写真de俳句の結果発表

第57回「沖縄県の郷土料理」《ハシ坊と学ぼう!⑧》

ハシ坊

沖縄県の郷土料理

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

ラフテーをつつく友射す西日かな

西田武

夏井いつき先生より
「西日」とあれば「射す」は不要ですが、敢えてそう描写したいとなれば、「かな」の詠嘆はないほうが良いです。整えてみましょう。
“ポイント”

赤土は珊瑚「やちむん窯」をはえ

曽根朋朗

夏井いつき先生より
「私の在住地域の周りにも有名な焼き物が何ヵ所かありますが、沖縄の焼き物『やちむん』の土は珊瑚の堆積物からなっているというのが沖縄らしく、とても珍しいなあと思いました。赤土というのも納得です。暑い風の中、作業されている職人さんや、敷地内に置かれた赤土の山が頭に思い描かれました」と作者のコメント。

ちょっと材料が多いかな。作者コメントの中の、「やちむんの土は珊瑚の堆積物」だけを取り出して、一句にまとめてみましょう。良い句になりそうですよ。
“ポイント”

空港の跡地ラム酒や大南風

東ゆみの

夏井いつき先生より
「南大東空港跡地はラム酒工場になっています。ラムの香りが風に乗っています」と作者のコメント。

これは良き句材ですね。上五字余りで「空港跡地は」と置いて、中七下五を整えましょう。「ラム酒や」という詠嘆ではなく、「ラム酒工場」と明確に書きましょう。
“ポイント”

気が付けば記憶明瞭残暑かな

西 メグル

夏井いつき先生より
俳句では、「気が付けば」と書く必要がないことがほとんどです。気が付いたから、その句が記されているのですものね。一句に、明確な映像がありませんので、何かしら映像になる語を入れてみましょう。
“参った”

立ち食いの天ぷら硬し夏真昼

二十八

夏井いつき先生より
上五中七、特に「硬し」と描写した点がよいですね。下五の季語を一考してみましょう。取り合わせによっては、かなり化けます。
“ポイント”

冬の日にヒヤシンスの根真珠色

一寸雄町

夏井いつき先生より
第53回『火の山公園のチューリップ』《ハシ坊と学ぼう!⑧》で取り上げて頂いた〈冬うららヒヤシンスの根真珠色〉の推敲句です。『上五の季語「冬うらら」が、いかにもちょいと取り合わせた感覚。季語こそが主役になるべき』とご指摘を頂き、改めて歳時記を繰り、『冬の日』は時候の他に天文の季語(冬の太陽、その日差し)でもあると知りました。『冬の日』にヒヤシンスの根が真珠色に輝く様がしっくりします。『冬の日や』とで迷いました」と作者のコメント。

コツコツとここまで辿り着きましたね。上五は悩むところですが、「や」で詠嘆すると、三段切れっぽい調べになります。が、上五の「~に」は散文的な助詞の使い方。あまりオススメはできません。例えば、句またがりにしての、こんな展開もありますよ。

添削例
根は真珠色冬の日のヒヤシンス
“ポイント”

軒先に匂うが誘う茉莉花

老蘇Y

夏井いつき先生より
「沖縄のジャスミン茶、さんぴん茶を飲みながら、琉球料理を楽しむ賑やかな集まり思い出します」と作者のコメント。

俳句は、茉莉花の香りが「匂う」のだと読めますが、作者の意図としては「ジャスミン茶、さんぴん茶」のこと? 作者自身が伝えたいことと、句の文字面のあいだに溝があるケースかもしれません。
“ポイント”

しまくとぅばプシーバリルン明易し

楽奏

夏井いつき先生より
「しまくとぅば」=「島言葉」、「プシーバリルン」=「星晴れる」という意味のようです。全体の調べが、切れ切れの片言になっているのが気になります。
“ポイント”

夏の宵酔い醒ましにはいつもの革靴

ヨシキ浜

夏井いつき先生より
「ちょっと早めの夕食で、ビールを飲み過ぎ少し体が火照ってきました。外が涼しくなってきたので、酔い醒ましにいつも履いてる革靴で外に出てみました」と作者のコメント。

「酔い覚まし」のあとに「いつもの革靴」がでてくると、句意が読み取りにくいです。何を履いていったかよりは、どこに出たのか。庭なのかベランダなのか、公園、土手、海岸などなど、そちらを書いてもらえれば、映像も浮かび易いです。
“ポイント”

夏の潮匂い漂う海ぶどう

竜酔

夏井いつき先生より
「淡い潮の匂いと、海ぶどうのプチィと感じる食感が相交じり、爽やかな気持ちになります」と作者のコメント。

「匂い」とあれば、すでに「漂」っています。海ぶどうが、海水の中を漂っているのならば、話はべつですが……。
“ポイント”

カラカラを置きて泡盛のいちどぅし

麦のパパ

夏井いつき先生より
「組長は『オトーリ』と呼ばれるものをされたことがありますか? 私は数度、『そんなカラカラ(酒器)置いてオトーリするよ』と誘っていただいたことがあります。胸襟を開くどころか、忘れるくらい楽しく『いちどぅし(親友)』と過ごした経験から」と作者のコメント。

調べの点で、「て」を外すか、「の」を外すか。
“ポイント”

ポケットにシーサーいくつ夏休み

紅三季

夏井いつき先生より
「シーサーいくつ夏休み」というフレーズは良いです。夏休みの沖縄の旅で、物珍しくシーサーを数えている感じが伝わるので。ただ、上五「ポケットに」となると、状況が分かりにくくなります。ミニチュアの「シーサー」?
“ポイント”

美ら海の底で玉ねぎ眠る夜

嶋村らぴ

夏井いつき先生より
「飯島晴子の〈玉葱はいま深海に近づけり〉から発想を得ました。本歌取りのつもりです」と作者のコメント。

本歌取りに挑戦という方が、何人かおられましたが、本歌取りとは、似たような句材を使って一句にすることではなく、本歌を踏まえた上で、更なる展開を意図しなくてはいけません。この句は、そのエリアには達してないといえるでしょう。
“ポイント”

アロハ着て店主てびちと手踊りと

たかみたかみ

夏井いつき先生より
「『かりゆしウェア』は歳時記になかったので、『アロハ』にしました。『て』で韻を踏むためと音数から、ラフテーを『てびち』にしました。もともとは、〈母の日や罪滅ぼしのラフテー煮る〉という我が愚息の実話を詠んでいたんですが、罪滅ぼしが説明臭いと思い、中七にいろいろことばを入れてみましたが、しっくりこず、沖縄のカチャーシーも詠みたかったので、この句を提出します」と作者のコメント。

「かりゆし」を、沢山の人が季語として俳句にしていけば、いずれ歳時記に載る日もきます。表現したいことを曲げる必要はないので、「ラフテー」を煮る「愚息」の実話を、是非俳句として完成させて下さい。
“ポイント”

羅のシーサー跳ねるカチャーシー

まこく

夏井いつき先生より
「以前、沖縄料理店で食事をしていたら、何かのタイミングでいきなり店の人がカチャーシーを踊り始め、お客さんも見よう見まねで踊り出したことがありました。小料理屋でカチャーシーを踊っている様子を『カチャーシー』『小料理屋』とするか悩みました。カタカナの字面が良いと思い、カチャーシーにしました」と作者のコメント。

「羅」が季語だとは思いますが、「羅のシーサー」となると、ちょっと句意が読み取れません。
“ポイント”