写真de俳句の結果発表

第56回「百日紅の名所」《ハシ坊と学ぼう!⑥》

ハシ坊 NEW

第56回のお題「百日紅の名所」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

海藻の標本乾く百日紅

矢口知

夏井いつき先生より
上五中七のフレーズは良いです。ただ、下五の「百日紅」と取り合わせると、「海藻」も「百日紅」も植物なので、お互いに損をします。別の季語との取り合わせを考えてみることをオススメします。
“ポイント”

緋毛氈にお茶と赤福若葉風

超凡

夏井いつき先生より
「赤」の印象が強くて、主役の「若葉風」がちょっと負けています。
“ポイント”

ラミダス落つる時踠く親鸞虎落笛

中指富士夫

夏井いつき先生より
表現したいことの中心は何か? 読み手としては迷います。
“参った”

百日紅母に怒鳴りて花弁こぼる

若山 夏巳

夏井いつき先生より
「幼い日に庭で癇癪を起こして母に怒鳴ったら、頭上の百日紅の花びらがどどっとこぼれ落ちてきて我にかえりました」と作者のコメント。

「百日紅」と、母に向かって怒鳴ったことの取り合わせはよいです。中七の終わりから下五のかけての「~て花弁こぼる」は、一考の必要があります。
“ポイント”

量り売りスパイス幾重百日紅

出船

夏井いつき先生より
「幾重」は、スパイスのこと? 「百日紅」のこと?
“ポイント”

素肌めく木肌赤らめ陽にさらし

平松久美子

夏井いつき先生より
「〈素肌めく木肌なめるや酷暑の陽〉を推敲しました。『酷暑』も『陽』も季語でしたし、勿論『百日紅』も季語で、難航しました。他にもツルツルした木肌の木は、あるようですが、私には、桜や松のような皮のある木に比べ、肌を見せているように見えます。それが艶っぽく見えるのです」と作者のコメント。

「陽」だけでは季語になりません。初案の場合は、上五中七が持って回った書き方。「素肌めく」と比喩にせず、まっすぐに描写してみましょう。
“参った”

ショベルかー杜鵑花の垣へ迫りをり

鈴聖湖

夏井いつき先生より
「ショベルカー」と正しく片仮名書きにすれば、人選です。
“参った”

百日紅残し湖底に消えた村

加東亭 ゆんたく

夏井いつき先生より
「母の故郷がダム建設で村が沈みました。その時の、神様の木を避けてダムを建設したというエピソードを元に作ってみました」と作者のコメント。

表現したいことはきちんと伝わります。ただ、「湖底に消えた村」のようなフレーズはかなりあるものですから、人選に推しにくいのです。このフレーズを回避して、この光景をどう詠むか。そこに挑戦してみましょう。
“ポイント”

枯れた吾に父が教えし百日紅

加東亭 ゆんたく

夏井いつき先生より
「思春期の私に何気なく教えてくれたのが『サルスベリ』でした。ツルツルの樹木が妙に心に残っていたので、こう詠みました」と作者のコメント。

「枯れた吾に」とはどういう意味でしょう?
“参った”

百日紅雨降らずして二十日過ぐ

海神瑠珂

夏井いつき先生より
下五の表現を少しやわらかくしてみましょうか。これならば人選かな。

添削例
百日紅雨降らずしてはや二十日
“ポイント”

これ何の木幹で判断百日紅

メグ

夏井いつき先生より
中七が説明の言葉になっています。俳句は描写です。
“ポイント”

鷭のかほ鯉の腹よりいできたり

さおきち

夏井いつき先生より
「鯉と思われる魚の腹から真赤な顔がみえました。血でカラスの顔が染まったのかとびっくりしたら、赤い顔の鳥で、写真を撮り調べました。初めて鳥の写真の撮影に成功した日でもありました」と作者のコメント。

この状況が、この句の字面では読み取りにくい。描写の精度をあげるしかないのですが、この句材はしばし温めておきましょう。来年、再来年、また挑んでみてください。
“ポイント”

花疲れ洗面台に落つカラコン

橙茶

夏井いつき先生より
「落つ」は終止形なので、三段切れになります。中七を「洗面台に落つる」と連体形にすると、中七が字余りになってしまうので、あまりオススメできません。語順を入れ替えて「カラコン落つる洗面台」と下五の字余りにするほうが、許容しやすいかな。……となれば、更に、上五が「~や」と季語を詠嘆する型にもってくると、一句の姿が整います。
“参った”

百日紅伐って仕舞ふた大家さん

加賀屋斗的

夏井いつき先生より
「仕舞ふ」が、「た」に接続する時、「ふ」にはなりません。「伐って」に合わせるなら、促音便が発生して「仕舞った」となります。
“参った”

百日紅終わる季節に何を見る

出羽泉まっくす

夏井いつき先生より
その「百日紅」が終わる時を丁寧に描写してみましょう。
“参った”

水草を分けて現る緋鯉かな

青井晴空

夏井いつき先生より
「現る」は終止形です。下五の「かな」に収斂させるには、ここは連体形が繋ぐのが定石。中七を「分け現るる」とするか、「かな」を諦めて、中七下五を「分けて緋鯉の現れる」と口語で書いてしまうか。二択かなあ。
“参った”

街道の花電車ごと百日紅

星瞳花

夏井いつき先生より
「近くに何キロも続く百日紅街道があります。それはまるで花電車が通過しているかのような見事な道筋です。『花電車』の後を『ごとく』か『のよう』にすると、中八になりますので、ただ『ごと』だけにしましたが、成立するでしょうか」と作者のコメント。

「ごと」としてもよいのですが、この場合は「花電車ごと」=花電車も含めて、という意味か? と、読めてしまいます。「ごとく・ような」等の直喩を使わない方法もありますので、再考してみましょう
“ポイント”

学校の閉校近し百日紅

智幸子

夏井いつき先生より
「我が子が通った小学校は、裏門の体育館前に朱の百日紅が咲いています。その学校も、生徒が減り、まもなく閉校します」と作者のコメント。

「閉校」とあれば、「学校の」は不要ですね。
“参った”

「面」と打つ声の合間に百日紅

木村奈須

夏井いつき先生より
「百日紅は学校にも並んで植えられているイメージがあります。剣道部が練習している声が、何度も百日紅の合間から聞こえてくるようなイメージです」と作者のコメント。

「~声や」と詠嘆すれば、「~の合間に」と説明する必要はなくなります。
“参った”

サルスベリほんまかいなの撫で心地

西 メグル

夏井いつき先生より
植物や動物の季語は、基本的には漢字か平仮名で書きます。ただし、「チューリップ」などは外国から入ってきた呼び名ですから、片仮名書きにします。「さるすべり」あるいは「百日紅」と書くのが基本です。更に、中七下五は季語の説明になってしまってます。俳句の基本は描写です。
“参った”

夕風は葦簀くぐり来結び一番

富永三紀

夏井いつき先生より
佳い光景を切り取ろうとしています。「夕風は葦簀くぐり来」は、「夕風の葦簀」とすれば、ほぼ同じ風が読み手に伝わるのではないかと。
“参った”