ぼう!③》〈蔦纏いホフマン窯の眠りたる〉を推敲しました。一旦『ホフマン窯』を外して詠み直してみましたが、イメージが窯から離れることが出来ず、ここに戻ってしまいました」と作者のコメント。
初案から「纏い」という動詞を外すことが大事な判断です。どの季節の季語にするかという判断は、作者に任されるものではありますが、例えば上五を「青蔦や」と詠嘆するだけでもOKかと。
添削例
青蔦やホフマン窯の眠りたる


福耳の男の腕にチューリップ
一井かおり
夏井いつき先生より
「可憐なチューリップと、福耳の恰幅のよい男のアンバランス感を出せればと思いました」と作者のコメント。
「福耳」と「チューリップ」の取り合わせにしたいのならば、「男」と書くことに拘らないほうがよいでしょうし、「腕に」と無理やりチューリップを映像的に絡めなくてもよいでしょう。取り合わせるだけで、効果は十分にあります。
「福耳」と「チューリップ」の取り合わせにしたいのならば、「男」と書くことに拘らないほうがよいでしょうし、「腕に」と無理やりチューリップを映像的に絡めなくてもよいでしょう。取り合わせるだけで、効果は十分にあります。


契約は満期花後のチューリップ
梅田三五
夏井いつき先生より
取り合わせはよいです。「花後の」という表現だけ再考してみましょう。人選は目の前です。
取り合わせはよいです。「花後の」という表現だけ再考してみましょう。人選は目の前です。


意を決して肛門絞りチューリップ
Steve
夏井いつき先生より
取り合わせの意図が、掴みかねます。


遠足の子ら等分しロープウェイ
蜘蛛野澄香
夏井いつき先生より
「ロープウェイの入り口。引率の先生が、遠足の子を10人ずつに均等に割り振り、一台一台に乗せてゆきます」と作者のコメント。
語順を逆にすれば、人選です。
添削例
ロープウェイ遠足の子ら等分し
「ロープウェイの入り口。引率の先生が、遠足の子を10人ずつに均等に割り振り、一台一台に乗せてゆきます」と作者のコメント。
語順を逆にすれば、人選です。
添削例
ロープウェイ遠足の子ら等分し


エラスムス像の縁や初電話
落花生の花
夏井いつき先生より
「考古学者だった曽祖父が発見したエラスムス像が、100年ぶりに東京国立博物館から里帰り。講演会もあると知り、普段ご無沙汰中の大叔母や、我が家がオランダ旅行をするきっかけとなった友人(ご主人がオランダ人)にも電話して、旧交を温めることが出来ました」と作者のコメント。
なるほど、そういうことですか。作者コメントに書かれた出来事全部を十七音に入れ込むのは、難しいですね。句材を小さく切り取って、十句ぐらいにしてみましょう。まずは、考古学者の曽祖父のことから。
「考古学者だった曽祖父が発見したエラスムス像が、100年ぶりに東京国立博物館から里帰り。講演会もあると知り、普段ご無沙汰中の大叔母や、我が家がオランダ旅行をするきっかけとなった友人(ご主人がオランダ人)にも電話して、旧交を温めることが出来ました」と作者のコメント。
なるほど、そういうことですか。作者コメントに書かれた出来事全部を十七音に入れ込むのは、難しいですね。句材を小さく切り取って、十句ぐらいにしてみましょう。まずは、考古学者の曽祖父のことから。


欲望の花流れたる山居村
春霞
夏井いつき先生より
「チューリップは球根をそだてるため、花は切ります」と作者のコメント。
「花」は、俳句の世界では「桜」を意味する季語です。
「チューリップは球根をそだてるため、花は切ります」と作者のコメント。
「花」は、俳句の世界では「桜」を意味する季語です。


赤れんが吹雪も抉る痛む傷
野山めぐ
夏井いつき先生より
「第50回『雪の赤れんが庁舎』で《ハシ坊と学ぼう!》でアドバイスをいただいた句を推敲してみました。『吹雪も抉る』と推敲しましたが、他にも言葉があったのではないかと考えております」と作者のコメント。
推敲句を再度投句する時は、推敲前の句も書き添えて下さいね。
さて、この句ですが、「吹雪が抉る傷」とすれば「痛む」と書かなくても十分に痛いですね。上五「赤れんが」と「傷」との関係が分かり難いので、そのあたりを一考してみましょう。
「第50回『雪の赤れんが庁舎』で《ハシ坊と学ぼう!》でアドバイスをいただいた句を推敲してみました。『吹雪も抉る』と推敲しましたが、他にも言葉があったのではないかと考えております」と作者のコメント。
推敲句を再度投句する時は、推敲前の句も書き添えて下さいね。
さて、この句ですが、「吹雪が抉る傷」とすれば「痛む」と書かなくても十分に痛いですね。上五「赤れんが」と「傷」との関係が分かり難いので、そのあたりを一考してみましょう。


甘辛や5本採血チューリップ
あんこ
夏井いつき先生より
「五本採血」と「チューリップ」の取り合わせはよいのですが、上五「甘辛や」をどう読み解くのか、悩ましいです。
「五本採血」と「チューリップ」の取り合わせはよいのですが、上五「甘辛や」をどう読み解くのか、悩ましいです。


凛と立つ呪縛や赤きチューリップ
細川 鮪目
夏井いつき先生より
「チューリップ」のような形状の植物に対して、「凛と立つ」という表現はありがちです。ここを一考すれば、人選への扉が開けます。
「チューリップ」のような形状の植物に対して、「凛と立つ」という表現はありがちです。ここを一考すれば、人選への扉が開けます。


会場の傾性ブーケチューリップ
早霧ふう
夏井いつき先生より
「昔友人のコンサートにチューリップの蕾の花束を持参しました。ホールへ入った途端、チューリップの花が全開、垂れてみっともなくなりました。ショックでした。今回の句作で、チューリップの熱傾性を知りました」と作者のコメント。
やろうとしていることは面白いと思います。ただ、「会場の傾性」という表現で、チューリップの熱傾性だと理解させるのは、少々無理がありそうです。
「昔友人のコンサートにチューリップの蕾の花束を持参しました。ホールへ入った途端、チューリップの花が全開、垂れてみっともなくなりました。ショックでした。今回の句作で、チューリップの熱傾性を知りました」と作者のコメント。
やろうとしていることは面白いと思います。ただ、「会場の傾性」という表現で、チューリップの熱傾性だと理解させるのは、少々無理がありそうです。


花よりも青葉を好むひととゐて
あおい
夏井いつき先生より
中七下五のフレーズはよいので、上五を一考してみましょう。「花よりも」と書かなくても、中七下五でその意味はちゃんと伝わります。上五を「○○○○や」とでもして、どんな場所なのか、どんな天候なのか、それらの情報を入れてみましょう。
中七下五のフレーズはよいので、上五を一考してみましょう。「花よりも」と書かなくても、中七下五でその意味はちゃんと伝わります。上五を「○○○○や」とでもして、どんな場所なのか、どんな天候なのか、それらの情報を入れてみましょう。

