写真de俳句の結果発表

第55回「食卓に花瓶」《ハシ坊と学ぼう!⑦》

ハシ坊 NEW

「食卓に花瓶」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

亡き友の清し笑顔や沙羅の花

きのこオムレツ

夏井いつき先生より
「『清し(すがし)』と読んでください」と作者のコメント。

「清し」が「笑顔」に掛かっていくのならば、「清しき」となります。となると、中七が八音になってしまいますね。
“ポイント”

木製のエッグスタンド避暑の荘

ゆきのこ

夏井いつき先生より
下五「~の荘」という書き方だけ、再考して下さい。「避暑の○○」あと二音の勝負です。
“ポイント”

百日紅花器に溢るるピンク色

玲花

夏井いつき先生より
「百日紅を広口の花瓶に生けたところ、すごいボリュームで、こんなに華やかな花なのかと驚きました。語順を変えて上五を『桃色や』とすることも考えましたが、桃色よりもピンク色の方が濃いような気がして、こちらを選びました」と作者のコメント。

「~に溢るるピンク色」という点よりは、「広口の花瓶に生けたところ、すごいボリュームで、こんなに華やかな花なのか」という率直な驚きを描写するほうが、「百日紅」らしさがでそうです。
“ポイント”

春雨や今朝は花無き花瓶かな

来冬 邦子

夏井いつき先生より
「や」と「かな」、切れ字が重なりました。このケースならば、「や」を生かしたほうがよいかな。
“ポイント”

あかときの上澄みを呑む熱帯魚

駒村タクト

夏井いつき先生より
「兼題写真からリビングに置かれた水槽を連想しました。子どもの頃、熱帯魚がぱくぱくするのは、朝のいいところを食べているからかもしれないと思った感覚を句にしました」と作者のコメント。

「あかときの上澄み」と「熱帯魚」の取り合わせ、佳いですね。「~を呑む」と擬人化しないほうが、詩の純度が高くなります。一考してみましょう。
“ポイント”

花冷や花瓶の花は死んでゐる

ヒマラヤで平謝り

夏井いつき先生より
「一句に『花』が三つも! ですが、どの『花』も違う意味の『花』ですし、内容はおだやかじゃないのですが、見た目が華やかになるかなと思いました」と作者のコメント。

中七下五のフレーズは良いです。「花」を三つ入れる企みは、面白くはありますが、一句の成否という意味では、季語は別のものにしたほうがよいです。佳き季語との出会いがあれば、更に佳句へと化ける一句です。
“参った”

梅雨気管鳴るワイパーの駆動音

龍酪

夏井いつき先生より
「雨が降りそうな日は呼吸ができなくなる。そうすると山をひとつこえて専門病院へ連れていかれる。この幼少期の風景から、自動車のワイパーの音がいまだにトラウマです」と作者のコメント。

作者コメントを読めば、なるほどと分かるのですが、俳句だけだと少々捉えにくい。材料を小分けにして、二~三句に作り直してみましょう。
“ポイント”

三一一は界の災予約席

mayu

夏井いつき先生より
「三一一」は、東日本大震災だと思いますが、下五「予約席」の意味を解読するのが、少々難しいです。
“ポイント”

木洩れ日のテーブルオムそばは真紅

哲太豚九

夏井いつき先生より
「木洩れ日の差し込む食卓。運ばれてきたオムそばの卵黄色を圧倒するようなケチャップの赤。君、いくら何でもかけすぎやろ」と作者のコメント。

「オムそばは真紅」は、ちょっと言い過ぎ。そもそもケチャップの赤は「真紅」でしょうか。
“ポイント”

霾の朝は憂鬱慰霊祭

老蘇Y

夏井いつき先生より
「黄砂が激しく降ってきた3月26日は、沖縄開戦慰霊祭の日でした」と作者のコメント。

「憂鬱」と書かなくても、その気持ちは十分伝わります。
“ポイント”

バースデーケーキと遺影窓の蝶

たまさもち

夏井いつき先生より
「以前、おウチde俳句大賞に応募した作品〈窓に蝶遺影にバースデーケーキ〉の推敲句です」と作者のコメント。

原句の方がよいですね。十二分に、人選のレベルです。
“ポイント”

唐突な自動ピアノや蝉丸忌

まるにの子

夏井いつき先生より
この取り合わせでも成立はしているのですが、季語は動きそう。忌日の季語、特に「蝉丸忌」の効果がどこまであるのか。
“ポイント”

お念仏おしゃれ玄関採れたて分葱

ヨシキ浜

夏井いつき先生より
「ちょっとおしゃれな玄関なんですが、母がお念仏をあげています。中に入ると、似つかわしくない採れたて分葱がおいてありました」と作者のコメント。

書きたい内容を盛り込みすぎて、状況が分かり難くなっています。「おしゃれな玄関」と「分葱」、「おしゃれな玄関」と「お念仏」、二句に分けて推敲してみましょう。
“ポイント”

至福なりコーヒー匂いバラ香る

竜酔

夏井いつき先生より
「多忙な一日が始まる前の、一時のゆっくりした間合いの心境を詠みました」と作者のコメント。

二つの匂いが入っていますので、主役を明確にしてみましょうか。
〈薔薇香る至福コーヒー○○○○○〉この○の部分で、コーヒーを描写してみましょう。
“ポイント”

雪柳目指して降車喪の戸口

迷照 りん句

夏井いつき先生より
「祖母が亡くなった時、わが家の雪柳が乱れ咲いていたという記憶からの発想です」と作者のコメント。

咲いていた花の季語が、大切な人の喪の記憶となります。語順を少し替えると、一気に人選になります。

添削例
雪柳目指し喪の戸口へ降車
“ポイント”

マグカップ二つ並んで花日和

山内プーコ

夏井いつき先生より
「いつも夫が淹れてくれたコーヒーで、朝が始まります」と作者のコメント。

季語は動きそうです。「夫が淹れるコーヒー」という俳句のタネも素敵です。
“ポイント”

入学の子とドリルとパンケーキ

おかだ卯月

夏井いつき先生より
「子供が小学校に入ったばかりの頃、食卓テーブルで宿題のドリルをしていました。おやつにホットケーキを焼いて、励ましたりしていました」と作者のコメント。

実際には「ドリル」だったのだと思いますが、中七が七音に調整できるとベストなのですが。
“ポイント”