第54回「パンダと観覧車」《ハシ坊と学ぼう!⑦》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
春風にどでんとパンダ目を細め
浜 けい
夏井いつき先生より
「アドベンチャーワールドに行ったことがあります。普通の動物と変わらずに、パンダが野外で飼育されていることに驚きました。どでんと音が聞こえるかのように座ったパンダは、春風に目を細めているかのようでした」と作者のコメント。
「春風にどでんとパンダ」という描写は、いかにもパンダらしくて良いです。下五で「目」に焦点を当てたいのならば、語順から考え直すのが無難かもしれません。
「アドベンチャーワールドに行ったことがあります。普通の動物と変わらずに、パンダが野外で飼育されていることに驚きました。どでんと音が聞こえるかのように座ったパンダは、春風に目を細めているかのようでした」と作者のコメント。
「春風にどでんとパンダ」という描写は、いかにもパンダらしくて良いです。下五で「目」に焦点を当てたいのならば、語順から考え直すのが無難かもしれません。


見世物にされて笹喰う春睡や
英曙
夏井いつき先生より
笹を食べること以外することなく、眠くなるのもあたりまえ。春だもの」と作者のコメント。
「笹喰う」から「春睡」への展開が気忙しい感じです。語順を一考してみましょう。その場合、「見世物にされて」と状況を説明する必要はありません。作者コメントの内容を、十七音で書いてみましょう。
笹を食べること以外することなく、眠くなるのもあたりまえ。春だもの」と作者のコメント。
「笹喰う」から「春睡」への展開が気忙しい感じです。語順を一考してみましょう。その場合、「見世物にされて」と状況を説明する必要はありません。作者コメントの内容を、十七音で書いてみましょう。


春風や観覧車みあぐるパンダ
原 唯之介
夏井いつき先生より
この句の内容でしたら、語順は逆かな。
添削例
観覧車みあぐるパンダ春の風
この句の内容でしたら、語順は逆かな。
添削例
観覧車みあぐるパンダ春の風


緑蔭のティータイムパンダ舎は行列
央泉
夏井いつき先生より
音数を整えましょう。「ティータイム」で五音も使っているのが勿体ないです。
音数を整えましょう。「ティータイム」で五音も使っているのが勿体ないです。


AとAを組みて大観覧車春
秋白ネリネ
夏井いつき先生より
目の付け所は面白いと思います。「~を組みて」の部分、もう一工夫ありそうな予感。
目の付け所は面白いと思います。「~を組みて」の部分、もう一工夫ありそうな予感。


モルモット果て涅槃西風観覧車
深紅王
夏井いつき先生より
下五の「観覧車」は、モルモットの遊ぶヤツ? 「果て」は死んだということ? 「涅槃西風」を取り合わせたのは、涅槃が死に繋がるという意図なのでしょうか。作者の意図と言葉の間に少しずつ隙間があります。季語は再考したほうがよいですね。
下五の「観覧車」は、モルモットの遊ぶヤツ? 「果て」は死んだということ? 「涅槃西風」を取り合わせたのは、涅槃が死に繋がるという意図なのでしょうか。作者の意図と言葉の間に少しずつ隙間があります。季語は再考したほうがよいですね。


人だかりに目覚むパンダや初桜
小林 昇
夏井いつき先生より
中七を「目覚むるパンダ」とすれば、人選です。
中七を「目覚むるパンダ」とすれば、人選です。


観梅や床スケルトンの観覧車
旅路
夏井いつき先生より
「スケルトンの観覧車」と書けば、床もそうなのだろうと想像はしてもらえます。「観梅」を季語にしたのは、足元に梅林が見える光景を描きたかったのかな、と。だとしたら、その光景を描写するのがベストです。
「スケルトンの観覧車」と書けば、床もそうなのだろうと想像はしてもらえます。「観梅」を季語にしたのは、足元に梅林が見える光景を描きたかったのかな、と。だとしたら、その光景を描写するのがベストです。


眼下にはさくら君と観覧車に
龍の珠
夏井いつき先生より
「〈眼下には桜観覧車には君と〉〈眼下には桜君と二人の観覧車〉〈観覧車に君と眼下には桜〉などを経て、提出句に決めました。最後の助詞を『観覧車で』とするかどうか迷いましたが、『に』を選びました」と作者のコメント。
推敲を丁寧に重ねていますね。後半を「観覧車に君と」とすれば、余韻が生まれます。
「〈眼下には桜観覧車には君と〉〈眼下には桜君と二人の観覧車〉〈観覧車に君と眼下には桜〉などを経て、提出句に決めました。最後の助詞を『観覧車で』とするかどうか迷いましたが、『に』を選びました」と作者のコメント。
推敲を丁寧に重ねていますね。後半を「観覧車に君と」とすれば、余韻が生まれます。


春寒に順番待ちの観覧車
ごとう真樹
夏井いつき先生より
上五を「春寒や」と切れ字を入れましょう。上五の「に」は散文的になりがちなので、要注意の助詞です。
上五を「春寒や」と切れ字を入れましょう。上五の「に」は散文的になりがちなので、要注意の助詞です。


春一番手を振る子らや観覧車
すみ子
夏井いつき先生より
「春一番」で意味に切れ目があり、「手を振る子らや」の切字で強く切れるので、三段切れです。対処方法は二つ。
①どこか1カ所を繋げる。
②語順を変えてみる。
この句の場合は②。〈観覧車に手を振る子らや春一番〉とすれば、観覧車に乗っている子になりますし、〈観覧車へ手を振る子らや春一番〉とすれば、観覧車に向かって手を振る光景になります。
「春一番」で意味に切れ目があり、「手を振る子らや」の切字で強く切れるので、三段切れです。対処方法は二つ。
①どこか1カ所を繋げる。
②語順を変えてみる。
この句の場合は②。〈観覧車に手を振る子らや春一番〉とすれば、観覧車に乗っている子になりますし、〈観覧車へ手を振る子らや春一番〉とすれば、観覧車に向かって手を振る光景になります。


どうしたの失恋したの春の野や
へばらぎ
夏井いつき先生より
下五の「~や」は難しい型です。この内容でしたら、むしろ上五に「春の野や」としたほうが座りが良いですね。
下五の「~や」は難しい型です。この内容でしたら、むしろ上五に「春の野や」としたほうが座りが良いですね。


春あかね利益計算できません
若宮 鈴音
夏井いつき先生より
季語は動きそうですが、中七下五の呟きは、面白い俳句のタネです。
季語は動きそうですが、中七下五の呟きは、面白い俳句のタネです。


台風や大車輪なる観覧車
蒲公英
夏井いつき先生より
「強風に見舞われる観覧車の観覧席が、体操競技の大車輪のように大きく回る様子を思いました」と作者のコメント。
敢えて大袈裟に表現するというやり方もありはしますが、主役になってほしい「台風」という季語に対して、少々やり過ぎな感じもします。
「強風に見舞われる観覧車の観覧席が、体操競技の大車輪のように大きく回る様子を思いました」と作者のコメント。
敢えて大袈裟に表現するというやり方もありはしますが、主役になってほしい「台風」という季語に対して、少々やり過ぎな感じもします。


猫背だしつり目だし春夕焼のパンダ
神木美砂
夏井いつき先生より
前半のフレーズ楽しいですね。季語「春夕焼」が生きているか否か。最後の判断はここです。
前半のフレーズ楽しいですね。季語「春夕焼」が生きているか否か。最後の判断はここです。


パンダ舎の子の眠りゐる夜の新樹
咲弥あさ奏
夏井いつき先生より
「パンダ舎の」を「パンダ舎に」とすれば、人選です。
「パンダ舎の」を「パンダ舎に」とすれば、人選です。


春寒や突風煽るる観覧車
ビバリベルテ
夏井いつき先生より
中七は、突風が「煽る」のか、観覧車が「煽らるる」のか。そこを明確にしたいところです。風の季語にすると、全体の音数調整が楽になりますが。
中七は、突風が「煽る」のか、観覧車が「煽らるる」のか。そこを明確にしたいところです。風の季語にすると、全体の音数調整が楽になりますが。


愛の日やながら作業のサメ映画
一色 那真呼
夏井いつき先生より
「愛の日」と「サメ」の「映画」の取り合わせは、面白いです。中七の情報はむしろ邪魔な感じがします。
「愛の日」と「サメ」の「映画」の取り合わせは、面白いです。中七の情報はむしろ邪魔な感じがします。

