写真de俳句の結果発表

第54回「パンダと観覧車」《ハシ坊と学ぼう!⑨》

ハシ坊 NEW

「パンダと観覧車」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

シャチに水かけられ笑顔風光る

出羽泉まっくす

夏井いつき先生より
「笑顔」と書きたいお気持ちは分かりますが、「シャチに水かけられ」という状況に対して季語「風光る」が取り合わせられた段階で、そこには笑顔があるだろうことは想像できてしまいます。この三音の使い方が、人選への道なのです。
“ポイント”

春泥のパンダ獣になりにけり

紫月歪丸

夏井いつき先生より
「〈春泥に野生の感を取り戻す〉んではないか」と作者のコメント。

作者コメントにある「取り戻す」という表現が、この場合は適切なのではないかと。
“ポイント”

春風や迷子札子にパンダ舎へ

林としまる

夏井いつき先生より
「上野動物園です。正門を入った所で迷子札があると知った時の安心感は、なつかしい思い出です」と作者のコメント。

なるほど、そういうことか。ならば、「パンダ舎へ」とこれから行く場所を書くのではなく、「正門」で見つけた「迷子札」を子に掛ける? つける? という光景を描くほうが分かりやすいですね。
“ポイント”

名を忘れ踊る仮面やカルナヴァル

草野ふうこ

夏井いつき先生より
「カルナヴァル」=カーニバルとは、「仮面」をつけて「名を忘れ」て「踊る」ものです。
“ポイント”

梅雨の晴れ間柔く駱駝のバリカン

骨の熊猫

夏井いつき先生より
「蘭州市から贈られた駱駝は、高温多湿な日本では住みづらく、毎年動物園では熱中症対策のため毛を刈ります。そんな日を詠みました」と作者のコメント。

「駱駝のバリカン」という素材がいいですね。調べを整えると、すぐに人選なのですが。季語も含めて、一考してみましょう。
“参った”

雲雀来テーマパークや人の声

山尾政弘

夏井いつき先生より
「雲雀来」で切れて、「~や」の切字で切れますので、三段切れです。
“参った”

黄水仙顔傷だらけの雄獅子

ヨシキ浜

夏井いつき先生より
「パンダと言えば南紀白浜アドベンチャーワールドですが、そこで黄水仙が咲く頃、顔が傷だらけの雄ライオンを見ました。ちょっと可哀想だなと思いました」と作者のコメント。

「顔が傷だらけの雄ライオン」という句材は面白いです。が、上五の季語が主役ではなく添え物になっています。
“ポイント”

涼風やまだら模様に心地よく

竜酔

夏井いつき先生より
「遊園地で、気持ちよく昼寝をしているパンダから孤独感を感じました」と作者のコメント。

俳句の字面だけでは、何の「まだら模様」なのかが読み解けません。
“参った”

パンダより我が子可愛いのどけし日

トリケイ

夏井いつき先生より
「のどけし」が「日」に係っていくのならば、「のどけき」と連体形になります。
“参った”

春疾風砂塵入り込むパンダの毛

わかめ

夏井いつき先生より
中七下五の、目の付け所が良いです。「砂塵」の要素に季語を入れることができそうですから、「春疾風」を外せば更に精密な描写ができます。人選は目の前ですね。
“参った”

なで肩の男メーデーの観覧車

津々うらら

夏井いつき先生より
第36回『廃遊園地』〈凶年やづをんと観覧車落ちた〉で、まぐれの天をいただきました。観覧車は難しく、普段俳句で詠みませんが、先生からの課題だと思い、取り組みました。苦心しましたが納得いくものはできず、残念ですが今の自分の俳筋力を把握できたととらえ、頑張りたいと思います」と作者のコメント。

「メーデーの観覧車」という取り合わせはよいと思います。前半の「なで肩の男」は、男はいかつい肩をしているという類想をひっくり返した類想になっているかな(笑~意味わかりますかね?)前半の展開を再考してみましょう。
“参った”

しゃぼんだま愚痴ひかえめの引継ぎ書

朝野あん

夏井いつき先生より
上五を「引継ぎ書の」として、語順を替えると人選です。

添削例
引継ぎ書の愚痴ひかえめに石鹸玉
“ポイント”

観覧車風光つつ海丸し

ろくろう

夏井いつき先生より
「風光りつつ」とすれば、人選です。
“参った”

揚雲雀あっしは此処で観覧車

風蘭

夏井いつき先生より
「あっし」は、揚げ雲雀なのでしょうか? 観覧車の中にいるのでしょうか?
“参った”

佐尾姫の髪からませて観覧車

充子

夏井いつき先生より
「佐保姫」ですね。「佐保姫」と「観覧車」の取り合わせは、明るくて良いのですが、「からませ」るところまでいくと、ちょっとやりすぎかも。
“ポイント”

のどかなり膝の上もふと蠢きて

トヨとミケ

夏井いつき先生より
膝の上で何が蠢いているのでしょう? そこがイマイチ分かりません。
“ポイント”

春の日だっこするパンダ児の宝

雫心

夏井いつき先生より
全体が片言になっていて、誰がなにをだっこしているのかが、曖昧です。パンダの親がパンダの子をだっこしているのではないかと推測はしますが、下五「児の宝」という書き方で、よくわからなくなっています。
“ポイント”

パンダ舎は閉鎖同居開始の春

朱葉

夏井いつき先生より
「閉鎖」されたのに「同居開始」? ……とささやかな疑問を持ちます。この「同居開始」はパンダ同士の同居という意味でしょうか。だとしたら、「閉鎖」は書かず、同居が始まった春を十七音で表現してはどうでしょう。
“ポイント”