写真de俳句の結果発表

第54回「パンダと観覧車」《ハシ坊と学ぼう!⑪》

ハシ坊 NEW

「パンダと観覧車」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

麗かや牛歩も笑顔初パンダ

糸桜

夏井いつき先生より
「麗かや」の切字で切れて、「~笑顔」で人々の笑顔でしょうから、ここでも意味が切れるので、三段切れですね。
“ポイント”

百歳とされしパンダや涅槃西風

柿司  十六

夏井いつき先生より
下五の季語「涅槃西風」は要一考でしょう。取り合わせの接点が、少々説明臭くなりました。
“ポイント”

動物園猿に見られて食むバナナ

のりのりこ

夏井いつき先生より
中七下五は面白いフレーズです。上五「動物園」は必要でしょうか。
“ポイント”

春の風シートの重し吾子二人

瑞風

夏井いつき先生より
「春の風」で切れて、「~重し」の終止形で切れて、三段切れです。この「シート」は、何のシートでしょう? そこも分かり難かった。
“ポイント”

「第三の男」白コートの無言

よしろう

夏井いつき先生より
「有名な映画のラストシーンです。『女』を入れたかったんですが、字余りになるので諦めました」と作者のコメント。

有名な映画の印象的なシーンをそのまま書くのではなく、自分らしい切り口が必要です。
“参った”

海朧アインドバイの歪む影

舞矢愛

夏井いつき先生より
「ドバイにある世界一高いアイン・ドバイという観覧車の写真を見て詠みました」と作者のコメント。

私に知識がないので、念のための確認です。ドバイにおいて、「朧」という天文現象があるのか否か。そこが少々気になりました。もしその現象があるのならば人選でよいかと。
“参った”

観覧車結露に泳ぐ春の月

舞矢愛

夏井いつき先生より
面白い視点です。「泳ぐ」が工夫した点だということは分かるのですが、むしろその擬人化が邪魔です。描写に徹すると、佳い句になりますね。
“ポイント”

迷子の呼び出しはカエルのシャツくすり

ほーさく

夏井いつき先生より
「遊園地で迷子のアナウンスを聞いていて、その子の特徴がカエルのシャツを着た……とあった時に心配と同時に、とあるアニメのキャラクターを想起して、可笑しくなった記憶を詠んでみました」と作者のコメント。

絵に描いた「カエル」は季語にはなりません。が、無季として、ちょっと笑える一句です。
“参った”

猫にもらう移りあくびや春隣

たじまはる

夏井いつき先生より
「猫飼いなら皆、経験あります」と作者のコメント。

「猫にもらう」とあれば、「移り」は不要ではないかと。
“参った”

みもざ降るゆるき指輪をぱしり置く

宙朔

夏井いつき先生より
第43回『花屋さん内のカフェ』の投句〈みもざ降りてぱしりと指輪おく三時〉の推敲です。夏井先生ご指摘のごとく、上五はハッキリ『降る』と言い切りましたが、問題は『午後三時』です。初めの作意は、人生の三時からでも新しい出発ができるのだよ、という気持ちを込めたつもりでしたが、読む人には唐突な表現過ぎて届きにくいのかなと。そこで、いまそれを置くに至った生活や自らの心情、決意に焦点を当て、『ゆるき指輪を』としてみました」と作者のコメント。

少しずつ頭の整理ができましたね。「ぱしり置く」という表現は、評価が分かれるかもしれませんが、中七下五は俄然分かりやすくなりました。上五ですが、「ミモザ」の花が散っているのならば、「降る」ではなく「散る」とする手もありますね。が、指輪を外す行為に対して「降る」「散る」が近いと感じられるようでしたら、「花ミモザ」と名詞止にすることもできます。
“参った”

風光る葉食むきりんの長い舌

孤寂

夏井いつき先生より
情報が少し多い=自立語が少し多すぎるのです。言葉の優先順位をつけてみましょう。
“参った”

笹を食むパンダ眺める春の日や

のぐちゃん

夏井いつき先生より
下五「春の日や」という着地は不安定で難しい型です。語順を一考してみましょう。その際、「眺める」という動詞が必要か否か。吟味してみましょう。
“ポイント”

行く春や一人静かにパンダの死

出雲のたみちゃん

夏井いつき先生より
「一人」は、パンダの擬人化? それとも、看取る飼育員さんが一人?
“参った”

パンダの尾白か黒かと桜狩

深川文吉

夏井いつき先生より
主役になるべき季語「桜狩」が、「パンダ」に負けています。
“参った”

後部席の動画の静か春の昼

志きの香凛

夏井いつき先生より
「後部座席で動画を見ている子供達から、話し声も笑い声も聞こえなくなり動画の音声だけが聞こえて、寝たんだなあという句ですが、『春の昼』の中に静かなイメージも入っていると思うので、他の言葉が良いのかもしれませんが、これが限界でした」と作者のコメント。

「動画の静か」だと、動画そのものが静かという句意になります。後部席が静かで、動画の声だけが聞こえる。そういう描写にもっていくと、作者の意図が実現します。季語の選択も含めて、一考してみましょう。
“ポイント”

鞦韆やゾンビ社員の着るパンダ

水鏡新

夏井いつき先生より
「ゾンビ社員」って、やる気や向上心がない社員のことなのだそうです。となれば、季語は動きそうな気がするのですが、いかがでしょう?
“ポイント”

観覧車這い上がる先三夏あり

智隆

夏井いつき先生より
「這い上がる」のは「観覧車」でしょうか。だとしたら、描写にささやかな違和感を持ちます。また「三夏」は夏全般を意味する言葉なので、季語としての扱いが難しいですね。
“ポイント”

龍天に登る堤の先薄し

山本八角

夏井いつき先生より
「難しい季語に挑戦しました。ゴンドラから見える堤はどんどん細くなり、途切れた先は空気に突き刺さるように見えました。堤は自分かもしれないことをイメージしました」と作者のコメント。

下五「先薄し」とは、霞がかかっている光景でしょうか。コメントによると、堤の先が細くみえるという感じでしょうか。そのあたりがイマイチ分かり難い。描写の精度をあげる工夫が欲しいところです。「龍天に」と省略した傍題もありますので、それも含めて再考してみましょう。
“ポイント”