写真de俳句の結果発表

第54回「パンダと観覧車」《ハシ坊と学ぼう!⑤》

ハシ坊 NEW

「パンダと観覧車」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

ソーラーパネル電気草むらで昼寝のパンダさん

洲青

夏井いつき先生より
ちょっと長すぎますね。まずは、十二音のフレーズ作りから練習してみましょう。
“参った”

春愁やひとり見つめる大きな輪

月美 樂山

夏井いつき先生より
俳句の字面だけでは、「大きな輪」が観覧車だとは読めないのではないかと。
“ポイント”

春の土日向の隠居牌の音

雨不凍

夏井いつき先生より
「春になると、老人仲間が集まって畑の空きスペースに机を出して麻雀をしている。そんな田舎で育ちました」と作者のコメント。

〈春の土/日向の隠居/牌の音〉斜め線のところに意味の切れ目があるので、三段切れになります。「春の土」を季語とするよりは、「日向」の部分に季語の働きを加えたほうが(例:春日和、春日向)、描写しやすいかもしれません。
“参った”

山笑うわしわし喰らふぱんだかな

林雪

夏井いつき先生より
「Youtubeで、パンダが笹をもぐもぐ食べる様子を見て作りました。時間をかけて推敲したので、この句の方を添削して頂けると嬉しいです」と作者のコメント。

「わしわし」というオノマトペは佳いですね。この句の内容に対して、「かな」という詠嘆はそぐわないので、語順を替えたほうが良いでしょう。

添削例
わしわしと喰らふパンダや山笑ふ
“ポイント”

道化めくパンダ七本指に春

藻玖珠

夏井いつき先生より
「最近の研究で、パンダに7本目の指があることがわかったそうです」と作者のコメント。

この句材は佳いですね。上五「道化めく」と比喩にもってこないで、その事実を淡々と描くほうが、「春」という季語が生きてきます。
“参った”

ゆっくりと時間流れる冬の元

こもれび

夏井いつき先生より
一句に映像がないので、鑑賞の取っ掛かりがなく、読者は少々困惑します。下五「冬の○○」という季語も沢山ありますから、まずは映像のある季語を取り合わせてみましょう。
“参った”

檻の犀泥だらけ小鳥動じず

駆大

夏井いつき先生より
「動物園で、檻の中でサイが動き回っていても、足下で遊び続ける小鳥の様子を句にしました」と作者のコメント。

描こうとしている光景、目の付け所はとてもよいです。あとは描写ですね。「小鳥動じず」と説明するのではなく、小鳥の動きを描写してみましょう。
“ポイント”

咀嚼音ひびくパンダ舎筍流し

佐藤儒艮

夏井いつき先生より
「パンダ→竹→筍流しを使って一句! です。〈パンダ舎出づ筍流しにほひだす〉〈筍流しパンダ舎へ列流れだす〉〈筍流しパンダ舎一分出れば池〉どれも上野動物園、雨の前の重い風に獣臭が、という発想です。うーん……一番心に残った見学の人の静けさと、ガシュガシュ豪快に笹を齧る音に絞りました」と作者のコメント。

連想の流れは分かるのですが、季語は動きそうです。
“参った”

熊猫の尾や逃水の濁さるる

内藤羊皐

夏井いつき先生より
「熊猫の尾」と「逃水」の距離感に対して、多少の違和感をもってしまいました。
“参った”

三月パンダ白くないところが黒い

梵庸子

夏井いつき先生より
やろうとしていることは面白いのですが、季語「三月」が生きているのかどうか。少々不安です。
“参った”

桜東風くるくるじやれるパンダかな

満る

夏井いつき先生より
取り合わせは軽やかでいいですね。下五「かな」はあまり効いてないので、「かな」を外しての着地を考えてみましょう。
“参った”

朝刊抱く爺ちゃんとろん君子蘭

あすかきょうか

夏井いつき先生より
第52回『ハイカラ横丁』〈縁側の爺ちゃんとろん君子蘭〉の推敲句です。ハシ坊でのご指導ありがとうございます。場所の情報を一考、とのご指導いただきましたので、爺ちゃんの様子を描いてみました。『ん』の韻律は活かしたかったので、『新聞』か『朝刊』としたいと思い、朝という時間を特定しました」と作者のコメント。

まずは第一段階、「朝刊抱く爺ちゃん」で時間と動作や場所などが一気に描けましたね。中七「とろん」ですが、「朝刊」で朝という時間が分かると、爺ちゃんもまだ眠くて「とろん」なのかなと。むしろ、主役となってほしい「君子蘭」の描写に、この三音を使うのも一手です。
“参った”

野に遊ぶベースボールの人遠し

広島 しずか80歳

夏井いつき先生より
「ベースボールの人遠し」というフレーズは、子規の句にあります。上五の季語は「夏草や」ですね。偶然同じフレーズの句が出来上がることは、短詩系文学の宿命です。こんな時は、子規と同じフレーズを思いつくことができた! と、自分を褒めてから、潔くその句を捨てる。それでよいのです。
“参った”

動かないパンダ見る子ラムネの子

広島 しずか80歳

夏井いつき先生より
「~見る子」「ラムネの子」の間に、助詞「と」を入れれば、人選です。
“参った”

曇天の鉄柱硬し啄木忌

加納ざくろ

夏井いつき先生より
「鉄柱」と「啄木忌」の取り合わせはいけると思います。ただ、「曇天の」の必然性や、「硬し」は言わずもがなではないか等、多少気になる点があります。
“参った”

蒼々と夏芝パンダてふ濁点

泉楽人

夏井いつき先生より
目の付け所は面白いと思います。「夏芝」に対して「蒼々」という字を選んでいますが、ここにささやかな違和感があります。「蒼」の色のニュアンスを調べてみましょう。
“ポイント”

ゴンドラの吸はれ雪割り桜かな

ノアノア

夏井いつき先生より
「歳時記には無かったのですが、『雪割り桜』という言葉が素敵すぎてどうしても使いたかったので、観覧車に乗った時の景色に吸い込まれて行くような感覚で表現しました」と作者のコメント。

綺麗な言葉ですね「雪割り桜」。この抜き差し難い季語との出会いを、ライフワークにして下さい。すぐに一句にしなくてもよいです。時間をかけて取り組んで下さい。
“ポイント”

春愁の笹喰うパンダ目の怖し

小笹いのり

夏井いつき先生より
「~怖し」までいうのならば、「春愁」が付きすぎになります。「春愁」を生かすか、「~怖し」を外したくないか。それによって、推敲の方向性が変わります。
“ポイント”

被曝牛と添う牛飼いの日向ぼこ

一久恵

夏井いつき先生より
第49回『ブルガリアの道路』〈牛飼いは被爆牛連れ日向ぼこ〉の推敲句です。何度も、丁寧にご指導頂き、ありがとうございます。〈被曝牛と牛飼い添うや日向ぼこ〉とも考えたのですが、牛飼いを主体にすると、物語が広がるように思い始めました。中七『添う』では、言い足りないように思います。本当に私の俳筋力では、手に余る句材だったと思い知りました。でも、背伸びした事で、色々勉強になりました」と作者のコメント。

上五の助詞「と」を「に」にすれば、人選です。推敲がんばりましたね。
“ポイント”