写真de俳句の結果発表

第57回「沖縄県の郷土料理」《ハシ坊と学ぼう!⑨》

ハシ坊

沖縄県の郷土料理

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

万緑や朽ちゆく家を飲み込みて

鈴木あんず

夏井いつき先生より
下五「飲み込みて」と擬人化にした意図は十分わかるのですが、生い茂るものが小屋に被さっていく様子を表現する言葉としては、ありがちです。ここをもう一工夫すれば、堂々の人選です。
“ポイント”

ミミガーは耳で初日は大西日

くるぽー

夏井いつき先生より
「初めての沖縄旅行はツアーで、初日の晩御飯にミミガーが出てきて食べられませんでした。日差しも全然違う強さで、残りの数日が不安でした」と作者のコメント。

スゴく分かる~(笑)。「ミミガーは耳で」という書き方には実感があります。この語順だと、先に「初日」が来るので、一瞬「はつひ」? と読んでしまいました。一読で、旅の「しょにち」だと分かってもらえるように、語順を替えましょう。これならば人選です。

添削例
ミミガーは耳で大西日の初日
“ポイント”

水族館血気鰯と餌鰯

咲織

夏井いつき先生より
第33回 写真de俳句『漂うミズクラゲ』で、〈水族館魅せる鰯と餌鰯〉と詠み、ハシ坊をいただきました。水族館で観てもらえる鰯と他の魚の餌になる鰯の違いという発想は褒めていただき、改めて詠ませていただきました」と作者のコメント。

「血気鰯」とは、どういう意味でしょう?
“ポイント”

蛾の影射す食道降る角煮の油脂

杜若友哉

夏井いつき先生より
「イメージとしては、食事中に照明が少し陰ったのをなんだろうと思い、見上げたところ、蛾が止まっていて、その時食べていた角煮の脂がのどを下りていくギトギトした感覚と、食事の場所に蛾が侵入してくる衛生環境や季節的な不快感を合わせてみました」と作者のコメント。

意図は理解できますし、良いと思います。ただ、一句の器に対して、自立語が多すぎます。言葉の優先順位をつけて、再考してみましょう。
“参った”

パイナップルあなた逆子だったのよ

宮康平

夏井いつき先生より
「あなたは」とすれば、人選です。
“ポイント”

常夏の健康維持に豚パワー

夏井いつき先生より
中七下五が説明になっています。「豚」料理のことだと思いますが、その料理を描写してみましょう。
“ポイント”

激戦の史料の館ハイビスカス

楽和音

夏井いつき先生より
語順が損ですね。

添削例
ハイビスカス咲き激戦の史料館
“ポイント”

冷や酒の淡麗の字に魅かれけり

まさし

夏井いつき先生より
「魅かれけり」と説明する必要はありません。上五中七だけで十分。下五をどう展開するかが勝負所です。
“ポイント”

夏の海球児の砂は海と化す

葉月庵郁斗

夏井いつき先生より
「昔の時事ネタにはなりますが、初出場した沖縄代表の球児が検疫により甲子園の土を持ち帰りできなかった事件を詠みました。沖縄が占領下だった事を伝えたい一句です」と作者のコメント。

こういう時事を作品として残すのは、なかなかハードルが高い。この出来事を知らない事たちにとっては、なぜ「海と化す」? という疑問ばかりが残るからです。こういう特殊な出来事こそ、前書きを必要とするケースでしょう。としたとしても、この句そのものは、更に研ぎあげる必要はあります。「海」をリフレインする効果はどこまであるのか。そのあたりに一考の価値はありそうです。
“ポイント”

ラフテーへ箸の沈んで良夜かな

なないろ

夏井いつき先生より
「かな」の詠嘆があまり効いてないので、ここは、「良夜」の体言止めになるよう、二音分を調整してみましょう。
“ポイント”

ハイビスカス咲いて父のまっかっか

平手打チメガネ(志村肇)

夏井いつき先生より
「『パンダと観覧車』の投句はどちらも並でした。力作のつもりだったので、いっときは俳句やめようかと思ってしまったくらいです。思いが強すぎて、俳句の器に盛りきれないほど盛ってしまったのかな。そう思いました。今回はサクッと作ったなんてこと無い俳句ですが。さっさと提出です。結果やいかに。『まっかっか』は、父の思想信条から。父は植物を育てるのが好きで、元数学教授。80半ば過ぎて論文を書いているようです。すごい」と作者のコメント。

「『まっかっか』は、父の思想信条から」とのことですが、父が育てたハイビスカスが赤い? あるいは、父が恥ずかしがっている? としか読み取れません。むしろ、作者コメントにある「論文」と「ハイビスカス」を取り合わせたら、オリジナリティのある句になります。「ハイビスカス」とあれば、咲いているのは分かりますね。後は、父の論文を取り合わせてみましょう。
“ポイント”

炎天下脂身が般若心経

イケダエツコ

夏井いつき先生より
句意を読み取りかねました。
“ポイント”

辣韮嫌い嫌いなものは嫌い

凛ひとみ

夏井いつき先生より
三橋鷹女の句に〈夏痩せて嫌ひなものは嫌ひなり〉があります。鷹女のこの句に挑むのは、少々分が悪い。
“ポイント”

そうめんちゃんぷるーばんと盛り付けどんと置く

コンフィ

夏井いつき先生より
「個人的にはほぼ無季の感覚で出しています。オノマトペに頼りすぎかなぁ……少し不安です」と作者のコメント。

オノマトペ勝負としては、ありがちなところで終わっています。
“ポイント”

海ぶどうは星の卵よソーダ水

天風さと

夏井いつき先生より
「プチプチとした小さな海ぶどうの粒は、何かの卵のようです。あっ、もしかしたら星の卵かもしれない。夜空に散りばめられた星は、この海ぶどうから生まれているかもという幼い子供の発想です。炭酸の泡と海ぶどうの粒が響き合うのではと思いました。海ぶどうの緑、ソーダ水の緑も響き合う気がします。またソーダ水の色によって、海や夜空の色が緑や青や赤に変化するかもしれません」と作者のコメント。

上五中七のフレーズ佳いですね。季語は動きそう。主役に立てる季語を探してみましょう。人選は目の前ですよ。
“ポイント”