写真de俳句の結果発表

第54回「パンダと観覧車」《ハシ坊と学ぼう!⑯》

ハシ坊 NEW

「パンダと観覧車」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

黄昏に万灯ドンキ観覧車

八一九

夏井いつき先生より
「道頓堀の万灯祭。ドンキホーテの観覧車からの眺めが綺麗でした」と作者のコメント。

「万灯祭」と明確に書くべきでしょう。そうなれば、夕景から夜の光景を思う人がほとんどですから、上五「黄昏に」は不要ですね。
“ポイント”

宙に浮きパンダコパンダ涅槃西風

まちつぼ

夏井いつき先生より
「白い雲が西風に流されている。一部、目と耳のあたりが黒っぽく、パンダが流されているように見えました」と作者のコメント。

上五「宙に浮き」とあるので、「パンダ」が宙に浮いている? としか読めません。下五の季語は、ちょっと曲者の季語ですから、要一考ですね。
“ポイント”

初デート夏草香る観覧車

藤華靖麿

夏井いつき先生より
「夏草」はどこで香ってますか? 観覧車の中? 初デートの洋服?
“ポイント”

降りてくるまでにゴメンね氷解け

ともちゃ

夏井いつき先生より
「観覧車でケンカしたのですが、ずっと密室なのは避けられないので、降りるまでに謝った、という句です」と作者のコメント。

季語を再考しましょう。季語を比喩に使うと、季語としての鮮度は落ちます。
“ポイント”

秋天や眠るパンダに回る輪よ

ゆうき

夏井いつき先生より
「観覧車の動きを強調してみました」と作者のコメント。

「回る輪」が何なのか、俳句の字面だけでは伝わりませんね。
“ポイント”

鞦韆のパンダのじつは小さき目

今 結月

夏井いつき先生より
「パンダの目は黒縁のおかげで愛らしく見えますが、実際は熊のような小さい目です。もし黒縁がなければ、パンダの行動や仕草はまた違った印象になるだろうと想像します」と作者のコメント。

「鞦韆」はブランコのこと。春の季語です。この句の内容でしたら、率直に「ぶらんこ」と書いたほうが、季語の気分に似合っているのではないかと思います。
“参った”

惜春や好かれのパンダUターン

つのりゅう

夏井いつき先生より
「何年か前の春に、上野動物園のパンダが中国に返還されました。『好かれのパンダ』は無理がありますか?」と作者のコメント。

やはり無理があります。そもそも「パンダ」という生き物は愛されていますので、「好かれの」と説明する必要はないですね。季語「惜春」にも、その思いがたっぷり入ってますよ。
“参った”

笹竹を握りてパンダの春愁

片山ひな子

夏井いつき先生より
「春愁」を「はるうれい」と読ませるのだとしたら、中七の「て」を外すほうが、調べが整います。
“ポイント”

揚雲雀パンダ見下ろす観覧車

片山ひな子

夏井いつき先生より
一句に生き物が二つでてくると、お互いを殺し合います。「パンダ」を生かすか、「雲雀」を生かすか。一考してみましょう。
“参った”

春愁や子孫繁栄長寿でも

小川 茜園

夏井いつき先生より
「今回は『春愁』の句だらけだろうなあ……と思いましたが、これくらいピッタリの組み合わせも滅多にないので送ります」と作者のコメント。

「これくらいピッタリの組み合わせも滅多にない」と感じる時は、ベタ付きになっていることが多いのです。
“参った”

雲の峰老いしパンダに柔い笹

紀子

夏井いつき先生より
「老いし」は文語、「柔い」は口語です。文体を統一するならば、二択になります。
〈雲の峰老いしパンダに柔き笹〉(文語)
〈雲の峰老いたパンダに柔い笹〉(口語)
“参った”

観覧車めぐる想いや猫の恋

紫子

夏井いつき先生より
「パンダが俯いて何か悩んでいるような、考えているような感じに見えましたので、観覧車がぐるぐる同じ所をまわり堂々巡りをしているようなものと合っているようで、この様な俳句になりました」と作者のコメント。

「観覧車」と「猫の恋」の取り合わせは面白いと思うのですが、作者コメントを読んでみると、「観覧車」が「想い」の比喩になっているのですね。俳句は、たった十七音しかないので、「想い」のような心情を書くよりは、「観覧車」と「猫の恋」の光景を描写するのが定石です。それによって、読者は「作者の想いも観覧車のように巡っているのかもね」と読み解いてくれる。それが、俳句のメカニズムなのです。
“ポイント”

観覧車眼下に泳ぐこいのぼり

大和明希子

夏井いつき先生より
「観覧車から下を見れば、こいのぼりが見えます。地上で見ればゆったりと泳いでいるように見えるのでしょうが、またちょっと違うように思いました」と作者のコメント。

視点を変えると見え方が変わる。とても良い気づきです。惜しいのは、中七の描写。例えば「眼下を鯉のぼり」と書けば、泳いでいることは分かります。余った音数の使い方には、さまざまな選択肢があります。俳句は言葉のパズル。色々やってみましょう。
“ポイント”

百千鳥と並らぶ空の観覧車

パキラ

夏井いつき先生より
「観覧車に乗ったら、横で鳥が飛んでました」と作者のコメント。

まずは「並ぶ」の仮名遣いを訂正しましょう。更に、「百千鳥」は、特定の種を限定しない季語で、「さまざまな鳥たちが鳴き交い飛び交うひかり」のイメージです。作者コメントにある「観覧車に乗ったら、横で鳥が飛んでました」という光景を描写するのであれば、季語の選択には一考の余地があります。
“参った”