写真de俳句の結果発表

第54回「パンダと観覧車」《ハシ坊と学ぼう!⑮》

ハシ坊 NEW

「パンダと観覧車」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

受験終え水平線光る観覧車

安久愛 海

夏井いつき先生より
「いつき組組員になって二年目に突入します。前へ進めているのか、足踏みしているのかわかりませんが、『歩き続けていれば俳筋力はつく』という組長のお言葉を信じて、これからも続けていきたいと思います」と作者のコメント。

「受験」を終えたばかりの安堵と結果が分かるまでの緊張感。「水平線」の一語が、心情を象徴しているようでよいですね。「光る」と書かなくても光ってみえているであろうことは想像できますから……。

添削例
受験終えし水平線と観覧車
“ポイント”

人波に尻尾だけ揺れる三が日

かおるやま

夏井いつき先生より
「三が日に上野動物園へパンダを見に行ったのですが、終始尻を向けて寝ていて、休みたいのはパンダも一緒なのかなと感じた思い出を句にしました」と作者のコメント。

「三が日」となると三日間なので、「三日」としたほうが無難。「パンダ」という言葉を明確にしたほうがよいので、例えば……

添削例
人波にパンダの尻尾みる三日
“ポイント”

観覧車着膨れているパンダかな

もっさん

夏井いつき先生より
着膨れているのはパンダ? それとも人? 観覧車を見上げている? それとも乗っている? 作者の視線はどの位置にあるのでしょう。
“ポイント”

冬銀河擬木の罅を埋めるパテ

朝宮馨

夏井いつき先生より
「以前関わっていた仕事のことです。遊園地のメンテナンスは閉園後にしかできませんが、『擬木』だけで場所が伝わるでしょうか」と作者のコメント。

中七下五の句材には、オリジナリティがあります。季語は動く可能性がありそうです。
“ポイント”

春の空はたちの母と観覧車

白スニ

夏井いつき先生より
上五を「春空や」とすれば、人選です。
“ポイント”

夏木立パンダトトロを志す

夜汽車

夏井いつき先生より
「作り物の木より、あの本物の椎の木に登りたい。天辺まで登ったら、私もトトロになれるかしら? それにしても眠いわ……などというパンダの呟きを妄想しました」と作者のコメント。

作者コメントの発想は面白いのですが、この書き方だと主役であるはずの季語「夏木立」が背景になってしまってます。
“参った”

春の宵世に置き去りにされし我

水鳥川詩乃

夏井いつき先生より
全体が観念的です。何か一つでよいので、映像を描写してみましょう。
“参った”

大陸へ春の渚や檻運ぶ

常然

夏井いつき先生より
句材は悪くないので、語順を再考してみましょう。
“ポイント”

観覧車てっぺんはここ春の星

内田ゆの

夏井いつき先生より
「高所恐怖症が酷くなる前に一度だけ観覧車に乗りました。ここがてっぺんだ! と確信できた瞬間。星が瞬いて何故か涙ぐんだ覚えがあります」と作者のコメント。

字余りになりますが、上五は「観覧車の」とするか、語順を逆にして〈春星や観覧車のてっぺんはここ〉とするか。二択で人選です。
“参った”

背を向けて檻に寝る春愁のアムール虎一頭

翠花

夏井いつき先生より
「兼題写真のパンダはワシントン条約の動物リストにありますが、動物園にはその条約のもとで、仲間と一緒にいることもままならない動物もいます。番いになれない一頭のみの檻を前に、これから来園シーズンになりますが、動物園の役割と自然保護の間にはいろいろと難しい課題があるなと思いました」と作者のコメント。

伝えたい内容が多すぎて、十七音をはみ出してしまいました。「背を向けて寝る虎」で一句、「檻に眠る虎」で一句、「春愁」と「虎」の取り合わせで一句……という具合に、十七音に器にあわせた分量を考えてみましょう。
“参った”

あるじ無きさびし檻に春の風

霜川このみ

夏井いつき先生より
「『檻(うなや)』と読んでください」と作者のコメント。

「さびし」が「檻」にかかるとすれば、「さびしき」と連体形になります。
“参った”

観覧車動かぬままの春の暮

田中 百子

夏井いつき先生より
「観覧車」が動かないのだろうと思いますので、中七下五を「動かぬままの観覧車」として、上五に季語を置いてみましょう。上五は「○○○○や」と切れを入れるのが、ベストではあります。
“ポイント”

観覧車君と乗る日の春セーター

紫木蓮

夏井いつき先生より
上五を字余りにして「観覧車に」とするか、語順を一考してみるか。人選は目の前です。
“ポイント”

観覧車手を振る母の春日傘

山本とりこ

夏井いつき先生より
「上五の『観覧車』が唐突な感じになりますでしょうか。説明的でもあります。上五と中七の繋ぎが漢字ばかりで、季語の持つ優雅さに対して窮屈な印象もあると思います。『ゴンドラや』と上五に置き換える案も考えましたが、感動の焦点はやはり観覧車そのものだと思いましたので、この形になりました」と作者のコメント。

定石の話からすると、上五が名詞で、下五も名詞という型を嫌う向きがあります。句の姿としては、「ゴンドラや」と「や」の切字を入れると、それを回避できるのは確かです。
“参った”

犬眠り土の膨るる春の闇

金魚

夏井いつき先生より
「膨るる」のは、「土」でしょうか、「春の闇」でしょうか。この句の場合は、句意を明確にしたほうが得策です。
“ポイント”

観覧車広がる視野に春の富士

道草散歩

夏井いつき先生より
「広がる」と書かなくても、「観覧車の視野」と書けば、十分に広がっています。
“ポイント”

のどけしや十八分の空中散歩

芝香

夏井いつき先生より
中七下五を「空中散歩十八分」とすれば、調べが整います。「十八分の空中散歩」という語順をいかしたいのならば、下五に季語をおけばよいですね。「のどけしや」を下五におくのは、バランスが悪いので、別の書き方を工夫してみましょう。
“ポイント”

観覧車地上に流る花筏

清水ぽっぽ

夏井いつき先生より
「観覧車」から見下ろしている光景でしょうか。だとすると、「花筏」との距離が少々ありすぎます。中七が描写ではなく、イメージになっているのかもしれません。
“ポイント”

ぶらんこを漕ぎて見上げる観覧車

みさ

夏井いつき先生より
基本的には、「ぶらんこ」は漕ぐものであり、「観覧車」は見上げるものです。中七の動詞が、それぞれ必要なケースであるか否か。考えてみましょう。
“ポイント”