写真de俳句の結果発表

第54回「パンダと観覧車」《ハシ坊と学ぼう!⑬》

ハシ坊 NEW

「パンダと観覧車」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

冬落暉朽ちゆく星の観覧車

渡海灯子

夏井いつき先生より
「朽ちゆく」は「観覧車」にかかっているのでしょうか? 「星」にかかるのでしょうか? それらの問題も含めて、季語を再考してみましょう。
“ポイント”

観覧車春風紡ぎ回りけり

小田毬藻

夏井いつき先生より
この「けり」はあまり効いていません。語順を替えると、季語「春風」が軽やかになりますよ。

添削例
春風を紡いで回る観覧車
“ポイント”

緋一点大樹のもとの花衣

山本美奈友

夏井いつき先生より
「緋一点」は、「花衣」の中に緋色の着物が一人いる? だとしたら、語順は再考の余地があります。
“ポイント”

ゴンドラの笑うよな軋み春疾風

神無月みと

夏井いつき先生より
語順を替えて調べを整えるとこうなります。

添削例
春疾風ゴンドラ笑うよな軋み
“ポイント”

パンダより虎の白さや夏めきぬ

一井かおり

夏井いつき先生より
一句に二つの生き物を入れると、お互いに損。この場合でしたら、パンダと比較するのではなく、「虎」の「白」を描写すれば、「夏めきぬ」という季語は生きてきますよ。
“参った”

神渡し戯れるパンダの獣臭

句々奈

夏井いつき先生より
「神様が戯れで創造されたかのような可愛いパンダですが、人を襲った事例もあるそうです」と作者のコメント。

中七下五のフレーズはよいのですが、上五の季語は一考の余地があります。
“参った”

おぼろ月ブルーライトの観覧車

由樺楽

夏井いつき先生より
上五を「朧夜や」とでもすれば、人選です。
“ポイント”

柊や白い物積むどんと音

のんつむ45号

夏井いつき先生より
「白い物」がなんなのか、ちょっと理解できませんでした。何?
“参った”

二言目待つ春眠のパンダを見つつ

海色のの

夏井いつき先生より
「話し下手な人の二言目を、パンダを見ながらのんびり待つ様子です。あんなにのんびり屋だった自分が、時に二言目を待つ余裕のない大人になってしまった反省の句でもあります。最初は〈二言目待つ間を春眠のパンダ〉だったのですが、助詞『を』だけで『パンダを見ている』と伝わるのか分からず、のんびりした様子なので字余りでもいいかなと思って、変えました。最初の句の場合、伝わらなかったでしょうか?」と作者のコメント。

ご質問にある初案〈二言目待つ間を春眠のパンダ〉でも十分伝わるかと思います。私ならば、初案をとるかな。それなら勿論人選です。
“参った”

春空へ翼を背なに駈ける子や

一石 劣

夏井いつき先生より
「幼い娘の誕生日に家族で遊園地に出かけた場面です。そこで貰った天使の翼を背中に背負い、全速力で走ったら飛べるかも知れないよ、とのからかいを真に受けて広場を駆けた娘の姿を詠もうと試みています。十七音に収まりきらず、言葉の取捨選択に悩みます。下五は、難しいとされる切れ字の『や』がしっくりとくるような気がして採用してみました。『子の駈ける』又は『駈ける吾子』などと無難にしておく方がよいですか?」と作者のコメント。

上五「春空へ」という表現はよいですね。下五の「や」はちょっと強すぎるので、「よ」ぐらいでもよいかなと思います。作者ご自身の案「子の駆ける」「駆ける吾子」も良いですね。ただ、中七の「翼を背なに」は比喩的な表現なのだろうなと読み解かれる可能性のほうが高いかな。
“参った”

観覧車目に入るものすべて春

春駒

夏井いつき先生より
語順を替えて調べを整えるとよいですね。

添削例
目に入るものみな春や観覧車
“ポイント”

ゴンドラのパンダの昼寝近づけり

あねもねワンヲ

夏井いつき先生より
「ゴンドラ」が「パンダ」のいる場所に近づく? 「パンダ」の形の「ゴンドラ」? 微妙に分かり難い書き方になっています。
“ポイント”

遊園の大車輪透く鳥曇り

Steve

夏井いつき先生より
「遊園の大車輪」という表現に工夫があることは分かるのですが、これが「観覧車」を指すのであれば、むしろ観覧車と書いたほうが、この句の場合は、映像が明確になります。
“参った”

目借時日ざし回すや観覧車

吉田さと

夏井いつき先生より
「目借時」で意味が切れて、中七「や」の切字で強く切れて、三段切れになります。この場合は、どこか一カ所意味を繋げるとOKです。

添削例
目借時日ざしを回す観覧車
“ポイント”

ビルに付く観覧車バレンタインデー

なんくる

夏井いつき先生より
「名古屋には、ビルの3階から乗る、ビルにくっついている観覧車があります」と作者のコメント。

「に付く」は要一考。ここをクリアすれば、人選は目の前です。
“ポイント”

六道の輪廻そろそろ浮ひて来い

山田季聴

夏井いつき先生より
「浮いて来い」が夏の季語になりますが、「浮く」はカ行の動詞ですので、「浮ひ」にはなりません。この仮名遣いを修正すれば、人選です。
“ポイント”

永き日や触るるキリンの黒き舌

ちょくる

夏井いつき先生より
「動物園でキリンに餌やり体験をした時の思い出です」と作者のコメント。

キリンの舌の黒さには驚きますよね。それを俳句にしたい気持ちにも共感します。中七の「触るる」が、何が何に触れるのか、描写が少々曖昧です。ここは、精度の高い描写にしたい局面。
“ポイント”

東風の泡飛ばしペンギンまつしぐら

弥栄弐庫

夏井いつき先生より
「東風の泡」という書き方が、少し分かりにくいかもしれません。描写の精度をあげてみましょう。
“ポイント”