第53回「火の山公園のチューリップ」《天》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

天
第53回
チューリップ閉づ海峡は7ノット
ならば粒あん
チューリップは夕暮れになると、カップのような花を閉じます。その事実を知っていれば、知識を持っていれば「チューリップ閉づ」という措辞は、難なく思い付くかもしれません。
が、この句の後半「海峡は7ノット」という展開は秀逸です。光景が広がるのは勿論ですが、この一句の季語の現場は、海峡の近くの公園であり、春の夕であり、潮の匂いもしてくるに違いないと、様々に光景が浮かんできます。
「7ノット」がどのくらいの速さなのか、調べてみました。ある水産高校の「校長室だより」によると「1ノットは、1時間に1マイル(約1,852m)航走する速力です。水産高校で見るような手こぎのカッター(大型のボート)は、こぎ手にもよりますが、約4ノットの速さが出るそうです。少し頑張って歩く速さくらいでしょうか。7ノットなら、一生懸命漕いでも後退することになります」とのこと。かなり速い潮の流れなのですね。
チューリップが閉じてしまった海浜公園の夕景。潮流表示の電光掲示板が見えているのかもしれません。ひょっとすると潮の流れが変わってくる頃なのかもしれません。明日はまた開いてくるであろうチューリップの花壇を思いつつ、海峡の夕景に心を泳がせる。そんな作品でした。

