第54回「パンダと観覧車」《ハシ坊と学ぼう!⑧》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
永き日やB面に針落としけり
山河穂香
夏井いつき先生より
「や」「けり」の切字の重なりは解消したいところです。語順も含めて再考してみましょう。
「や」「けり」の切字の重なりは解消したいところです。語順も含めて再考してみましょう。


爽やかに風とひかりの踊る芝
徳佐津麻似合
夏井いつき先生より
「パンダの足元の芝生に焦点を当ててみました。初夏の気候と芝生の生き生きとして爽やかな風景を詠んでみました」と作者のコメント。
作者コメントに「初夏の気候と芝生の生き生きとして爽やかな風景」とありますが、「爽やか」は秋の季語。季節感を修正して、再考してみましょう。
「パンダの足元の芝生に焦点を当ててみました。初夏の気候と芝生の生き生きとして爽やかな風景を詠んでみました」と作者のコメント。
作者コメントに「初夏の気候と芝生の生き生きとして爽やかな風景」とありますが、「爽やか」は秋の季語。季節感を修正して、再考してみましょう。


ペットボトルの水面見上ぐ病みの春
飛燕
夏井いつき先生より
「ベッドで過ごす時間が長くなり、ふと見上げるとペットボトルの水面がきれいでした」と作者のコメント。
この視点は、とても面白い。あとは、描写の精度の問題なのですが……。
「ベッドで過ごす時間が長くなり、ふと見上げるとペットボトルの水面がきれいでした」と作者のコメント。
この視点は、とても面白い。あとは、描写の精度の問題なのですが……。


旦旦の向日葵の種春を待つ
丸山歩
夏井いつき先生より
「神戸・王子動物園の飼育員さんが旦旦(タンタン)のために向日葵を育て、種を配りました。旦旦は亡くなったけど、きっと今年も向日葵が花を咲かせてくれるでしょう。『向日葵』も季語ですが、種にしたので、明るく前向きな季語を選びました。語順で迷いましたが、下五に旦旦をおさめづらく、この語順にしました」と作者のコメント。
「向日葵の種」に対して「春を待つ」とすると、季感を殺し合います。無季といわれることも含んだ上で、「向日葵の種」として描き直すと、句意もすっきりしてくるかと思います。
「神戸・王子動物園の飼育員さんが旦旦(タンタン)のために向日葵を育て、種を配りました。旦旦は亡くなったけど、きっと今年も向日葵が花を咲かせてくれるでしょう。『向日葵』も季語ですが、種にしたので、明るく前向きな季語を選びました。語順で迷いましたが、下五に旦旦をおさめづらく、この語順にしました」と作者のコメント。
「向日葵の種」に対して「春を待つ」とすると、季感を殺し合います。無季といわれることも含んだ上で、「向日葵の種」として描き直すと、句意もすっきりしてくるかと思います。


観覧車動物園の空の春
水木合歓
夏井いつき先生より
「観覧車」か「動物園」か、どちらか一つでよいと思います。二つとも入れたいのであれば、「動物園の観覧車」とでもすれば、分かりやすくなります。
「観覧車」か「動物園」か、どちらか一つでよいと思います。二つとも入れたいのであれば、「動物園の観覧車」とでもすれば、分かりやすくなります。


麗らかや一人遊びのパンダかな
詠野孔球
夏井いつき先生より
「や」「かな」と切字が重なりました。どちらか一つを外しましょう。
「や」「かな」と切字が重なりました。どちらか一つを外しましょう。


分断色やバク如くのセーター
音羽ナイル
夏井いつき先生より
「初めてマレーバクを見て、バクは存在する動物だと驚いた事、黒白のセーターを着た人を見てバクと思った事、パンダを塗りなさいというクイズに正解者がほぼいなかった事、今回パンダを調べて分断色という言葉を知り、覚えておきたいと俳句を作りました」と作者のコメント。
「分断色」、この句のおかげで新しい言葉を知りました。ありがとう。中七の「バク如くの」という表現は再考の必要があります。
「初めてマレーバクを見て、バクは存在する動物だと驚いた事、黒白のセーターを着た人を見てバクと思った事、パンダを塗りなさいというクイズに正解者がほぼいなかった事、今回パンダを調べて分断色という言葉を知り、覚えておきたいと俳句を作りました」と作者のコメント。
「分断色」、この句のおかげで新しい言葉を知りました。ありがとう。中七の「バク如くの」という表現は再考の必要があります。


ゴンドラに遠吠え届くや朧月
ひーじい
夏井いつき先生より
中七が八音になっています。語順を含めて、音数を調整してみましょう。
中七が八音になっています。語順を含めて、音数を調整してみましょう。


秋麗やランランカンカン連呼す子
川口祐子
夏井いつき先生より
「連呼す」が「子」に係るのであれば、「連呼する」と連体形になります。
「連呼す」が「子」に係るのであれば、「連呼する」と連体形になります。


子パンダの眠りさまたぐクマンバチ
天音
夏井いつき先生より
「クマンバチ」のような生き物の季語は、漢字か平仮名で書くのが定石です。
「クマンバチ」のような生き物の季語は、漢字か平仮名で書くのが定石です。


パンダや菓子食う春日のやぐらかな
希子
夏井いつき先生より
この「や」は、どういう意味で使っているのかなあ……。せめて、下五の「かな」を諦めるべきかも。
この「や」は、どういう意味で使っているのかなあ……。せめて、下五の「かな」を諦めるべきかも。


「いや」と云ふおくれ毛が風に戯る
ゆきまま
夏井いつき先生より
「娘が小さかった頃、遊園地から帰らないと駄々をこねた時、『いや』と言ってそっぽを向いて、夕方の風に後れ毛が頰に踊って、母だっていつまでもあなたを見ていたいと、つい思ってしまったことを思い出しました。どうしても季語を入れられなくて、悩みまくった末、このままにしました」と作者のコメント。
「『いや』と云ふおくれ毛が風に」と書けば「~に戯る」と説明する必要はありません。下五に季語を取り合わせてみましょう。
「娘が小さかった頃、遊園地から帰らないと駄々をこねた時、『いや』と言ってそっぽを向いて、夕方の風に後れ毛が頰に踊って、母だっていつまでもあなたを見ていたいと、つい思ってしまったことを思い出しました。どうしても季語を入れられなくて、悩みまくった末、このままにしました」と作者のコメント。
「『いや』と云ふおくれ毛が風に」と書けば「~に戯る」と説明する必要はありません。下五に季語を取り合わせてみましょう。


着陸の窓に観覧車風ひかる
春花みよし
夏井いつき先生より
「中七が八音になってしまい困りましたが、南紀白浜空港着陸時に白浜アドベンチャーワールドが迫って見えてきて、こんなに近くにあるのだと驚きました。実際は観覧車が見えたかどうか、記憶に無いのですが……」と作者のコメント。
そうですね、中七は字余りにさせないのが定石です。語順を含めて一考してみましょう。助詞「に」を省略できると、音数が整います。
「中七が八音になってしまい困りましたが、南紀白浜空港着陸時に白浜アドベンチャーワールドが迫って見えてきて、こんなに近くにあるのだと驚きました。実際は観覧車が見えたかどうか、記憶に無いのですが……」と作者のコメント。
そうですね、中七は字余りにさせないのが定石です。語順を含めて一考してみましょう。助詞「に」を省略できると、音数が整います。


幸せか園のパンダが欠伸する
松雪柳
夏井いつき先生より
「『パンダが』か『パンダの』か迷いましたが、散文調の『が』の方が少し現代的気分と強さが出るかと思い、こちらにしました。『が』の使い方と共に、ご助言いただければ嬉しいです」と作者のコメント。
もう一句、きちんと季語を入れた句を再投句して下さってます。送信ボタンを押す前に、確認する習慣をぜひ。「が」の問題については、常にケースバイケースですが、この句の場合は「が」というニュアンスが適切でしょう。
「『パンダが』か『パンダの』か迷いましたが、散文調の『が』の方が少し現代的気分と強さが出るかと思い、こちらにしました。『が』の使い方と共に、ご助言いただければ嬉しいです」と作者のコメント。
もう一句、きちんと季語を入れた句を再投句して下さってます。送信ボタンを押す前に、確認する習慣をぜひ。「が」の問題については、常にケースバイケースですが、この句の場合は「が」というニュアンスが適切でしょう。


観覧車手を振る人もない晩夏
おやすみかづき
夏井いつき先生より
上五字余りになりますが、「観覧車へ」とするか「観覧車に」とするかで、作者の位置が明確になります。この句の場合は、そこを丁寧に書いたほうがよいでしょう。
上五字余りになりますが、「観覧車へ」とするか「観覧車に」とするかで、作者の位置が明確になります。この句の場合は、そこを丁寧に書いたほうがよいでしょう。


笹食って生きていけたら五月闇
すかーてぃっしゅ
夏井いつき先生より
上五中七のフレーズはこれで成立。あとは季語の取り合わせだけですね。ここは、作者の意図によります。
上五中七のフレーズはこれで成立。あとは季語の取り合わせだけですね。ここは、作者の意図によります。


黒か白かパンダの尻尾はのどけし
西 山歩
夏井いつき先生より
楽しい句材です。調べを整えれば、人選は目の前です。場合によっては季語の選択も含めて、再考してみましょう。
楽しい句材です。調べを整えれば、人選は目の前です。場合によっては季語の選択も含めて、再考してみましょう。


雪遊びやパンダ神経痛の吾
啓太郎
夏井いつき先生より
「元気に外で雪遊びするパンダ。神経痛により家でおとなしくしてる私」と作者のコメント。
「パンダ」は雪遊びをしている? のであれば、「や」で切るのではなく、「の」とすべきでしょう。
「元気に外で雪遊びするパンダ。神経痛により家でおとなしくしてる私」と作者のコメント。
「パンダ」は雪遊びをしている? のであれば、「や」で切るのではなく、「の」とすべきでしょう。

