写真de俳句の結果発表

第54回「パンダと観覧車」《ハシ坊と学ぼう!⑫》

ハシ坊

「パンダと観覧車」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

春北風に包まるパンダ白くなり

白庵

夏井いつき先生より
なぜ「白くなり」なのか。そこが、イマイチ読み取れません。
“ポイント”

パンダから離れぬ仔犬春落ち葉

三日月なな子

夏井いつき先生より
「パンダが大好きな仔犬がいたら、なかなか動こうとしないのではと想像して詠みました」と作者のコメント。

一句に生き物を二つ入れるのは、なかなかに難しい。焦点が定まらず、どちらも損することが多いのです。季語も主役に立ちにくくなります。
“ポイント”

水洟斬る姑娘(クーニャン)の指が指揮めく

感受星 護

夏井いつき先生より
第49回『ブルガリアの道路』の投句〈姑娘の指が切り捨てし水洟〉の推敲句〈垂る水洟斬るは姑娘の指〉の更に推敲句です。なるほど『水洟を斬る』で洟は多少垂れています。ご指導ありがとうございました。最後は『指は指揮棒』と言い切るべきか迷いましたが、これでいかがでしょうか? 今回改めて、冷蔵庫の失せ物と俳句は他人から言われて気付くのかと思いました(笑)。俯瞰と執着と、失せないように頑張ります」と作者のコメント。

推敲をしているうちに、ついやりすぎてしまうことは往々にしてあることですが、これはそのケース。「姑娘の指が水洟を切る」その映像を描写するだけで、俳句になるだけの要素があります。「指揮めく」という比喩は、蛇足。ここは描写に徹して下さい。
“ポイント”

手に汗のサイクルレールはゆらゆらと

夏井いつき先生より
「中七が中八になってしまいました。『は』は必要かと思うのですが?」と作者のコメント。

この場合は、助詞を省略しても意味が伝わりますので、「は」は不要です。ただ、下五「ゆらゆらと」がありがちな描写に終わっているのが惜しい。
“ポイント”

潮干狩り尻もちついたら観覧車

銀猫

夏井いつき先生より
「潮干狩り」の現場から、「観覧車」の現場にどうつながっていくのか。解読が難しかったです。
“参った”

桜桃忌熊猫見るまで死なれへん

ひいらぎ

夏井いつき先生より
「熊猫見るまで死なれへん」というフレーズは、とても面白いです。季語「桜桃忌」は、太宰治の忌日。季語は変えた方が絶対によいです。
“参った”

花屑の水場せつなくパンダ鳴き

佐藤さらこ

夏井いつき先生より
「桜の花が舞い散る中、恋するパンダが体を冷やそうと水に入っている光景を詠んでみました。パンダの恋鳴きは、はじめは羊のような山羊のような声。とても切なく感じます」と作者のコメント。

「花屑の水場」と「パンダ」の取り合わせ、すごく良いです。「せつなく~鳴き」と切れのない形で終わっているのが、勿体ないなあ。
“ポイント”

紅葉狩吾を染めゆくや赤い山

八重山吹

夏井いつき先生より
「赤い山」は、紅葉の山を比喩しているのだろうと思いますが、上五に「紅葉狩」とあれば、不要な要素になります。
“参った”

ゴンドラ5周め春霖の動物園

水色ぺんぎん

夏井いつき先生より
「5」を「五」にすれば、人選です。
“参った”

風の乗る蕊は横向き時計草

海里

夏井いつき先生より
「『時計草』はその副花冠がライトアップされた観覧車の様。その上雄蕊も雌蕊も特徴的な形で、昔のゴンドラのイメージです。けれど観察していると、ある時急に蕊の先端が反転してしまうのです。きっと風が乗った分重たくなって、上向きでいるのが大変になったからではないかと私は想像しているのですが……」と作者のコメント。

なるほど、そういう観察の結果をこう想像し、描写したのですね。ちょっと情報が多いかな。「蕊」が横向きの「時計草」の描写に徹底して一句。「風」がのった「蕊」で一句。切り分けると、十七音の器にはちょうどよい分量になりそうです。
“参った”

観覧車日傘を膝に乗る亭午

海里

夏井いつき先生より
「日傘」を膝においての「観覧車」という句材がとてもよいです。観覧車とあれば「乗る」は不要。「亭午」も音数合わせに入れた感じがします。佳い句になりますので、再考してみましょう。
“参った”

今日もまたゴンドラの雪回りけり

ミツコ

夏井いつき先生より
「ここは北陸です。降り続く雪にうんざりしています」と作者のコメント。

雪をのせたゴンドラが回っている光景を描きたいのならば、「雪のゴンドラ」とすべきでしょうか。
“ポイント”

ゴンドラの開いて生徒ら春風と

ならば粒あん

夏井いつき先生より
「遠足で観覧車に乗り込む生徒たち。その際に春の風が吹いて一緒に……という景です。〈生徒らとゴンドラに入る春の風〉と迷いました」と作者のコメント。

「開いて」を「あいて」と読むか、「ひらいて」と読むかによっても、音数は変わってきますが、後半の表現に関しては、「生徒と春風と」と並列にする選択肢もありはします。
“参った”

ゴンドラの天辺酒涙雨ぽつり

大月ちとせ

夏井いつき先生より
敢えてこのマニアックな季語を使う意味はどこにあるのか。読者としては、そこを戸惑います。
“参った”

白黒をつけぬ観覧車の春夜

藤央

夏井いつき先生より
「高校生のときに男友達と遊びに行きました。互いに何となく気になっていたので、何か進展するかなと思いつつ互いに何も言えずに帰ってきた日のことを思い出しました」と作者のコメント。

「ぬ」は曲者で、下に意味が繋がっているとすれば、「白黒をつけない」という意味になりますし、「ぬ」のあとに意味の切れ目があるとすれば、「白黒をつけた」という句意になります。語順を含めて再考してみましょう。
“ポイント”

芝青む舟こぐ背中(せな)に想い積む

蛇の抜け殻

夏井いつき先生より
「猫背のパンダが、うつらうつらしているように思い、どんな夢を見ているのだろうという状況を、詠んでみました」と作者のコメント。

下五「想い積む」が説明の言葉になっています。俳句は描写。パンダの背中でしたら、そのように書いたほうがよいですね。
“ポイント”

春陰や柵が無くとも人は来ず

新米にぎりめし

夏井いつき先生より
寓意の句なのでしょうか。中七下五の句意が、イマイチ読み取れません。
“ポイント”

朧めく空に向かふや観覧車

のの夏

夏井いつき先生より
「朧めく空へ」と書けば、「向かふ」は不要ですね。
“ポイント”