写真de俳句の結果発表

第54回「パンダと観覧車」《天》

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評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

第54回「パンダと観覧車」

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花盛りパンダは肉を食ひたくて

七瀬ゆきこ

 

いやいや、パンダの主食は竹と笹。肉は食わないでしょうと思いつつ、調べてみましたら、『上野動物園のジャイアントパンダ情報サイト』には、「じつは食肉目クマ科に分類される肉食性の強い雑食動物のなかま」と書いてありました。「は虫類などの小動物を捕まえて食べたという記録も」とあり、驚いてしまいました。

最初、「パンダは肉を食ひたくて」は虚に基づく詩語だと受けとめていたのですが、実際に肉を食べることもあると知ったとたん、このフレーズがパンダの生々しい欲求として突きつけられたかのような心持ちになりました。そもそもパンダのあの大きな体が、竹や笹だけで維持されることに違和感を覚えていましたが、そりゃ「肉」を食べたい日もあるだろうよと、妙に得心してしまいました。

抱えていた竹の枝を放り出したパンダは、うろうろと歩き出します。パンダは、何か物足りない気持ちを持て余しているのです。可愛い雌はそこにいるのに、いや、そうではない別の何か。その何かが分からないまま、彼は檻の中をうろうろし続けているのです。 

春はパンダにとっても生殖の時期ですが、性欲と食欲が渾然とぶつかりあう獰猛な春が、今、爛漫と桜を咲かせています。パンダは、まだ自分が「肉」が食いたいことに思い当たらず、頭上に咲き広がる桜を見ることもなく、檻の中にただただ途方に暮れて立ち尽くしているのです。

“夏井いつき”