第39回 俳句deしりとり〈序〉|「んご」①

始めに
出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。


第39回の出題
兼題俳句
ットちゃんの破れ帯の本花林檎 星埜黴円
兼題俳句の最後の二音「んご」の音で始まる俳句を作りましょう。
※「んご」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。
「んご」だとか「っか」は浮ばず鳥曇
大月ちとせ
「んご」だとか「っか」とかやめてねぇががんぼ
ヒマラヤで平謝り
「んご」で始まる日本語なんてないで暑!
国東町子
んごと言う単語はないと親猫が
星瞳花
んごなんて俳句にならぬ春霞
あま門


ンゴロよンゴロ無月を揺らすンゴロの肩よ
海色のの
ンゴンゴロ獅子もマサイも陽炎に
えみり
ンゴロンゴロかばの小さな耳に虹
中村すじこ
ンゴロンゴロコーヒー甘し星月夜
てんむす
ンゴロンゴロしりとり終わらせぬ金魚
あなぐまはる
ンゴロンゴロツアーや南風をヌーの群
岸来夢
ンゴロンゴロにじゃれをるシンバ草の花
巴里乃嬬
ンゴロンゴロに黒豹眠る夏の夕
三日月なな子
ンゴロンゴロに手負ひの獣虎が雨
がらぱごす
ンゴロンゴロに春を射るフラミンゴ
おりざ
ンゴロンゴロのカルデラに霹靂神
のなめ
ンゴロンゴロのトムソンガゼル油照
藍創千悠子
ンゴロンゴロのヌーへ驟雨のベールめく
平岡梅
ンゴロンゴロの雲合ひに蟻の道
くさもち
ンゴロンゴロの河馬の欠伸や男梅雨
芝歩愛美
ンゴロンゴロの火口の果てや鳥の恋
かなかな
ンゴロンゴロの春ライオンは寝ている
鈴木そら
ンゴロンゴロの星へぶわりと草の芽が
弥栄弐庫
ンゴロンゴロの豆を焙煎する日永
小鳥ひすい
ンゴロンゴロの夕焼マサイの牛追い
孤寂
ンゴロンゴロやポレポレ生きる春の水
たかみたかみ
ンゴロンゴロや潦とはいひがたし
渥美こぶこ
ンゴロンゴロ被捕食者へ月強し
はなぶさあきら
ンゴロンゴロ保護区ふるふる曼陀羅華
若山 夏巳


ンゴマたたけば村人へ南風
おかだ卯月
ンゴマドゥンドゥン炎帝を追っ払え
ノセミコ
ンゴマドラムや狼少年めく野遊
沢拓庵
ンゴマのリズムに傾く大西日
なかしま こん
ンゴマの音どどっど驟雨を従えて
川上真央
ンゴマの音異国の空へ春の風
のりこうし
ンゴマの音軽やか炎暑の異国
信茶
ンゴマの音止まぬサバンナ旱星
末永真唯
ンゴマの音新樹の鼓動を集めけり
咲葉
ンゴマの軽快音で初夏の舞い
飯島寛堂
ンゴマぽこぽこ啓蟄の野の微動
鰯山陽大
ンゴマ沼夕凪に河馬ただよひて
ゆきえ
ンゴマ打つ手のひら厚し山笑ふ
夏村波瑠
ンゴマ鳴る太鼓のリズムと濁り酒
銀猫
「ンゴマ」叩き体でリズム油照
沙魚 とと
日本語の単語には見当たらなくても、世界の情報に目を向けたら「ん」から始まる単語ってあるもんですねえ。「ンゴマ」はアフリカ東部・南部で使われる円錐型の太鼓のこと。伝統音楽や儀礼の場で使われるそうです。太鼓という特徴を活かした「手のひら」の実感とか良いですねえ。打ってみたくなります。


ンゴニの音讃ふ砂漠の大夕焼
鈴白菜実
ンゴニやわらか夕焼けのビントゥマニ
山姥和
ンゴニ奏者驟雨へ唄ふバンバラ語
乃咲カヌレ
ンゴニ弾く青年へ風夕薄暑
高尾一叶
ンゴニ弾く緑蔭の土かぐはしき
彩汀
ンゴニ弾く老いたる指やオリオン座
コリちゃん
ンゴ二弾く異国の人の花見かな
青井季節
ンゴマは個人的に知ってたんですが、こちらは知りませんでした。「ンゴニ」は西アフリカに伝わる楽器の名前で、こちらは打楽器ではなく弦楽器。木をくり抜いたボディに獣の皮を張り、複数本の弦を備えた構造です。なんでも音色は三味線に似てるんだとか。音の性質がわかるとそれぞれの句の世界で音がどんな調和を生み出しているのか想像しやすくなりますね。《彩汀》さんの「緑陰」のしっとりと和らぐ暗がりだとか、湿った土の匂いだとか、それらをかき回すようにンゴニの弦が震える振動だとか、句が立体的に味わえて良きかな。


ンゴングの丘草を食む春駒よ
砂月みれい
ンゴング遥か「アフリカの日々」読む春夜
老杉
ちなみに《老杉》さんの「アフリカの日々」はケニヤを舞台にしたイサク・ディネセンのエッセイ小説のようです。メリル・ストリープ主演映画『愛と哀しみの果て』の原作みたい。へー、今度観てみよう!


ンゴロポポス朧の夜の搬入路
東田 一鮎


ンゴンと笑うハノイの月夜バインミー
つきみちる


唔該晒留学生は卒業す
⑦パパ
唔該唔該大嶼山の桜人
真夏の雪だるま
「んごい!」「んごい!」旧正の飲茶にぎやか
陽光樹
〈②に続く〉

