写真de俳句の結果発表

第56回「百日紅の名所」《ハシ坊と学ぼう!④》

ハシ坊 NEW

第56回のお題「百日紅の名所」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

子の恐るる平和学習さるすべり

たかみたかみ

夏井いつき先生より   評価    並 
「広島県だけかもしれませんが、八月に平和学習と題しての登校日があります。また平和記念館などへの社会見学もあります。娘は、絵本『おこりじぞう』ですら、怖くて怖くて嫌がっていましたし、平和記念館ではほぼ目をつむって歩いたと言い、とにかく怖くて仕方なかったことを、何故かさるすべりの花から思い出しました」と作者のコメント。

心が柔らかで繊細な子は、見学がトラウマになってしまうこともあるようです。子供たちにどう原爆を伝えていくのか。これは、私たち大人に突きつけられている大きな命題です。この句に関しては、並選。もう少し具体性が欲しいです。
“ポイント”

摘草の親子の影や騒ぐ雀

水越千里

夏井いつき先生より   評価    並 
第53回 『火の山公園のチューリップ』〈摘草の親子の影や畑に落つ〉の推敲句です。先生のアドバイスは『畑に勝手に入ってる? と疑問を抱く読者も何割かいると思います。下五は、さまざまな展開が考えられます。鮮やかな、下五の変化球を投げ込んで欲しいところです』でした。う~ん、鮮やかな変化球? と悩んで推敲してみました。人影に驚いた雀の景のつもりです」と作者のコメント。

この段階で、並選は確保できます。「下五の変化球」と書いてしまったので、逆に中七を動かさないという縛りを作ってしまったようです。申し訳ない。私なら……という話になりますが、「~の影や」から以下を再考するかな。後半を「摘草の親と子と」することも可能だし、まだまだ色々やれます。全体を自由に組み替えることも選択肢にいれてみましょう。
“ポイント”

百日紅藻に浮かぶ華茶菓子かな

小川多英子

夏井いつき先生より
藻に浮かぶ華のような茶菓子という意味? 藻の花も季語ではありますが……。
“参った”

百日紅教える考の声ひそか

みやび

夏井いつき先生より
「考」は亡くなった父を表す語ではありますが、普通に「父」と書いて、亡くなっているのかもしれない……と読ませるような描写を心がけることをオススメします。
“ポイント”

御局は百日紅の肌五十九

のなめ

夏井いつき先生より
「肌がすべすべで、華のある御局様のことを詠んでみました」と作者のコメント。

この語順だと、「百日紅」が比喩になってしまいます。次の句と比較するとどうなるか、考察してみましょう。

添削例
御局は五十九百日紅つやつや
“ポイント”

子らの歓声ともに笑ふや百日紅

くちなしの香

夏井いつき先生より
「『歓声』は『こえ』です」と作者のコメント。

「歓声」を「こえ」と読ませるようなルビは、オススメしません。「時代」を「とき」、「女」を「ひと」と読ませるようなルビも同様。「こえ」と読ませたいのなら「声」と書いて、その声の質が歓声のようなものであることが想像できるような描写を目指しましょう。
“参った”

風光る音無き決めの一手かな

ただ ひとり

夏井いつき先生より
「百日紅の名所で行われた将棋のタイトル戦。(空想)外の風景を眺めながら、落ち着いて対局に臨むことができた棋士の心境に、思いを馳せて詠んだ一句です」と作者のコメント。

人生における「一手」のようにも読めますので、将棋だと分かるような表現を考えてみましょう。
“参った”

風薫る富士の吊り橋四百メートル

駒茄子

夏井いつき先生より
「三島にある吊り橋『スカイウォーク』に行った時のことを詠みました」と作者のコメント。

ただの「吊り橋」ではなく「富士の吊り橋」と書きたいのだろうと推測します。この句の材料となる言葉を全部使いたいのならば、語順をかえるしかありません。中七は極力七音にするのが定石。字余りは上五で処理するのも定石です。

添削例
富士の吊り橋四百メートル風薫る
“ポイント”

ツルツルの幹見て名付けサルスベリ

シマエナガちよちよ

夏井いつき先生より
植物や動物の季語は、漢字か平仮名で書くのが基本です。勿論、片仮名書きする植物もありますが、ひとまず歳時記を引いてみましょう。
“参った”

百日紅老いらくの恋はじまりぬ

鹿達熊夜

夏井いつき先生より
「百日紅」と「大人の恋のイメージ」を取り合わせたい、その意図は理解できます。ただ、「老いらくの恋はじまりぬ」というフレーズは、あまりにもアルアルです。ここが工夫のしどころですよ。
“ポイント”

姫沙羅や小さき小花が鳴るように

シラハマナオコ

夏井いつき先生より
「百日紅の別名は姫沙羅だ。小さな花が群れて咲き、風が吹けば鳴るように見える」と作者のコメント。

惜しいのは、「小さき小花」という表現。作者コメントにある「風」の存在が匂う書き方ができるとベストかな。
“ポイント”

働き蜂化けて半時ハットピン

太井 痩

夏井いつき先生より
第53回『火の山公園のチューリップ』では、投句〈帽発たぬ働蜂やずる休み?〉に対するご指導ありがとうございました。ご指摘を踏まえて推敲してみました。方向は合っておりますでしょうか?」と作者のコメント。

「化けて半時ハットピン」という展開が、少々分かりにくいです。
“参った”

淡色の幹に紅の花祖母懐かしや百日紅

三歩

夏井いつき先生より
少々長すぎます。材料を二つに分けて、二句にしてみましょう。
“参った”

百日紅みつばち役のピルエット

咲葉

夏井いつき先生より
中七下五のフレーズ「みつばち役のピルエット」は、可愛いです。上五の季語が動きそうな気配。
“参った”

ゴスペルの微かに聞こゆ百日紅

SEAN

夏井いつき先生より
「ゴスペルの微か」と書けば、それは聞こえていますね。
“参った”

嵯峨野路や川風涼し茶の湯かな

沢善

夏井いつき先生より
「~や」の詠嘆、「~涼し」の終止形、更に「~かな」と典型的な三段切れになっています。「や」「かな」の切字のダブりも嫌われますので、構成を再考してみましょう。
“参った”

百日紅水面に舞ひし鯉波紋

福田創風

夏井いつき先生より
「~に舞ひし」は一考の余地のある表現です。
“参った”

門灯に照らされたるや百日紅

絵美

夏井いつき先生より
「門灯に」とあれば、照らされていることは想像できます。中七を一考してみましょう。
“参った”

百日紅師は樹木葬を知りたがる

京あられ

夏井いつき先生より
「今年に入ってから、ますます身辺整理を始めた恩師は、樹木葬にも興味を示し私に聞いてきます。私は資料を集めたりしながら、どこか寂しさも感じてなりません」と作者のコメント。

「樹木葬」を知りたがっている人物、という句材はよいです。ただ、取り合わせる季語を「百日紅」にすると、少々近くなってしまいます。
“参った”