第57回「沖縄県の郷土料理」《ハシ坊と学ぼう!⑤》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
星涼し泡波交わし波照間や
絵符
夏井いつき先生より
「『泡波』は波照間島の泡盛。郷土料理とは外れますが、泡波を交わし食べたゴーヤチャンプルの思い出です」と作者もコメント。
下五を「~や」と詠嘆するのは、バランスの取りにくい難しい型です。語順に工夫の余地があります。「泡波」が酒だと分かるように、上五字余りで「泡波酌む」としてみましょう。
添削例
泡波酌む星の涼しき波照間よ
「『泡波』は波照間島の泡盛。郷土料理とは外れますが、泡波を交わし食べたゴーヤチャンプルの思い出です」と作者もコメント。
下五を「~や」と詠嘆するのは、バランスの取りにくい難しい型です。語順に工夫の余地があります。「泡波」が酒だと分かるように、上五字余りで「泡波酌む」としてみましょう。
添削例
泡波酌む星の涼しき波照間よ


肉柔ら煮込み時間にひたい汗
福田創風
夏井いつき先生より
もう一句、上五中七が同じで、下五が「ぬぐふ汗」となっている投句がありました。月に二句しか投句できませんので、下五をどうするかを、じっくりと悩み、自分なりの結論を得たかたちの一句を投句して下さい。
「肉柔ら煮込み時間」という書き方も、「肉煮込む」とすれば、時間をかけて柔らかくなるまで煮込むのだろうなということは伝わります。
もう一句、上五中七が同じで、下五が「ぬぐふ汗」となっている投句がありました。月に二句しか投句できませんので、下五をどうするかを、じっくりと悩み、自分なりの結論を得たかたちの一句を投句して下さい。
「肉柔ら煮込み時間」という書き方も、「肉煮込む」とすれば、時間をかけて柔らかくなるまで煮込むのだろうなということは伝わります。


よみかきのできぬ祖母佳き日の煮梅
明日ぱらこ
夏井いつき先生より
「母方の祖母は、早くに両親を亡くし兄弟六人の親代わりとなって、小学校もろくに行けず朝から土方をして働き詰めだったそうです。『読み書きできない』と母から聞いて、祖母宅へ夏休み中預けられていた自分を兼題写真に重ね、とろとろの煮梅を思い出しました」と作者のコメント。
「佳き日の」という情報を入れるよりは、「煮梅」を美味しそうに書くほうがよいですね。
添削例
煮梅とろとろ読みかきのできぬ祖母
「母方の祖母は、早くに両親を亡くし兄弟六人の親代わりとなって、小学校もろくに行けず朝から土方をして働き詰めだったそうです。『読み書きできない』と母から聞いて、祖母宅へ夏休み中預けられていた自分を兼題写真に重ね、とろとろの煮梅を思い出しました」と作者のコメント。
「佳き日の」という情報を入れるよりは、「煮梅」を美味しそうに書くほうがよいですね。
添削例
煮梅とろとろ読みかきのできぬ祖母


ちゃぶ台を色すやちむん夏来る
歩帆
夏井いつき先生より
「色す」という使い方に違和感があります。彩るという意味なのでしょうか?
「色す」という使い方に違和感があります。彩るという意味なのでしょうか?


ラフテーは地層骨は化石や夏の夜
貴他山
夏井いつき先生より
上五中七のフレーズを良しとした時、下五「夏の夜」は、可も無く不可も無い取り合わせ。下五の季語の選択によっては、まだまだ化ける句です。
上五中七のフレーズを良しとした時、下五「夏の夜」は、可も無く不可も無い取り合わせ。下五の季語の選択によっては、まだまだ化ける句です。


日焼して指笛の間はドンピシャで
佐藤儒艮
夏井いつき先生より
「助詞『は』がどうか? 他はゆるゆるなのに指笛の間だけは! という感じです。沖縄→泡盛→唄い出す踊り出す→指笛という流れです。初案は〈指笛不発さあ泡盛をもう一杯〉。因果関係が出てるかも、マイナスな言葉『不発』じゃない方が良いかもと。なんくるないさーと、陽気な中に哀しみからくる優しさがあるなぁと思います」と作者のコメント。
中七下五の「ドンピシャ」感が、微妙に分かりにくかったのですが、初案を知って納得。ならば初案を……。〈指笛は不発泡盛もう一杯〉でも良いかと。
「助詞『は』がどうか? 他はゆるゆるなのに指笛の間だけは! という感じです。沖縄→泡盛→唄い出す踊り出す→指笛という流れです。初案は〈指笛不発さあ泡盛をもう一杯〉。因果関係が出てるかも、マイナスな言葉『不発』じゃない方が良いかもと。なんくるないさーと、陽気な中に哀しみからくる優しさがあるなぁと思います」と作者のコメント。
中七下五の「ドンピシャ」感が、微妙に分かりにくかったのですが、初案を知って納得。ならば初案を……。〈指笛は不発泡盛もう一杯〉でも良いかと。


オシャレかな湘南生まれ海ぶどう
信壽
夏井いつき先生より
「江ノ島の食事処で海ぶどうがメニューにありました。聞けば湘南で養殖しているとのことでした。湘南生まれと聞いて、どことなく海ぶどうがオシャレに見えてきました」と作者のコメント。
「オシャレかな」と書かなくても、「湘南」とありますので。上五を一考しましょう。
「オシャレかな」と書かなくても、「湘南」とありますので。上五を一考しましょう。


足跡や吐く息白し京の朝
やまだ童子
夏井いつき先生より
「や」の切れ字、「白し」の終止形、三段切れです。語順その他を一考しましょう。
「や」の切れ字、「白し」の終止形、三段切れです。語順その他を一考しましょう。


ほいほいと乗る人に手を春の闇
青水桃々
夏井いつき先生より
「第54回『パンダと観覧車』の並選句〈ホイホイト乗ル人ノヰル春ノ闇〉の推敲句です。『ヰ』を使いたいなぁと思ってカタカナにしましたが、やっぱりやり過ぎかなと思い、ひらがなに戻しました。『ヰ』が無ければ三音で出来ることがあるので〈ほいほいとその手をつかみ春の闇〉も考えましたが、『その』の是非と動詞より怖いかもしれないと思い、こちらにしました」と作者のコメント。
何を表現したいか、その輪郭は理解しました。〈ほいほいとその手をつかみ春の闇〉という別案も含めて、これが完成形ではないような気がします。
何を表現したいか、その輪郭は理解しました。〈ほいほいとその手をつかみ春の闇〉という別案も含めて、これが完成形ではないような気がします。


泡盛や背後に課長らしき声
城ヶ崎文椛
夏井いつき先生より
季語、少々動きそうです。「冷酒や」「熱燗や」等々。


はたとせや菜の花料理ほめられて
花星壱和
夏井いつき先生より
「21歳頃に、友に菜の花の天ぷらを振る舞い喜んでもらった思い出です。表記を『二十歳』とするか、『二十歳(はたとせ)』とするか、また、『や』の切れ字がよいか、『の』がよいか悩みました」と作者のコメント。
下五「ほめられて」が説明的です。「二十歳の菜の花料理」として、下五でその料理を描写してみましょう。俳句は説明ではなく、描写。よき描写ができれば、「ほめられて」は書かなくても伝わります。
下五「ほめられて」が説明的です。「二十歳の菜の花料理」として、下五でその料理を描写してみましょう。俳句は説明ではなく、描写。よき描写ができれば、「ほめられて」は書かなくても伝わります。


揚げたてのコロッケひとつ夕焼け雲
おかぴ
夏井いつき先生より
俳句としては成立しています。ただ、「揚げたてのコロッケひとつ」というフレーズは、結構目にするものなので、類想感が気になって、人選には推しにくいのです。


東京の恋はほうれん草のソテー
駒村タクト
夏井いつき先生より
「ほうれん草の」の「の」をとれば、人選。

