第55回「食卓に花瓶」《天》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

天
第55回
萵苣かくやきのふははなよめとよばれ
ナノコタス
「きのふははなよめとよばれ」ていたのですから、今日は結婚式の翌日。結婚式までの気忙しさ、当日の喜びと緊張、甘やかな疲れの残る結婚式翌日です。
「萵苣(ちしゃ)」は、キク科の一年草または二年草の葉物。傍題にある「玉ぢしゃ」はレタスやサラダ菜のこと。皆さんは、この句の上五「萵苣かくや」の「かくや」をどう読み解きますか。
新婚旅行のホテルの朝食でしょうか。旅行は次の機会とし、二人だけの新居の朝のテーブルかもしれませんね。少々斜に眺めれば、子連れ再婚だの、熟年結婚だの、更にさまざまな人間模様も浮かんできますが、「きのふ」の「はなよめ」は、すでに今日という日を逞しく生き始めているのです。
水で洗う萵苣、サラダボウルに盛られる萵苣、スクランブルエッグに添えられる萵苣。いつでもどこでも食べていた萵苣が、こんなにも瑞々しいものであったとは! こんなにシャキシャキと美味しいものであったとは! そんな喜びの光景を思えば、「萵苣」とは日常の象徴のような季語だなと納得させられます。
「萵苣かくや」という詠嘆から導き出される無数の食卓の光景、歴史的仮名遣いで平仮名書きされた「きのふははなよめとよばれ」の柔らかな表情、下五の切れのない余韻など、丁寧な仕上げも褒めたい作品です。

