写真de俳句の結果発表

第54回「パンダと観覧車」《ハシ坊と学ぼう!⑭》

ハシ坊

「パンダと観覧車」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

花吹雪ゴンドラにパンダ三周目

いくと改めて明石の上いくと

夏井いつき先生より
「花吹雪の中、ゴンドラで子供が忘れたパンダのぬいぐるみが回っている様子です」と作者のコメント。

この書き方だと、生き物のパンダが乗っているかと読めてしまいます。「ぬいぐるみ」あるいは「忘れられた」という情報を入れるとよいですね。
“ポイント”

人参を抱きしタンタン辛夷咲く

山田祥風

夏井いつき先生より
「パンダのタンタンは、生まれた赤ちゃんを数日で亡くしました。その後、人参や筍を抱き『偽育児』をする映像に涙。思い出しても涙です。歳時記で『辛夷』の名の由来を知り、良い季語だと思いました」と作者のコメント。

このエピソードを俳句にしたいお気持ちはよく分かります。ただ、十七音に入れるには内容が多すぎるかもしれません。「人参」が冬の季語であることも含めて、一考してみましょう。
“ポイント”

大空に故郷想う春パンダ

野イチゴ

夏井いつき先生より
「春パンダ」という季語の使い方は、少々強引です。
“ポイント”

子パンダの故郷園地に帰花

オカメのキイ

夏井いつき先生より
「帰花」とは、「帰り花」のことでしょうか? だとしたら、「帰り花」と表記しましょう。比喩として使っているとしたら、また別の推敲が必要になりますが。
“ポイント”

観覧車息を吐くたび春の句よ

茅々

夏井いつき先生より
「高齢になって俳句を始めた姑は、80歳を過ぎて『呼吸の度に句が生まれる』と呟きました。そして私にも句作を勧めました。姑に反発していた私は、病と生きる高齢者になってから俳句に惹かれて、今では杖となりました。この投句は私の体験ではなく、姑へのお詫びの俳句です」と作者のコメント。

「息を吐くたび春の句よ」という実感をお母さんは持たれていたのですね。今回の兼題写真に「観覧車」が写っているので、上五がこうなったのだろうと思いますが、お母さんへ捧げる句として、上五を再考してみましょう。場合によっては、「息を吐くたびに春の句」と整えることも可能です。どちらの方法でもよいので、あと五音を考えて、お母さんへの思いを結球させて下さい。
“参った”

永き日の小さきパンダの列長し

すそのあや

夏井いつき先生より
「子供が小さい頃、パンダを見せてやりたくて、神戸の王子動物園へ行きました。ガラス越しに遠くにいるパンダを見るための行列があり、パンダより人を見ている時間の方が圧倒的に長かった思い出を詠みました」と作者のコメント。

「小さきパンダ」は、パンダの子という意味ですね。だとすれば、「パンダの子」あるいは「赤ちゃんパンダ」と明確に書いたほうがよいでしょう。語順も含めて、整えてみましょう。
“参った”

はとバスや観覧車急かす秋の日

あんこ

夏井いつき先生より
一句に乗り物が二つでてくると、お互いを殺し合ってしまいます。どちらかに焦点を絞ってみましょう。
“ポイント”

万緑の這松ふみふみ「ラッパ吹け!」

朝夕人

夏井いつき先生より
「万緑」は一面の緑を指す季語。「万緑の這松」という表現に違和感があります。
“参った”

長閑なりうたた寝るカピバラの尻

市子

夏井いつき先生より
「うたた寝る」という使い方はあるのでしょうか? 「うたた寝の」なら、違和感なく人選です。
“参った”

冬日和廻るに余る皿数多

早霧ふう

夏井いつき先生より
第40回『蚤の市』〈日短や使ひ道みる蚤の市〉→〈日短や使ひ道みる色絵皿〉の再推敲です。沢山の皿を前にわくわくしている表現。上五の季語は意味が違い、中七は時間がかかりすぎることにやっと気づきました」と作者のコメント。

少しずつ理解が進んでいる様子が伝わります。作者自身が表現したいのは「沢山の皿を前にわくわくしている」ことのようですから、「冬日和」にしたのは佳い判断ですね。中七は、回転ずしだと勘違いする人もでてくるかもしれない。そこは、工夫の余地がありますね。
“参った”

鞦韆や双子パンダの桜色

二城ひかる

夏井いつき先生より
「四年くらい前に、上野動物園で双子パンダが生まれた時は、連日のようにテレビで映像が公開されていました。お母さんパンダの愛情が深いと赤ちゃんパンダをたくさんなめるので、白いところがピンク色になるそうなので、幸せを感じる『桜色』で表現しました。パンダの遊具にブランコがあったのと、もとは中国に由来する季語とのことで、漢字表記の『鞦韆』にしました」と作者のコメント。

書きたい内容は理解できます。ただ、「双子パンダ」が「桃色」である時期と、実際にブランコに乗れるようになる時期と、少々隔たりがあるのではないかと、気になりました。
“ポイント”

硝子越し双子パンダも夏休

深草くう

夏井いつき先生より
中七の助詞「も」は、一考の価値がありますよ。
“ポイント”

ゴンドラに摩天楼そびえ秋の空

夏の町子

夏井いつき先生より
「摩天楼」といえば「そびえ」ているものですね。
“参った”

年重ね悲喜こもごもの名残空

りっこう

夏井いつき先生より
想いは伝わるのですが、具体的な映像がないので、どういう立場のどういう感慨なのか、つかみどころがありません。映像を一つ入れることを考えてみましょう。
“ポイント”

野遊や擂粉木フルスイングの子

ヒロヒ

夏井いつき先生より
第51回『味噌づくり』《並》⑦にてご評価いただきました〈野遊やすりこぎフルスイングの子〉を推敲しました。『俳句はそこに書かれている文字面が全て』との夏井先生コメントをテレビで拝聴した際、原句の文字面はメリハリがない、と感じました。また、句中の『……やすり』が『鑢』だと誤解させる文字面になってしまっていることも気になりました」と作者のコメント。

なぜ、野遊びに擂粉木を持ってきているのか? という疑問はちょいと横に置いて、あと一息の工夫を考えるとすれば語順でしょうか。

添削例
野遊の子や擂粉木をフルスイング
“ポイント”

味噌麹底に残れる露の玉

ヒロヒ

夏井いつき先生より
第51回『味噌づくり』《ハシ坊と学ぼう!⑫》にてご評価いただきました〈露の玉底に残るは味噌麹〉を推敲しました。『作者の意図に添わせるならば、中七は「残れる」と連体形にすれば、ひとまず通じます。ただ、上五「露の玉」が主役としてどこまで機能するか、肝心のその点に多少の不安はあります』とコメントをいただいておりました。結果的に、偶然の産物を手にした気分です」と作者のコメント。

肝心の「露の玉」問題はどうしましょう? 「露」は秋の季語でもありますよ。
“ポイント”

大試験一人下向く観覧車

文心美

夏井いつき先生より
「大試験」という季語から、下五「観覧車」までの展開が急すぎます。
“ポイント”

植物とふ人の寝息よ春の雷

馬風木瓜子

夏井いつき先生より
「実話ですが『植物人間』と書くことに抵抗がありました」と作者のコメント。

抵抗があるのでしたら、「植物」という言葉を使わないでこの状態を描写する方法は色々あります。そこから、再考してみましょう。
“ポイント”